ギガベース日誌 ほのぼの閑話「薬物汚染をやっつけろ」

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「多分話できる状態じゃないのよね」 「いました！え、うわっ……」 そこは工廠に運び込まれる物資輸送ルートとなる、輸送用エレベーターのシャフトだった。 「あぁ～……今日は結構、辛口ってテイストですぅ～～～」 「何やって……何やってんだ？！」　#ギガベース日誌

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ポーラは四つん這いになってシャフトの壁を舐め、容器入りの塩を一振り。もう一度舐め、今度は胡椒を一振り。 「設備保全用の清掃メカが撒いた洗浄液を舐めてるのよ……アンタのせいでどこもかしこも塩と唾で錆だらけになんのよ、アル中のクソ重巡がっ！」 「ばっ、ぎゃんっ！？」　#ギガベース日誌

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天津風は私怨が多分に混じった蹴りをポーラの頭部に見舞う。重量感のある動きでもんどり打ってひっくり返ったポーラは、蹴りの痛みと急にこみ上げた倦怠感に呻き出した。 「洗浄液って」 「そうまでしてアルコールを……」 「おえ、おぐっ、ごえええっ」　#ギガベース日誌

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長月と高波から憐れみの目が向く中で、ポーラの体内に蓄積され続けた酒と食事の混合物達が、ついに親離れの時を迎えた。 「うわ汚い！」 「こんな調子じゃ薬物どうこう以前の問題だな。懲罰艦隊の連中の持ち込みじゃなかったか……」 「ちょっと待って」　#ギガベース日誌

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ポーラの口から止めどなく溢れ出すそれを、天津風は見逃さなかった。 「……見せなさい！」 「びいっ！！」 ポーラを再び蹴り倒し、吐瀉物の山を凝視する天津風。 「おい、これは……あの結晶じゃないか！こいつもキメてたのか？！」 「……いや、違うかも」　#ギガベース日誌

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長月達が吐瀉物とにらめっこする一方で、高波は倒れたポーラの顎を手で開き口内の様子を観察していた。 「これ……ポーラさんの中から出てきてるかも、です」 「は？」 「"発生源"ってことね、恐らく」　#ギガベース日誌

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「そんな馬鹿な？！体内でこんな……艦娘の薬剤耐性を貫通するレベルの物質を！！？」 「ポーラは常に艦内を徘徊して、少しでも"酔える"と判断した物質を見つけたら全力で摂取する。それを繰り返してるうちに、廃棄物や毒性物質が体内に蓄積され、何かしらの反応を起こしたとしたら」　#ギガベース日誌

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つぎのひのあさ。　#ギガベース日誌

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「ポーラの体内で起きた奇跡の化学反応の産物。我々はこれをケミカルPと命名した」 「艦内に拡散したケミカルPは、ポーラの徘徊ルートを特定することで大半の回収に成功したわ！」 「…………」　#ギガベース日誌

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「提督。絶句したい気持ちは痛いほどわかりますが、一日で見事原因を特定した長月さんの功績を認めては」 「急に秘書艦らしい事を言うな。いや、不知火の言う通り迅速な対応素晴らしいが……聞きたいことは山程ある。なんでポーラ本人は薬の影響を受けていないんだ」　#ギガベース日誌

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「既にキマってるからじゃないの」 「ポーラの醜態は間違いなくアルコールによる酩酊だ。ケミカルPの影響を受けない理由は不明だが……河豚が自分の毒で死なないのと同じじゃないか？」 「フグって何だ」 「あー、悪い。国家解体戦争後生まれ（いまどき）の子に通じない例えだった」　#ギガベース日誌

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長月の無自覚な煽りに若干眉を震わせながら、DfJは次の疑問を投げかけた。 「で、今後生成されるケミカルXの処理はどうする。アルコールが切れたポーラの暴れ方を鑑みるに、拘束や禁酒は今以上の惨事を招くだろ」 「Pな。今はグラーフに頼んで、海防艦を付き添わせている」　#ギガベース日誌

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「工廠が落ち着いたら、大宮あたりにポーラのゲロを回収する付き添いロボットを作らせる予定だ。ケミカルP、何かに使えそうだからな。報告は以上だ」 「色々と腑に落ちないが、まぁ解決は解決だ。寄れ、長月」 「うむ」 「間宮の銀チケット3枚だ。高波と天津風とで分けろ」　#ギガベース日誌

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「なんだ、金じゃないのか！期待してたんだぞバニラ最中！」 「横須賀で頑張るこった」 「ちぇ。まぁ良い。武勲が必要なら立ててやるともさ。ケミカルPの有用な活用法も、いつかこの長月が考えてやる」　 DfJの手から銀の箔押しがされた紙を受け取り、長月達は執務室を後にした。　#ギガベース日誌

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最早ルーチンワークと化した執務の手伝いで部屋にいた北上は、露出した自分の腹部を撫で回した。 「艦娘の身体はまだ沢山の未知と不思議に溢れてるねぇ」 「体内でヤバい麻薬を生成できるようになるのは未知とか不思議じゃなくて病気って言うんだ」　#ギガベース日誌

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「それもそうねー。そう言えば、アイオワがぶっ壊した建造システムってどうなってんの？アレ、確か財団からの貰い物で、妖精でも仕組み知らないんじゃなかったっけ」 「自己修復システムがあるからそれで対応してる。どうやって直してるのかもわからんがな」　#ギガベース日誌

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「どうする？ポーラの体質、建造システムがバグっちゃった結果だったりして。財団が変な細工とかもしてそうで、何か怖いわー」 「うちの艦娘が変なのばっかなのはそのせいかもなぁ」 「提督の教育の賜物でしょう」 一拍の後、執務室は3人の笑いで満たされた。　#ギガベース日誌