ヴェルヴェット・ソニック #5

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【現在のニンジャスレイヤー】 ・ニンジャスレイヤー=マスラダ・カイは、ユメミル・ジツを使う邪悪なニンジャ、サロウと戦闘中だ。 ・サロウは市民のニューロンをハックしてプロキシに変え、精神攻撃を仕掛けてくる。市民を狂わせて直接襲いかからせる事もする。心に効くからだ。

2021-09-24 21:32:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【現在のニンジャスレイヤー】 ・ニンジャスレイヤーは偽装されたサロウの居場所を目指している。このまま消耗させて仕留めるのがサロウの狙いだろう。 ・だがサロウ本体のもとに、下水道をこっそり移動してきたコトブキが思いがけず到達。サロウに襲いかかり、殴った。

2021-09-24 21:33:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイハイハイハイハイハイハイハイッ!」コトブキの拳が加速する。サロウは拳をいなし、逸らしながら、後ずさる。(忙しいぞ……とにかく、まず、体勢……)「ハイハイハイハイハイハイハイハイハイハイッ!」(体……)「……ハイヤーッ!」コトブキの拳がサロウの顔面を、再び、捉えた! 0

2021-09-24 21:36:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グ……」泥めいて鈍化した時間のなか、サロウの頬にゆっくりとコトブキの拳がめりこみ、顔を歪ませてゆく。サロウはコトブキの腕を掴もうとするが、拳の速度が速い。彼は血走った目を動かした。コトブキは怒りに目を見開き、歯をキッと食い縛って、まるで輝くような怒りの形相だ……「グワーッ!」 1

2021-09-24 21:40:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!「安普請な」とスプレー書きされたバラックの壁を貫くように破壊し、サロウは室内に転がって受け身をとった。既にコトブキは彼を追って壁の穴をエントリーして来ていた。(戦闘用オイランドロイド……?カラテを使う?ネオサイタマの技術、進んでるな。いや、ベルリンにも居るだろ、でも) 2

2021-09-24 21:43:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイヤーッ!」コトブキは床が砕けるほどに深く踏みしめ、サロウの眼前に突き進んだ。ハヤイ!(何なんだよ!俺はニンジャだぞ?カラテはカラキシだけど、動体視力とか凄いんだ!今だって世界はスローモーで、俺は判断できてる。全部見える。でも身体がついていくワケない。俺は弱)「グワーッ!」 3

2021-09-24 21:46:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

屈伸から高く蹴り上げる蹴りがサロウの顎を捉えた。サロウは安普請バラック天井を突き破り、上階に蹴り込まれた。(痛……イテェ!鋼みたいに痛いぞ。俺、生身なんだぞ。なんて事しやがる。オイランドロイド……だけど自我があって……ウキヨってやつだよな……畜生、こんな事)「逃しません!」 4

2021-09-24 21:49:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトブキが階段を駆け上がってきた。「ハイハイハイハイッ!」たちまち畳み掛けられる拳!サロウは困惑しながら防御に徹する。彼の不運は幾つかあった。まず彼自身がニンジャとしてのカラテ接近戦を未経験である事。次に、このコトブキはニンジャスレイヤーと日々鍛錬してきたウキヨであるという事。 5

2021-09-24 21:52:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャとは平安時代をカラテで支配した闇の存在であり、そのソウルを宿せば短期間のうちにニンジャ筋力、ニンジャ動体視力、ニンジャ器用さを始めとする超人的な身体能力を得る。その鋳型にカラテを流し込むのだ。而してコトブキはオイランドロイドの強靭な身体にカラテ学習を染み込ませている。 6

2021-09-24 21:55:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

身体コントロール、カラテ制御、当然彼女はニンジャのタツジンに及びはしない。しかしサロウにカラテの心得はなかった。彼のジツは強力無比で、チョップも瓦割りも必要としなかった。ニューロンをハックし掻き乱す。ニンジャ相手であろうと、今までそれで充分やれた。(こいつ、ジツが通らない!) 7

2021-09-24 21:59:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトブキはウキヨだ。人間の生体脳と勝手が違う。人間同様の自我がある以上、そのクセを捉えれば外科医のようにヤッてやる事はできるだろう。だが、ここまで緊迫した状況下で初の相手。しかも何か正体不明の免疫めいたものがあって、非実在の威圧感でもって、彼の繊細な心を乱してくる……! 8

