びっくりするのでユートピア(レミ+咲)

レミリアに変なことして、いつもびっくりさせてるメイドさんのツイートまとめ ※咲夜さんの挙動はヤマタカエさん(@yamatakae)の色んな動画がモデルになっています (更新)pixivにシーン追加して小説としてアップしました⇒https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=15527883
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ハチ🐾 @hachisu716

白磁のように白い肌。 夜明けの空のような真珠色の髪。 猫のように縦に裂けた瞳孔の中の、紅玉(ルビィ)色の眸は誰かさんと似ているけれど、レミリアならふわふわとウェーブがかったボブカットのようにしている髪型は、今は後ろでひとつにきっちりと束ねられている。

2021-06-30 16:13:22
ハチ🐾 @hachisu716

鼻梁は高く、切れ長の眼はきりりとしていて、まるで綺麗な男性か、あるいは男装の女性のような麗しさがある。 そんな妙齢の女性が、いつの間にかレミリアの咳で、なんともいえない色香のある悩ましい微笑をわずかに浮かべて、長い脚を組んでこちらを見ているではないか。

2021-06-30 16:16:17
ハチ🐾 @hachisu716

その微笑みでうら若い女性が何人か道を違えそうだと思われるものを投げかけながら、レミリアと同じ声をしたものは、貌の造作に似つかわしくない、少し子どもっぽいような不安げな眉の下げ方をして、眼をまんまるに見開いて呆気にとられたまま言葉をなくしている魔理沙と霊夢に笑いかけた。

2021-06-30 16:18:56
ハチ🐾 @hachisu716

「どうかな。ちゃんと大人に見えている?」 その言葉で、ようやく目の前のひとがよく知る人物だと確信する。いや、そうであるには違いなかったのだけど、それでも疑わずにはおれないほどの変わりようだったのだ。 なにしろ10歳前後の少女が、25歳前後の女性に変わったのだから。

2021-06-30 16:20:59
ハチ🐾 @hachisu716

魔理「おっ…………どろいた。わたしたちが驚いたわ。お前、レミリア……レミリアだよな」 レミ「もちろん」 一気に歳を重ねたレミリアの端正すぎる貌が頷く。 霊「びっくりした……ていうか、服装まで変わると思ってなかった。替え玉かなにかが座ったのかと思った」

2021-06-30 16:23:26
ハチ🐾 @hachisu716

レミ「ごめんね。先に言うべきだった。服も取り込んで、まるごと変えたんだ。昔飲み歩いてた恰好のままの自分をイメージしたから、こうなった。でもま、この見た目でピンクのドレスっていうのも身の丈に合わなくはあるから、よかったのかも」 自分を見下ろしながらレミリア(?)が言う。

2021-06-30 16:27:50
ハチ🐾 @hachisu716

霊「あんた、なんか、妖怪だったのねえ」 どこか気の抜けたまましみじみと言う霊夢に、大人レミリアが首を傾げる。 レミ「なにを今さら」 魔理「いや、霊夢の言いたいこと分かるって。こうまで身近なやつの姿が別人に変わるとすごいな」

2021-06-30 16:31:34
ハチ🐾 @hachisu716

魔理沙がうなりながら腕組みをして、妙齢レミリアを見る。 魔理「今までは、人間に化けるつっても、獣の耳とか尾とかがなくなって、服装をそれらしく変えるって程度だったじゃん。見た目の年齢自体ここまで変わるってのはすごいよな。はーなるほどね。こういうのが出来ちゃうのか、お前らは」

2021-06-30 16:33:42
ハチ🐾 @hachisu716

レミ「全員が同じことできるかは知らないけどね。わたしは出来るよ。きっとフランも出来るだろうね。そういえば、美鈴はそこまで変えられないって昔言ってたかも。妖怪によりけりだね」 魔理「はー……」 感心したような、いまだ呆気にとられているようなため息をつきながら、魔理沙が目をこする。

2021-06-30 16:35:48
ハチ🐾 @hachisu716

霊「まあ、うん。とにかく。これはもしかして」 言いながら、霊夢は魔理沙を見る。魔理沙はにやりと笑って、続きを引き取った。 魔理「いけるかもな? 思った以上に」 これはびっくりするだろう。絶対に。 ああ、盛り上がってきた! 愉しみで仕方がないな……!

2021-06-30 16:41:21
ハチ🐾 @hachisu716

あとは、どんなタイミングで現れるか、どんな風に声をかけるか。そんな打ち合わせで大いに盛り上がった。 ちなみに、あまりに霊夢と魔理沙が落ち着かないという理由と、咲夜に見られたら水の泡だという点から、レミリアは打ち合わせが始まってすぐ、早々に元の子どもの姿に戻されたのだった……。

2021-06-30 17:04:18
ハチ🐾 @hachisu716

さて。 朝。 咲夜の部屋と、それから妖精メイドたちが寝泊まりする部屋だけは、吸血鬼の住まう館の中で、珍しく多めに窓がとってある。 基本的に妖精メイドたちは、夜寝るものは館の外へと散っていき、それぞれの寝床(花の中や、木のうろ、水に浮かぶ蓮の上、などなど)に帰って休むことが多いので、

