【十月の話し声】福間健二 #k2fact310
三月十日の新しい歌が、それを飲み込む海に足りないもの、たとえば対角線を求めて、何を脱いでみせただろう。可愛い制服のほかに。やってくる明日のほかに。ぼくは海辺の町にもういない。何角形の、どんな感覚のなかで色づく人間に恋をしたのか。見守る役を忘れて。(十月の話し声1)#k2fact310
2021-10-21 11:47:44わかったつもりの運命をなぞって走る色鉛筆の青を遅咲きのダリアが停まらせて、もう十月。高校生四人が明るくなった川べりで話している。うれしい。マスクでもわかる笑顔。気温は朝からあがらないまま。反転して危うい世界の眺め。大あくびして体も伸びをすればいいのに。(十月の話し声2)#k2fact310
2021-10-22 11:24:51黒い表面の下に、コネでなんとかなっている構築性の人たちが。急な寒さも有力者との挨拶の材料にして。女性運転手のタクシーが来た。マスクがカッコいい。何を切らない。何と何を離れさせたくない。表紙と中身が食いちがう夢の数々で足踏み。ふんばるよりはずっといい。(十月の話し声3)#k2fact310
2021-10-23 11:05:29歩け、歩け、理不尽な世界を見ろ。自分に命令して十月だから十角形の対角線、三十五本もあるのかと足りないミルクを思って目ざめると西の空にはまだ月。歩け、歩け、間に合うぞ。こういう月って好きだと歌う男女の領土の、きょうの最初の訪問者。配達するものなくても。(十月の話し声3)#k2fact310
2021-10-24 11:41:17十階、宿題は素材と力をひとつにする方法だ。秋でも秋の夢を見ない青春がエレヴェーターであがってきて作る風の音。でも、そのドアは。火の時代でも土の時代でもない。午前も午後もあかない。早くに酔ってそのあとどういう夜だったかわからなくなる時短もきのうまで。(十月の話し声5)#k2fact310
2021-10-25 10:10:58一個でいいものが二個ある。いらない一個をだれがもらってくれるかと考えていると空が晴れてきた。東アジアを転がる石の不完全さ。まじめくさった蓋が割れない。なんとかしたいという古い歌が引きうける苦痛。同類、でも経過はちがう。だれかはきょうからやっと普通の人。(十月の話し声6)#k2fact310
2021-10-26 10:57:52分身的な弟の、だれかに恋をしているという噂。どの駅で聞いただろう。夜と昼の、その羽のリバーシブルは中央線よりも南武線だ。誤解されやすい抒情詩、川を渡る。足にも靴下にも問題がある。そうでなくても躓く恋です。岸辺に人がいます。川の岸辺に裸足で動く人がいる。(十月の話し声7)#k2fact310
2021-10-27 11:44:23水溶性の紙、台所以外でも不便なことがある。気づいた主婦は、ひとりではない。多摩から川崎方面。快晴の空になにか飛ばしたくなる。まず、見ること。夜に受け入れた痛みを転がしていると自分の目が戻ってきた。簡単に溶けたり増殖したりしないものを。読まないで、見る。(十月の話し声8)#k2fact310
2021-10-28 11:48:24改良中のプリンセス。姿は見えないことにして。水溶性、だが消えても成分は世界のどこかに流れる。高校生の四人。ひとりは会いに行く人がいて、残った三人の議論。まだ乾かない。正しい自分を始末できない。裸の人も去って、乾けば色を出す秋。仮定の風は友だちじゃない。(十月の話し声9)#k2fact310
2021-10-29 10:11:33昨日の人、今日の人、明日の人。泣いているし、抗議しているし、誘っているし、まだ疲れきっていない部分がある。できる部分から波打たせる。東三丁目の夕闇に戻りながら思った。ここがどういう地獄ならいいのかという先手、ない。登場してくれたみなさん、ありがとう!(十月の話し声10)#k2fact310
2021-10-30 13:40:34仮定の風は友だちじゃない。 ベーコンとレタスのスパゲティ。10月25日。 #k2fact310 pic.twitter.com/2Myxa0t4nY
2021-10-30 13:44:12