ギガベース日誌 ほのぼの閑話「薬物汚染をやっつけろ」

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「あ、アイオワさんがそんな状態に……」 「……で、どうなったの？その、建造システムのほうは」 「バロットって知ってるか？」 「それ以上聞かない事にするわ」 「極めつけに今日の夕方……2時間ほど前に甲板で……」　#ギガベース日誌

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「クソみてえな一日だった……」 「心中お察ししまーす。あら、伊良湖の新作、結構好きかもしれないわ……」 「それをこれからの作業で取り戻すんだ。菓子貪んのは良いが、動くなよ」 「はいはい、わかってます」　#ギガベース日誌

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ライトで照らされたサイセターの甲板に立つ二人。 クレーンで吊り下げられたGA製ミサイルポッドに向けて、DfJは巨大な工業用スプレーを向けている。 側に立つ扶桑は艤装を装着したまま動かない。彼女の仕事は、自らの巨大な艤装をペイントツールの置き場として提供することである。　#ギガベース日誌

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「物を引っ掛ける場所が沢山あるから」という理由でスプレースタンドとして抜擢された際には相応の不満を表明した扶桑だったが、食堂で使用可能なVIPチケットを複数枚握らされた瞬間に快諾した。 「この艦橋が役に立つ日が来るなんて思っても見なかったわ……」　#ギガベース日誌

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「繰り返すがマジで動くなよ。貴重な塗料が溢れる」 「はいはい。それにしても……ネクストのパーツの塗装って手動でやるのね」 「本当だったらもっとしっかりした場所でしっかりした塗料をしっかりした方法で塗るんだよ。ラインアークの連中がまともな塗料を持ってなかったせ……」　#ギガベース日誌

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「ピチャ、ピチャ、ピチャ……」 「ぎゃああぁああぁあああああっ？？！！？！」 甲板の隅から"それ"が這い上がってきたのを見た扶桑は、盛大に尻餅をつき、艤装に置かれていた塗料の缶がサイセター中央部の隙間へと転がり落ちていった。　#ギガベース日誌

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「……扶桑。お前の血で代用していいか？」 「ちがっ、提督！あれ見て！あれ！！」 「あぁ？何わめいて……うおわっ？！」 恐らく壁面にずっと張り付いていたのだろう。船体の側面から甲板によじ登ってきたのは、軽巡洋艦パースだった。　#ギガベース日誌

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「パース。そんな所で何して……」 「私の瞳を、探していたの」 「あー……うん？」 「ねえ、提督。海の音は不思議ね」 「うん、海の音？」 「嵐のようで、雨のようで、でもゆっくりと、滴るように、私の底から響いてくるの……」　#ギガベース日誌

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「私の底から響いてくるの……私の底から、やってくるの……でもゆっくりと、滴るようにね……ここはずっと、青白いから……こうも同じ場所で光っていたら、彼女がずっと、勘違いしちゃうわ……」　#ギガベース日誌

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「こうして1日に3回もラリった艦娘のせいで酷い目に遭った司令官は、この長月に対処を命じてきた。何隻か好きに使っていいとの事だったので、高波、天津風、お前達をこうして呼びつけたわけだ」 「か、帰りたいかも……」 「何で私達なのよ！！」　#ギガベース日誌

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「ちゃんと理由はある。まず、今日起きた薬物濫用事件には、全て"これ"が絡んでいた」 菊月はビニールの小袋を取り出し、天津風の眼前に突き出す。 「何これ。緑色の……砂糖みたいな」 「結晶化してるかも？」　#ギガベース日誌

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「3隻がラリったのは全てこの物質が原因だ。照月の場合は、触媒に使うコジマ汚染廃棄物にこれが混じっていた。アイオワはラインアークから強奪したコーラの在庫の中に、パースは愛飲してるアルゼブラ製のタバコの中に」 「過剰な反応が見られたのは、この物質のせいだと？」　#ギガベース日誌

