イギリスの暴動についてちょこっと考察

イギリスの大学に在学中、社会学の授業で現代英国社会というモジュールがありました。その時に学んだこと、知ったことから、今回起きた暴動について考えてみました。
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Susanna Yukari Oseki @niigatamama

1.書き始めると多分卒論かけてしまうくらいなので、ツィッターでは限りがありますが、英での暴動について、20年前のフィールドワークからの経験も踏まえた私なりの考察を少し書いてみます。これは人種差別、階級社会による差別、貧困、ただのギャングというように説明できる問題ではないことが基本

2011-08-20 19:01:14
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

2.彼らは家族も、住居も、生活費も、職に就く機会も、携帯電話を持つ余裕もあった。だから生きていくのに物理的に困って暴動になったとも言えない。「機会があったらヤルだけだ」と興奮して叫んでいた。暴動はほとんど自分たちの住むテリトリーの範囲内である。高級住宅街までは移動していない。

2011-08-20 19:09:20
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

3.私が実際にフィールドワークでみた地域はHullという港湾都市の東側の一角。有色人種はほんの少しで圧倒的に白人の貧困層が多い地域。その地域をとりまくようにカウンシルハウス(公営住宅)が建っている。労働者階級出身の友人が彼らにインタビューを試みた。(彼女はそれで卒論を書いた)

2011-08-20 19:17:53
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

4.「刺激がほしい」「ここは退屈だ」「ケンカはエキサイティングだ。強いって証明できる」「働く?働いたことない。何もいいことないだろ?」「働きたい奴が働けばいい。」当時はメジャー首相だったが、誰もその名前を答えることもできなかった。親は家にはいないという。深夜に帰ってくるようだ。

2011-08-20 19:33:28
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

5.自分たちが深夜に帰っても誰も咎めない。(そのときインタビューしたのは14歳から23歳までの若者たち。男性38人、女性16人)普段何をして過ごしているか。「ここら辺を見回ってる」「パブで飲んでる」「(盗みを)ヤリに行く」

2011-08-20 19:37:40
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

6.彼らには金銭的なサポート以外の、人間として社会の中でどう生きていくかという本質的な問題に関わるサポートが必要であるわけで、就職システム、生活手当、住居を整備する、犯罪を犯したら逮捕して罰を与える、という対応だけでは解決しない。それどころか彼らの心の闇は深くなるばかりなのだ。

2011-08-20 23:03:52
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

7.英国は個人主義社会であることが、更にこの問題を複雑にする。犯罪を犯すときはたむろする彼らだが、英国にはそもそも隣近所、自治会などという組織が無いので、地域コミュニティ内で協力して何かをするということがほとんどない。昔は、街の教会を中心にコミュニティがそれなりに成り立っていたが

2011-08-20 23:14:12
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

8.現在、教会は年に数回行くか、または全く行かない人も多い。もはや地域コミュニティの中心とはなっていない(これは全階級に当てはまる)。また、中産階級以上の地域では社交場として機能しているパブも、彼らの地域では昼間から酔った若者らの暴力沙汰が絶えず機能していない。

2011-08-20 23:23:39
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

9.もともと人間関係にある一定の距離を置く習慣があるのに、それが前述のいろいろな状況変化により、より稀薄な人間関係になっていく。そして、通りや区画で、完全に住み分けられた都市の片隅で、外を見ることもなく、外に出るときは街中でスリなどの犯罪をするときだけ、という生活を送っている

2011-08-20 23:30:34
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

10.同じ地域には、きちんと働いている人ももちろん住んでいる。真面目に働いている商店主などは、インド、パキスタン、中国系、トルコ、アフロカリビアンなどの移民が多い。彼らはもともとコミュニティを大事にする習慣があるし、信心深い人も多い。

2011-08-20 23:45:28
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

11.(ここからは私が帰国後のことなので同級生に後から聞いたのだが)彼らの中には、NPOを立ち上げたり、議員になったりして、街を徘徊する若者たちも含めた、生活環境の向上に力を尽くす人も出てきた。

2011-08-20 23:50:38
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

12.でもそんな若者たちは、親も同じような状態だったり、離婚していて家庭が崩壊していたりで、コミュニティよりも先にファミリーが成り立っていない。解決には何年もかかるものだった。さらに労働者階級の若者だけと思われていた無気力の問題が、実は中産階級の一部の少年少女たちにも生じていた。

2011-08-20 23:57:17
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

13.逮捕された中には、そんな子供たちも交じっていたという。 もちろん労働者階級出身でシングルマザーでも、グラント(奨学金)を貰って大学で勉強している友人もいたし、地元の高校で日本語を教えていた子は、親は無職だけれど自分は頑張ってビジネススクールに行く、と努力していた。

2011-08-21 00:09:15
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

14.今の彼らに必要なのは、「外の世界を見るきっかけ」と、「勉強でも労働でも音楽・芸術でもいいから何かに対する興味が湧くきっかけ」、「人の立場になって物事を考える体験」なのではないかと思う。これはイギリスに限った問題でもないと思うのですが。

2011-08-21 00:15:19
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

15.少しでも社会背景が伝わればと思い、かいつまんでお話してみました。これらはContemporary British Societyという社会学の授業で学んだことですが、社会学、社会人類学、社会心理学、犯罪心理学、いろいろな分野からみてみる必要があると思っています。

2011-08-21 00:34:14
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

あ、大事なことなので言っておきますが、イギリスで、犯罪率が高く危険とされている地域には、昼間でも近づかないようにしてください。同じイギリス人でも、その地域に調査に行くために地元の学校の先生、商店主、警察、役所などいろいろな協力を得ています。

2011-08-21 11:56:46
Susanna Yukari Oseki @niigatamama

そういった地域は、傷害、窃盗、器物損壊事件は日常茶飯事なのでニュースにもなりません。自動販売機も窃盗の標的になるので一個も置いていないような場所です。(大学構内の自販機も金網で囲ってあって驚いたけれど...)

2011-08-21 12:00:50