- Apple_Mystery11
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部屋に通され、館の中を案内されて各々この館のことを調べつくし、この生活に少し慣れてきた頃だ。 わかったことがいくつかある。
2021-05-06 21:02:311つ目は、この館の主が自分たちをあまりに丁重にもてなしていること。必要なものは使用人に言えばほとんど揃えてもらえるし、食事もレストラン並みに豪華だ。 地下にある一部の部屋を除いて自由に行動することが許されている。監禁した割には、少し不自然なくらいの待遇だ。
2021-05-06 21:03:352つ目は、この館から強行突破で出ることは出来ないだろう、ということ。出入口である玄関ホールの扉は常に閉まっているし、大人数人で体当たりしてもビクともしない。
2021-05-06 21:04:43窓は開くことは出来るが、そこから外に出ると一瞬にして何故か元いた場所に戻されてしまうという、なんだか魔法じみた仕掛けが施されていた。
2021-05-06 21:05:18どうやら厨房の奥にも、使用人が出入りするための扉があるようだが、内側からも鍵をかけられている。 手をかざして出入りしていたデアダームに見つからないようにこっそり試したが、なにかの仕掛けが施されているのか探偵や少女たちの手では開かないようになっていた。
2021-05-06 21:06:26監禁されてはいるが、好きなことをして過ごせるこの館で、元の日常より心地良さを感じている者。 この状況を享受し、出ることにそれほど執着を見せない者。 そんな者たちも出てきた、そんな頃だった。
2021-05-06 21:09:05とある日の朝10時。 1週間なんのアナウンスもなかった館内に、デアダームの声が響き渡る。
2021-05-06 21:09:34やっときたか、と思った者。不思議がる者、面倒くさがる者。反応は様々だろう。 自由時間だったため、ひとり、またひとりと集まる探偵と少女たち。
2021-05-06 21:11:4410分ほどして全員が玄関ホールに集まると、デアダームは初日に見せた穏やかな笑顔で出迎える。 そうしてひとつお辞儀をして、彼は言った。
2021-05-06 21:12:21「さて皆様。ここでの生活には慣れていただけましたでしょうか。 こちらでこの1週間での皆様の言動を見させていただきました。 2つほど…忠告し忘れたことがございまして」
2021-05-06 21:13:56「忠告?」 ルーカスが声を上げた。 初日程の緊張具合ではないが、どこか不穏な空気の漂う玄関ホールに不安を抱く者もいるだろう。
2021-05-06 21:15:23デアダームはそんな雰囲気も意に介さずといった様子で、〝笑顔〟で、右手の人差し指を立てこう言った。
2021-05-06 21:16:25「えぇ。扉を破壊しようとしたり、窓から出ようとした方もいらっしゃいましたね。もちろん出られないようにはなっているのですが…。 …───そうですね…どなたか試しに、窓を割っていただけますか?」
2021-05-06 21:17:41名乗りあげたのはジェフェリーだった。窓際にあった椅子をかたむけて、前にある脚を持つとデアダームの方をちらりと見遣る。
2021-05-06 21:28:28ジェフェリーがそうやって勢いよく窓を叩き割ると───大きく割れた音と共に悲鳴が上がる。 それは音に驚いた少女の悲鳴だっただろうか。割った本人が驚いた拍子に出した声だっただろうか。 そして同時に バチッと電流が走ったような強い衝撃が彼を襲った。
2021-05-06 21:30:50その衝撃からかジェフェリーは軽く吹き飛ばされ、玄関ホールの床に強くたたきつけられてしまった。 ほぼ大破と言っていい状態の椅子が玄関ホールにある階段まで転がり、彼は地面に伏したまま動かない。
2021-05-06 21:33:06ペアの少女であるスーナが慌てて駆け寄った。抱き起こそうとしたところで、彼は自ら起き上がり少し頭を抑えている。 心配そうに見つめる彼女を制して、「大丈夫、大丈夫」と笑ったあと、彼がデアダームを睨みつけたところで全員の視線がこの行為を促した存在へと注がれた。
2021-05-06 21:35:15「……ご覧の通り、建物を破壊するとその場で電流のような強い衝撃でダメージを負います。 …死人が出ないうちに、忠告しておこうと思いましてね」
2021-05-06 21:37:43ふふ、と楽しげにデアダームは笑った。 この1週間自分たちに優しげに接してきた彼もまた、このパーティの主催側なのだと強く感じるだろう。
2021-05-06 21:38:49