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「うむ。没収した羽黒の装置と通常のクリーンなコジマ廃棄物を使って巻雲にキメてもらったが、照月ほど過剰な反応は見せなかった。動けなくはなったが」 「じ、じゃあ本当にこれのせいかも……」 「成分は？うちの妖精なら、解析はお手の物でしょう」　#ギガベース日誌

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「横須賀攻略に向けて人員も工数もフルで動かしてるからそんな暇無いと断られた！テルニがちょっとだけ見てくれた限りでは、少なくともサイセターの工廠で生成され得るものではないっぽいが」 「成程……ようやく、私が呼ばれた理由が理解ったわ」　#ギガベース日誌

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天津風はサイセターの特根───「特別根拠地隊」を仕切る司令官としての任を持つ。 特根は艦隊の補給・入渠・衛生に関連する事項を取り扱う部隊であり、長月が物質の出処をあたるには最適だった。 「私の記憶では、そういった怪しい物質を外部から運び入れた事は無い」　#ギガベース日誌

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断言する天津風に高波が続ける。 「ラインアークからの強奪物資と、パースさんが艦隊合流以前に買い込んだ私物に、羽黒さんの遺品……出処が違うものに混入していたという事は、特定の時期に特定の荷物に紛れ込んでいたわけではない、かも？」 「その通りだ。お前頭良いな！」　#ギガベース日誌

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「そこまで頭が回るなら、お前が呼ばれた理由も何となく察せるんじゃないか？」 「えっ？えーと……あっ」 「何よ」 「高波が……元々は海軍の艦娘だから、かも？」　#ギガベース日誌

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「そうだ！」 「そうなの？！」 目を丸くする天津風に、高波は居心地の悪そうな表情で答える。 「高波は元々、オーメル管理下のメガフロートに配備されていた艦娘で……ギガベースが島を襲った時、建造システムに登録されてない珍しい艦だからって、鹵獲されたんです」　#ギガベース日誌

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「レの字みたいな例外を除けば、元第一艦隊の艦娘で外部との接触歴があるのは大淀、巻雲、そしてお前だ。お前以外は既に尋問が済んでシロと判明している」 「た、高波はそんなものを持ち込んだ覚えは無い……かもです」 「かもって何だ？！思い当たる節があるのか？！」　#ギガベース日誌

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「違っ……だって、高波が知らないうちに、艤装の中に何か入ってたりしてたかも……」 「やめなさい長月。こんな気弱な娘よりも疑うに値する、もっとヤバい所と接触した連中がいるわ」 「本当か？」 「ええ。懲罰艦隊の連中よ」　#ギガベース日誌

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懲罰艦隊。 それは無法者集団たるサイセターの中においてすら、爪弾きにされた破綻艦が行き着く先。 "隔離と管理"の理念の下に設立された、倫理の最下層である。 「懲罰艦隊の大半の艦は、リリアナの戦力として貸し出されていた。合流の時に何か持ち込んでいても、不思議じゃない」　#ギガベース日誌

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「決まりだな……よし、では早速調査に行くぞ！」 「はい？！た、高波もですか？」 「当たり前だ！天津風、お前も来い！サイセターに蔓延るバッドトリップの影を、この長月が拭い去ってくれる！」　#ギガベース日誌

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2時間後。 息巻いて幕開けた長月他2隻による一斉摘発は、その全てが成果無く終わりを迎えようとしていた。 「清々しいほど全員シロね」 「糠に射突型ブレードって感じだ……最後はポーラか」 「電探に感あり。ポーラさん、近いかもです」　#ギガベース日誌

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時刻は既に午前2時。目標の艦娘が自室にいない場合、広大なサイセターの艦内をあてもなく彷徨き見つけ出すのは難しい。 艦内放送で呼びつけようとした長月だったが、天津風が無意味だと指摘し、電探と敵味方識別装置を用いての探索がとられた。　#ギガベース日誌