物権の性質

物権の絶対性と排他性についての話
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杉山博亮 @sugiyamahiroaki

物権は、物に対する直接的な支配権といわれる。「直接的」とは、間に人を介在しないという意味。しかし、間に人が介在したら、その権利はその人に対する請求権となり、支配権ではなくなる。だから支配権が直接的なのは当たり前。それゆえこの定義は「馬から落馬する」と同様のくどさを含んでいる。

2011-08-19 21:39:19
杉山博亮 @sugiyamahiroaki

不動産賃借権は、間接的な支配権と呼ばれることがある。しかし、間接的ならば、本来支配権ではありえない。実際、不動産賃借権は、債権であり、賃貸人に対する請求権だ。だから、この表現は「いわば」という比喩にすぎない。他人の理解を助けようとしたたとえ話がかえって話を混乱させることがある。

2011-08-19 21:44:29
杉山博亮 @sugiyamahiroaki

人が物を支配するには、万人がその支配をじゃましない義務を負う必要がある。この「万人を義務者とする性質」を絶対性という。もしその義務に違反して物権者の支配をじゃましたらどうなるか。自力救済は禁止されているので、代わり物権的請求権が与え得られる。だからこれは絶対性の動的顕現形態。

2011-08-19 21:55:06
杉山博亮 @sugiyamahiroaki

万人が義務者となるだけでは、もう1人権利者が現れる可能性がある。権利者同士の間では、互いに権利と義務が相打ちとなり、支配を貫徹できない。そこで支配権は「権利者を2人つくらない」という性質を要求する。これが排他性で「相容れない内容の他の権利の存在を許さない」という性質である。

2011-08-19 22:03:07
杉山博亮 @sugiyamahiroaki

排他性は、権利相互の関係を規律する性質であり、その言葉の響きとは異なり、妨害排除請求とは関係がない。排他的な権利が成立すると、事後、相容れない内容の権利が成立できないので、取引の安全への配慮が必要となる。そのため、排他性は、公示の要求、対抗要件主義へと連なる。

2011-08-19 22:10:04
杉山博亮 @sugiyamahiroaki

ただし、対抗要件主義は、排他性だけから生まれるものではない。その証拠に、排他性のない権利である債権の譲渡にも第三者対抗要件はある。譲渡は、同一性を失わせずに権利を移転する。そのため、1つの権利は2人に譲渡できない。そこで取引の安全の見地から対抗要件主義がとられているのだ。

2011-08-19 22:17:33