ぼのぼの氏が語るチェーホフと映画『ドライブ・マイ・カー』

映画『ドライブ・マイ・カー』で描かれたチェーホフ『ワーニャ伯父さん』について、映画・演劇両方に精通するぼのぼの氏(@masato009)が分析した考察。ネタバレや脱線部分は(個人的には大好きですが)割愛させていただきました。
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ぼのぼの @masato009

体調悪いし、仕事もグチャグチャな状態だが、今日を逃すともうずっと見る時間がなさそうということで、府中まで『ドライブ・マイ・カー』を見に来た。終わったらすぐに帰って、また真夜中まで仕事だ(´Д`) pic.twitter.com/0qHQIWPgi2

2021-08-25 17:43:16
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ぼのぼの @masato009

それにしても『ドライブ・マイ・カー』妙に混んでるぞ。シネフィルや西島ファンの若い女の子とかならともかく何故か50代以上のオッサンが多い。何? 村上春樹のファン?  それにしても最近の山崎紘菜は別人のように可愛くなったな。

2021-08-25 17:46:46
ぼのぼの @masato009

『ドライブ・マイ・カー』 何だこのバケモノみたいな映画は。 濱口竜介の最高傑作。 村上春樹原作映画の最高傑作。 おそらくは21世紀の日本映画の最高傑作。 そして何よりも… 【チェーホフ映画の最高傑作】 驚愕と嫉妬。魂が震える。 死ぬ前に見る最後の映画がこれでもいい。 pic.twitter.com/FB5EDKF2Oa

2021-08-25 21:32:39
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ぼのぼの @masato009

シネフィルは放っておいても見るだろう。 村上春樹好きも見るかもしれない。 だが私が首根っこを捕まえてでも「見ろ!」と画面に顔を向けてやりたいのは、チェーホフを愛するすべての人々だ。 さあ、祝おう。我々の愛するチェーホフ劇のエッセンスが、ついにスクリーンに十全に描かれたぞ!

2021-08-25 21:32:40
ぼのぼの @masato009

もうね、普通なら涙を流しながら、夜の街を彷徨い歩いているところ。 しかし酒場は開いてないし、すぐに帰って仕事をしなくてはならない。 でも仕方がないわ。生きていかなければ。長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょう。

2021-08-25 21:32:40
ぼのぼの @masato009

あの…あの彼女、あのソーニャ役の人、本当に誰? あなた何者?これまでに見た舞台のソーニャが束になっても敵わない。何かを伝えようとする、その真っ直ぐとした力は一体何なの?

2021-08-25 21:32:41
ぼのぼの @masato009

もう一度言う。 映画ファンはどうでもいい。どうせほっといても見るだろうし、映画しか見ない連中に、この作品を独占させるのはもったいない。 そこの演劇ファン、そして何よりもそこのチェーホフ好き。 騙されたと思って、これだけは見ろ。 チェーホフ劇の核が、日本映画に降臨した大事件だぞ!

2021-08-25 21:32:41
ぼのぼの @masato009

しかし私にとって『ワーニャおじさん』は精神の故郷のような作品で、もはや血肉化されているが、『ワーニャおじさん』もチェーホフも全く知らない人が予備知識なしにこの映画を見た場合、これで『ワーニャおじさん』の物語や人物関係は分かるのかな? 逆にそれが分からない。

2021-08-25 21:46:42
ぼのぼの @masato009

ともあれこの作品は、演劇と映画全てを引っくるめて、最も魂を震わされた、ダントツに素晴らしいチェーホフ劇。私が太鼓判を押す。しかもそれが恐ろしく「映画的」手法で描かれているのが、本当にバケモノのよう…

2021-08-25 21:49:00
ぼのぼの @masato009

濱口竜介は、ニキータ・ミハルコフを遥かに超え、世界で最もチェーホフ劇の真髄を理解し、それを映画らしい映画として映画化できている作家だな。

2021-08-25 21:51:47
ぼのぼの @masato009

もし「原作を読んだ上で映画を見る」みたいな求道的なファンなら、読むべきは村上春樹の同名作ではなく、チェーホフの『ワーニャおじさん』の方。作品をより深く理解するためのサブテキストとしては、重要度が1桁違う。

2021-08-25 22:04:07
ぼのぼの @masato009

しかしチェーホフ劇のエッセンスが十全に映画化されたと言ったが、実は1つ極めて重要な要素が抜け落ちている。それはユーモア、滑稽さ。実に3時間の上映時間中、笑えるところがほぼ1つもない。濱口作品としても、このユーモアの無さは異常なほど。

2021-08-25 22:25:07
ぼのぼの @masato009

そう言えば『ドライブ・マイ・カー』、18時からの上映、3時間の長尺だというのに、次から次へと客席が埋まっていき、終わってみたらおよそ100人はいた。平日の郊外のシネコンとしては驚異的な入り。あれって本当にどういう客層だったんだ?

