ハチSOS

【SOS】広島県竹原市「ハチの干潟」の危機! 当地は瀬戸内海全体でも屈指の生物多様性を誇り、環境省レッドリスト掲載種も66種確認されています。よりによってそこへ、液化天然ガス火力発電所と関連施設の建設計画が急浮上しました。しかも、環境影響評価もなされないまま着工されようとしています。
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軟体動物多様性学会【公式】 @SocStudMollDiv

ウズツボ(渦小螺;フロリダツボ科 Elachisinidae) 𝘋𝘰𝘭𝘪𝘤𝘳𝘰𝘴𝘴𝘦𝘢 sp. 初出文献はナギツボの項で挙げた福田(2001)。ただしそれ以前にも小笠原諸島で死殻の記録がある(Fukuda, 1993: 𝘖𝘨𝘢𝘴𝘢𝘸𝘢𝘳𝘢 𝘙𝘦𝘴𝘦𝘢𝘳𝘤𝘩, (19): 27–28, pl. 8, fig. 94)。

2021-08-22 13:04:53
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『干潟の絶滅危惧動物図鑑』(41, text-figs)や『日本近海産貝類図鑑』第二版(813, pl. 83, fig. 1)では 𝘊𝘳𝘰𝘴𝘴𝘦𝘢 𝘣𝘦𝘭𝘭𝘶𝘭𝘢 A. Adams, 1865 に同定されていた。しかしその後ネット公開された 𝘊. 𝘣𝘦𝘭𝘭𝘶𝘭𝘢 のシンタイプ(パリ自然史博物館所蔵)の写真を見ると、明らかに別種。

2021-08-22 13:04:54
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𝘊𝘳𝘰𝘴𝘴𝘦𝘢 𝘣𝘦𝘭𝘭𝘶𝘭𝘢 A. Adams, 1865 のシンタイプ: Muséum National d’Histoire Naturelle, Paris (France): Collection: Molluscs (IM). Set of 2 specimens MNHN-IM-2000-31037. science.mnhn.fr/institution/mn…

2021-08-22 13:04:55
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この類がややこしいのは系統的に縁遠い2つの群が「他人の空似」を呈していることで、上記 𝘊. 𝘣𝘦𝘭𝘭𝘶𝘭𝘢 は古腹足亜綱の Conradiidae ツキヨシタダミ科に属し、ウズツボとは科や目どころか亜綱まで異なる。にも関わらず両者は驚くほど酷似し、容易に混同されがち。詳しくは沖縄県RDB第3版を参照:

2021-08-22 13:04:55
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福田 宏・久保弘文 2017 (Mar.). ウズツボ. 𝘐𝘯 沖縄県環境部自然保護課 (編), 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版 (動物編) -レッドデータおきなわ-, 52, 653–654. 沖縄県環境部自然保護課, 那覇. okinawa-ikimono.com/reddata/downlo…

2021-08-22 13:04:56
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#ハチSOS 最終回直前! ヒナノズキン。環境省RLで絶滅危惧I類。2007〜12年濱村陽一・和田太一両会員撮影。殻長約7 mm。干潟砂泥中のトゲイカリナマコに着生するのっぺらぼうの白い肉塊で、一見どの門に属すかも不明な「へんないきもの」だが、れっきとした二枚貝類。殻は外套膜で完全に覆われる。 pic.twitter.com/72y0zYgzkk

2021-08-22 19:10:18
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1930年に熊本県天草と博多湾から記載されたのち70年以上再発見されず、加藤・福田(1996: 𝘞𝘞𝘍 𝘑𝘢𝘱𝘢𝘯 𝘚𝘤𝘪𝘦𝘯𝘤𝘦 𝘙𝘦𝘱𝘰𝘳𝘵, 3: 67–68)は既に絶滅したと断じた。しかし近年、遂に石川裕会員らによって瀬戸内海や有明海等で見出され、新たに認識された産地の一つがハチの干潟である。

2021-08-22 19:10:20
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最近生貝が確認された産地は他に愛媛県今治・松山両市、博多湾、諫早湾、熊本県上天草・宇城両市など5か所程度で、依然として産地数は少なく、相互に不連続である。諫早湾では潮受け堤防外側周辺において、宿主とともに粘土質で常に硫化水素臭が強い、還元環境に棲息するとの詳報がある(次の文献):

2021-08-22 19:10:20
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山元綾弥香・佐藤慎一・東 幹夫 2015 (Dec.). 諫早湾潮受け堤防外側周辺海域における短期開門調査以降の底生動物相の経年変化: 特に北部排水門外側定点で採集されたヒナノズキン (二枚貝綱: マルスダレガイ目: ウロコガイ上科) について. 𝘔𝘰𝘭𝘭𝘶𝘴𝘤𝘢𝘯 𝘋𝘪𝘷𝘦𝘳𝘴𝘪𝘵𝘺, 4: 29–37.