2021-06-30 17:15:09
ハチ🐾 @hachisu716

実際に窓のある部屋で休むのは咲夜だけだ。朝になればうっすらと明かりが差し込むはずの部屋は、今朝はなんだか少し薄暗かった。カーテンを変えたからだ。 なんでも、人間もちゃんと暗い部屋で眠るほうがきちんと安眠出来るらしいとお嬢様が聞きかじったとかで、ひとまず別のものに取り替えたのだとか

2021-06-30 17:21:15
ハチ🐾 @hachisu716

勝手に取り替えてしまってすみません。と夜分にわざわざ部屋に来て、自分が取り替えたのだと謝る美鈴に、別に気にしてないし、あなたが謝る必要もない。でも、教えてくれてありがとう。と告げて、眠りについた。

2021-06-30 17:22:54
ハチ🐾 @hachisu716

確かにしっかりと暗いほうがよく眠れるのかもしれない。なんだか分からないけれど、いつもの朝よりも、目醒めた今は心地よい良いような気がする。なんだか落ち着くような。それでいてほんの少し、胸があたたかくなるような。そんな気持ちで、咲夜がしっかりと目蓋を開けた。 開けた途端。 何か、見えた

2021-06-30 17:29:33
ハチ🐾 @hachisu716

咲夜が、月長石のような不思議な色合いの眸を、丸くする。 宝石の周りを覆う針水晶のように、目玉を縁取る銀の睫毛が、細かに揺れる。 目の前にあるものを、目の前で微笑むものを、もっとよく映そうとして。 「やあ。起きた?」 長い、白い指が伸びて、そっと咲夜の髪を耳の後ろに払う。

2021-06-30 17:43:06
ハチ🐾 @hachisu716

他人に触れられることなど、嫌なはずなのに。 そもそも他人に寝床に入られることに、この自分が気づかないわけはないのに。 どこか霞のかかったような気持ちで、咲夜は目の前のひとの動きを見ている。 「よく眠れたのかな。お嬢さん」 どこか懐かしい響きを持った声が、そう問い掛けながら、

2021-06-30 17:45:41
ハチ🐾 @hachisu716

垢抜けた所作のようでいて、意外と咲夜に直に触れぬよう、気遣っているような手が、ブランケットを肩までかけ直してくれる。 「きみの素敵な寝顔が見られて嬉しいよ。さて、今日は何処に行こうか。どうだろう。たまには主人に休暇をもらって、散歩でも?」 そんな意味不明なことを、抜け抜けと言って。

2021-06-30 17:49:51
ハチ🐾 @hachisu716

そうして、ふにゃりと照れ笑いをする。 眼にしている年齢に似つかわしくない。 そんな、よく知る幼い笑い方で。 出逢ってから、何年もずっと、そうしてくれた笑い方で。 出逢ったとき、毎日のように甘く囁きかけてきた誘い文句は、今はなりをひそめてしまったけれど。 今。それを思い出した。

2021-06-30 17:53:42
ハチ🐾 @hachisu716

──今日は、何処へ行こうか…… おはよう。よく眠れた? さて、今日は何処へ行こうか。 何をしようか。 きみと話したいことはたくさんあるんだ。 名前を呼べないのが残念だけれど、いつかきっと教えてほしいな。 ここが気に入ったなら。わたしたちが気に入ったなら。

2021-06-30 17:57:36
ハチ🐾 @hachisu716

……なに、気に入った名前がない? 好きな名前で呼んでいいって? うーん、いや、いや待って。そんなに簡単には決められないよ。 きみの運命を決める大切な第一歩だもの。 名前はとても大事だからね。 そうだなあ、綺麗な……花みたいな名前がいいな。 花は好きかな? じゃあ、今日は花を見に行こう。

2021-06-30 17:59:40
ハチ🐾 @hachisu716

メイドの仕事じゃないって? いや、それがここのメイドの仕事。 きみはこれから、きみらしく、わたしを喜ばせたり、驚かせたり、まあときには怒ったり、悲しくさせたり……色んな気持ちにさせるくらい、色んな心に触れてほしい。 わたしもきみに、色んな感情を返そう。 色んな心を返そう。 愛を返そう

2021-06-30 18:03:00
ハチ🐾 @hachisu716

そうして、愉しくきみと暮らしていけたらいいな。 理由? ……へへ、吸血鬼ってとても数が少ないから、淋しいんだよ。それだけ。 目の前のひとの、瞳孔が縦に裂けた猫のような紅い眸を見ながら、咲夜の中で、さまざまな記憶が鮮明に蘇る。

2021-06-30 18:06:07
ハチ🐾 @hachisu716

すべてに無関心だった頃の、霞のような日々に、鼻歌を歌うように気楽に入ってきた、大きな変化。 無意味なくらい笑いかけてくれる微笑み。 無意味なくらいに願ってくれる幸福。 無意味なくらいにありあまる、愛情。 そのどれもが初めてで。 抱えたものを、処理できなかった日々。

2021-06-30 18:09:19
ハチ🐾 @hachisu716

けれど、不思議と心の核のようなところは穏やかで。 いや、心というものを自分の中に思ったのもそのときで。 混乱したけれど、心地よかった。 驚くことばかりだったけれど、幸福だったと、今はその感情に名前をつけて、思う。 ここに住まう限り、驚きとはうれしさ。 ……「幸福」なのだと。

2021-06-30 18:13:39