2021-08-25 23:14:18
ぼのぼの @masato009

ところで『ワーニャおじさん』なら、私は小野理子さんの訳が圧倒的に好きなのだが、これってもう絶版なのね。何故?という感じ。大体岩波文庫にチェーホフの四大戯曲が入っていない時点でおかしいだろ。   ワーニャおじさん (岩波文庫 赤 622-2) チェーホフ amazon.co.jp/dp/4003262220/…

2021-08-26 00:33:10
ぼのぼの @masato009

この分だと、『ドライブ・マイ・カー』はシネコンでは再見できず、次は川崎市アートセンターでの上映になってしまうかもしれないな。とにかく上映時間が長く、どこも1日1回とかだから、見るに見られない…

2021-08-29 01:16:19
ぼのぼの @masato009

『ドライブ・マイ・カー』に出てきた「演劇の稽古において、感情を排した徹底的な棒読みで本読みを繰り返す」という手法、たまに話を聞くし、どんな現場に行っても本読み段階では絶対棒読みに徹するという某俳優も知っている。ただ、未だにそれがどういう意味を持つのかよく分かっていない。

2021-08-29 02:26:04
ぼのぼの @masato009

映画の中でも、演出家がチラリと意図を語るが、あまり納得できるものではなかった。あらためて検索しても、その手法について論じた記事が(意外にも)見つけられない。

2021-08-29 02:26:05
ぼのぼの @masato009

映画を再見する際は、その意味についてよく考察しながら見たいが、何か手がかりとなる記事などありましたら教えてください。

2021-08-29 02:26:05
ぼのぼの @masato009

ただその後の「なまじ台詞を覚えて慣れてしまったため、相手の台詞をきっかけとしか見なくなってしまったことで、演技が死んでしまった」というアレは、言うまでもなくよく分かる。

2021-08-29 02:37:01
ぼのぼの @masato009

まだ駆け出しの素人くさい演技はともかく、ある程度慣れた俳優の演技が嘘くさく見えたら、大抵それである。相手の台詞に反応するのではなく、相手の台詞を自分のきっかけとしか見ていない、閉じられた演技。

2021-08-29 02:37:01
ぼのぼの @masato009

「お前、絶対相手の台詞をまともに聞いてないだろう」というのが、とりわけ露骨で、見ていてムカムカするような演技をする俳優(最近はむしろ演出で引っ張りだこ)がいる。あの人物がなぜ高い評価を得ているのか、心底不思議だ。私は彼の名があるだけで、その芝居を見る気が失せるのだが。

2021-08-29 02:37:02
ぼのぼの @masato009

舞台の俳優は、何十回何百回も同じ台詞のやりとりを繰り返しながら、毎回相手の台詞を今初めて聞き、自分の台詞を今初めて発したように演じなくてはならない、そんな困難な仕事なのだ。

2021-08-29 02:37:02
ぼのぼの @masato009

多分、そういう自然発生的な発話の回路を最大限に開いておくための手法が「稽古での棒読み」ではないかと想像するのだが、これは実際にやっている演出や俳優に聞かないとわからないな。て言うか、やっている人によっても意図が違うかもしれないし。

2021-08-29 02:41:33
ぼのぼの @masato009

ただあの映画内の芝居において難しいのは、多言語が入り混じる芝居ということで、ストレートに理解できない言語の場合、どうしても相手の台詞を「音として覚える」ことになり、「相手の台詞をきっかけとして見てしまう」悪癖は、同じ言語で芝居をする時よりもさらに増すのではなかろうか。

2021-08-29 02:46:04
ぼのぼの @masato009

これはまた1つの問題で、他言語芝居をどう演出しどう演じるのか、あの映画にも多分そのヒントがたくさん散りばめられているだろうと思うし、それについては円盤で繰り返し見直したいシーケンスだ。

2021-08-29 02:47:44
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