2021-08-22 19:10:21
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ヒナノズキン(雛の頭巾;チリハギ科 Lasaeidae) 𝘋𝘦𝘷𝘰𝘯𝘪𝘢 𝘴𝘦𝘮𝘱𝘦𝘳𝘪 (Ohshima, 1930) 𝘌𝘯𝘵𝘰𝘷𝘢𝘭𝘷𝘢 𝘴𝘦𝘮𝘱𝘦𝘳𝘪 Ohshima, 1930: 25–26, pl. 2, figs 1–4. Type loc.: "Tomioka, Amakusa, Kyushu"(天草富岡).

2021-08-22 19:10:21
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Ohshima, H. (大島 廣) 1930 (1 Nov.). Preliminary note on 𝘌𝘯𝘵𝘰𝘷𝘢𝘭𝘷𝘢 𝘴𝘦𝘮𝘱𝘦𝘳𝘪 sp. nov., a commensal bivalve living attached to the body of a synaptid. 𝘈𝘯𝘯𝘰𝘵𝘢𝘵𝘪𝘰𝘯𝘦𝘴 𝘡𝘰𝘰𝘭𝘰𝘨𝘪𝘤𝘢𝘦 𝘑𝘢𝘱𝘰𝘯𝘦𝘯𝘴𝘦𝘴, 13: 25–27, pl. 2. dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2021-08-22 19:10:22
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@a_iijimaa1 拡散ありがとうございます!ヒナノズキンは貝人の間で「伝説の貝」ですので、ぜひ多くの人に知ってもらいたいです。 普通ならこの種が1番の大物なんですが、ハチの干潟にはさらに恐ろしいラスボスがいます。明日降臨予定!

2021-08-22 22:04:23
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#ハチSOS 遂にラスボス降臨! オキナノエガオ。環境省RLで絶滅危惧I類。ハチの干潟の全貝類中で最も稀少性の高い種。最初にあえて殻(岡山県玉野市産)だけ挙げます。殻長約8 mm。二枚貝類なのに紙の如くペラペラに薄くて脆く、生時はどこに軟体が収まっているのか不思議なほど平たい板状。和名は... pic.twitter.com/dQhGo4DFSs

2021-08-23 07:19:29
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殻表の同心円状の輪肋を、老人が笑う際にできる顔の皺に見立てたもの。しかし1951年の記載以後、死殻は相模湾/七尾湾〜九州の内湾から時折見出されていたものの、20世紀中は遂に誰一人生貝を見た人がおらず、どこにどうやって生きているのか不明のまま、形態の特異さ(近似する種も皆無)と相俟って..

2021-08-23 07:19:30
軟体動物多様性学会【公式】 @SocStudMollDiv

謎の貝として知られていた。ところが今世紀に入り、とうとう石川裕・濱村陽一両会員によって生貝が発見され、その記念すべき産地がハチの干潟と愛媛県今治市伯方島である。砂泥干潟のスジホシムシの巣孔中に見られ、時に体表へ透明な粘液で緩く着生する。これら衝撃の画像は2012〜17年濱村会員撮影。 pic.twitter.com/sTsOK1qxRv

2021-08-23 07:19:32
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スジホシムシ体表へ常時付着するわけではなく、野外では多くの場合巣孔の壁面上に見られ、体表にいた個体も室内では自然に離れて活潑に動き、そのまま宿主へは戻らなかったという。これは宿主から離すとすぐに戻ろうとするヒナノヅキンやアリアケケボリ等と異なる。宿主との関係の詳細はまだ不明。

2021-08-23 07:19:34
飯島明子 💉×7😷 @a_iijimaa1

これは発見のドラマがすごい! ツリーを是非ご覧ください。不思議な薄い殻だけ先に見つかり、生体発見は半世紀後…。超希少な生物が生息する、ハチの干潟。 twitter.com/SocStudMollDiv…

2021-08-23 07:36:25
So ISHIDA @soishida

軟体動物多様性学会【公式】@SocStudMollDiv で今朝紹介されたハチ干潟の"ラスボス"オキナノエガオの生時動画です(撮影:濱村陽一氏)。斧足を出す様子はZool. Sci.掲載号の表紙を飾りました。#ハチSOS pic.twitter.com/Gi5XaYSSLB

2021-08-23 10:04:59
軟体動物多様性学会【公式】 @SocStudMollDiv

#ハチSOS 昨日のオキナノエガオをもちまして、ハチの干潟の主だった稀少貝類の紹介を一通り終えました。事前の想像を遥かに超える大きな反響を賜り、誠にありがとうございました。衷心より御礼申し上げます。ここまで登場した貝たち全員に再集結してもらって、カーテンコールといたします。 pic.twitter.com/pfHGqw1ojV

2021-08-24 07:09:37
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画像をご提供戴きました石川裕・上野大輔・奥迫優・長谷川和範・濱村陽一・和田太一各氏(50音順)に改めて深謝申し上げます。 ただ、この問題はまだ始まったばかりです。5学会連名要望書の提出に向けて、調整は大詰めに差し掛かっています。引き続き動向をお伝えしますので、ご注視戴けると幸いです。

2021-08-24 07:09:38