2021-09-24 22:03:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイッ!」右腕!「ハイッ!」左腕!サロウは拳を逸らし、コトブキの額に手を当てる!「イヤーッ!」……まただ!その瞬間、コトブキのニューロンの背後に異様な存在感がよぎり、サロウの集中が乱されてしまう。(しっかりしろよ、俺!見りゃわかるだろ、残滓だ!繋がっちゃいない……!) 9

2021-09-24 22:05:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイ……ヤーッ!」コトブキは身体をサロウに密着させ、脇腹に拳を、叩き込んだ!ワン・インチ・パンチである!「グワアアアーッ!」KRAAAASH!サロウは手足をバタつかせてもがきながらバラックの壁を背中に貫通し、下のストリートへ落下した!「オイ見ろ、天使が落ちてきたぜ」「天使マ?」暴漢!10

2021-09-24 22:09:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あ、アアア……」サロウは落下の衝撃に苦しみ、四つん這いになって、二人の暴漢を見上げた。彼らはブラックジャックとバッテリー式ハンダごてを手で弄び、サロウを見てニヤニヤ笑っていた。「天使を殴るの大好き……」「マ?僕は、焼きごて!」「やめて!ヒドい事」サロウは目に涙を浮かべた。 11

2021-09-24 22:13:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やめてじゃねえよ!今日は、俺達の仲間のジロが誰だかしらねえ通り魔に……オブジェにされ記念日だよ!」ブラックジャック男が泣き怒ると、ハンダごて男も反応した。「そうだ!どこのヤクザにやられたんだ?生きたまま縛られて……こ、コイツをヤッてやろうぜ!」「やめ……」サロウは震えた。 12

2021-09-24 22:16:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サロウの脳裏に、彼がプロキシに変えてやった256体の絶望の表情がよぎった。(誰だろう、ジロ?)「いけません!離れなさい!」頭上から声!壁の穴から身を乗り出したコトブキが手振りとともに叫んでいる。暴漢たちはせせら笑った。「カワイイ彼女いるじゃん」「アレも天使決定だな。まずお前だ!」 13

2021-09-24 22:20:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブラックジャックが振り下ろされた。「アバーッ!」ハンダごて男が脳天を打たれて悲鳴をあげ、その場でのたうち回った。「アババーッ!?」「グス……」サロウは鼻水を拳で拭い、コトブキを指差した。「アババババ」ブラックジャック男が痙攣しながらコトブキを見た。サロウはこめかみに指を当てた。14

2021-09-24 22:22:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュン。即席の「プロキシ」を経由し、再びコトブキのニューロンをアタック。「ン、ンアーッ!」コトブキがバランスを崩し、落下してきた。サロウはブラックジャック男を通じ、さらに攻撃をかけようとした。「アバーッ!」男の頭が過負荷で爆発した。ナムアミダブツ!サロウは慌てて身を翻す! 15

2021-09-24 22:24:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

受け身を取れず倒れたコトブキが起き上がるのを尻目に、サロウは逃げ走った。(時間を……ハァ…………稼げたな……)曲がりくねった裏道。恐ろしいウキヨから、とにかく離れねば。(でも、ツイてた。今日までの下準備でせっせと働いた積み重ねが、さっきのプロキシを連れてきた。努力は報われるな)16

2021-09-24 22:28:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待ちなさい!」コトブキが走りながら叫んだ。サロウは走りながら息を少しずつ整える。(ジツも効いた。プロキシを噛ませばやり易いし、ウキヨのクセも理解してきた。俺、学んでる。戦いながら成長しないと、獣のコンビネーション攻撃は崩せない。カリュドーンは並のクエストじゃないんだからな) 17

2021-09-24 22:32:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待てと言われて待つ人はいませんね……!」コトブキがおかしな叫びをあげたので、サロウは少し笑った。彼の網膜にはずっと、ニンジャスレイヤーの座標が焼き付いている。それが今、激しい速度でこちらに向かってきているのがわかる。(ダーリン、トラブルだね。でも、頑張って。俺も頑張る……) 18

2021-09-24 22:35:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」サロウは前方の道を塞ぐ赤錆びたフェンスに体当りし、押し破った。がらんと広い空間に、彼はエントリーした。「……ええと……」逃げる事も一瞬忘れ、彼はこの場所について考える。すぐに答えが出る。しみったれた小さい観覧車と、ジェットコースターのレールと、回転木馬の残骸。 19

2021-09-24 22:38:55