二楽山人氏による表紙シリーズまとめ(2021年11月22日までの投稿分)

二楽山人(@hitomaroeiku)氏が投稿した表紙に関するつぶやきをまとめたものです。
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ニ楽山人氏による「表紙シリーズ」まとめ(2021年11月21日まで)

二楽山人 @hitomaroeiku

日本の書物の歴史について学んでいます。特に形態と内容の相関関係に興味があります。必要があって、奈良から江戸時代までの本や本であったものなどを集めています。外国の書物史にも興味があります。

1.表紙シリーズの発端「金泥ではなく黄銅」で塗られた表紙

二楽山人 @hitomaroeiku

題簽は後のものですが、表紙はもとです。写本を真似ながら、本物の金泥ではなくて、黄銅を利用した下絵が施されています。 pic.twitter.com/J6RzFqfUMd

2021-11-01 19:50:12
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・金泥(きんでい):純金またはそれに近い金を極微の粉末にして膠水で溶いた絵具の一種。(出典:国史大辞典)

二楽山人 @hitomaroeiku

『源氏物語系図』に光源氏を見つけられなかった、という小話があるとかないとか。系図は最終身分で掲出されますので、太上天皇となった光源氏は、邸宅名から六条院とされています。これは大本の絵入源氏の版本を真似て出された、横本の絵入源氏物語の系図です。大本のものより見やすい気がします。 pic.twitter.com/Xt1oIMzCOP

2021-11-01 12:06:22
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2.題簽からの流れ!「題簽」(だいせん)とは?

二楽山人 @hitomaroeiku

題簽だけが売られていたりします。喜んで買う人は多くないかもしれませんが、僕はその一人です。装飾のある絹地題簽は相当格の高い本のもの。皇室がらみの本であるならば、筆者は大臣クラスであるはずです。調べなければ。 pic.twitter.com/B9s36Bdtd1

2021-11-03 07:15:35
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二楽山人 @hitomaroeiku

少し補足して説明を。表紙に直接題名を書き込むこともありましたが、細長い紙に題名を書いて、表紙に貼り込むこともありました。この紙を「題簽(だいせん)」といいます。和歌関係(韻文)は表紙の左に、物語関係(散文)は表紙の中央に貼るのが一応の故実になっていました。この2枚は左ですね。

2021-11-03 14:26:02
二楽山人 @hitomaroeiku

格の高い本を作りたい時には、書の名手などに本文の書写を依頼したりするわけですが、より格を上げたい場合には、題簽の執筆を、身分の高い人にお願いしたりしました。天皇や親王が担当している例も少なくありません。ありがたがって表紙に貼らず、包み紙に入れて本と一緒に箱に入っていたりします。

2021-11-03 14:30:21
二楽山人 @hitomaroeiku

謝って消してしまったのでもう一度。絹地の題簽は江戸時代から目立つようになりますが、当然表紙も立派でないと釣り合いません。錦や金襴などの豪華な裂が使用されます。この2枚もそうであったはすです。どういう表紙が似合うか想像するのも楽しいものです。

2021-11-03 16:16:56
二楽山人 @hitomaroeiku

で絹地の題簽が貼られた例を。同じ本屋さんから譲っていただきました。故実と違って真ん中にあるのは、蜀江錦の模様との兼ね合いなのでしょうか?ちょっと謎です。ともあれ大変豪華なもので、天皇か院から下賜された本だと思われます。18世紀頃かと。 pic.twitter.com/QzlrRtdDdi

2021-11-03 16:20:03
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・蜀江錦(しょっこうにしき):蜀に産した精巧な錦。蜀江の清い水に糸をさらして織ったという。わが国にも奈良時代から渡来し、室町時代には特に多くもたらされた。略して蜀錦(しよくきん)とも。(出典:角川古語大辞典)

二楽山人 @hitomaroeiku

表はちょっとくすんでいるので、状態の良い裏表紙を。詳しくありませんが、絹織物の研究にも貴重な資料ではないかと思います。 pic.twitter.com/wZcqvImSqu

2021-11-03 16:22:16
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磯野カーネル @IsokaNori

@hitomaroeiku 題簽という言葉 初めて知りましたこの付箋一枚で元の作者まで辿れるとは 浪漫を感じます

2021-11-03 09:12:17

3.派手すぎる表紙!天皇か院からの下賜本『自讃歌』

二楽山人 @hitomaroeiku

そしてこれが19世紀頃の天皇か院からの下賜本です。毒々しいまでの派手派手しさ。故実通り左肩にある題簽は勿論絹地です。「自讃歌」の文字は、江戸後期に流行した有栖川流の特徴を示しています。4本爪の龍文がある中国のイメージの強い錦の表紙に合うのは、やはり鮮やかな黄色の題簽でしょうね。 pic.twitter.com/eDfZ19tAYi

2021-11-04 07:57:40
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・有栖川流(ありすがわりゅう):書道の流派の一つ。江戸中期の有栖川宮五代の職仁(よりひと)親王に始まったとされ、八代幟仁(たかひと)親王によって大成します。

二楽山人 @hitomaroeiku

これは先にご紹介した派手派手しい表紙の『自讃歌』の表紙裏、つまり「見返し」です。やはり絹地。表紙といいこの見返しといい、その派手好きな感性には驚かされます。当たり前のことではありますが、表紙や見返しのデザインからも、その本の製作時期は推定できるのです。 pic.twitter.com/0KaZnuges3

2021-11-05 07:30:06
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4.今度は天皇か院からの下賜本ではない『百人一首』!

二楽山人 @hitomaroeiku

おそらく天皇や院からの下賜本ではない『百人一首』の表紙です。それでも通常の緞子や金襴よりは少し豪華そうな裂が使用されています。題簽の筆跡が同一なのは、旧蔵者が同じだからだと思いますが、書写者名を記したものは、版本を覗いて見たことがありません。 pic.twitter.com/Tsm0sXti3G

2021-11-06 18:48:08
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二楽山人 @hitomaroeiku

中はこんな感じです。同じ百人一首でも書式などに違いがあります。共に上質な両面書写が可能な紙を使用しています。 pic.twitter.com/wX6e1vfFgU

2021-11-07 12:57:57
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5.題簽に金の紙を用いた表紙は大名家クラスの本かも!?『堀川院百首』