バチェラー4を社会学する~なぜ社会学者は恋愛リアリティショーの世界に飛び込んだのか

アマプラで配信中の恋愛リアリティーショー、バチェラー4。異色の出演者、社会学者の松本妃奈子さんの出演が話題になっています。その理由を社会学的な視点から考察してみました
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はるかかなた @isawmydevil

リツイート記事、思うところがあったので、少しまとまった分量の投稿をします。(記事の内容はお手数だが直接リンクを辿っていただけると幸いです) 正直いって、松本さんの登場は正直賛否両論です。様々な意見が出ていますが、その中でジェンダーを巡る議論が少なからず散見されます。 twitter.com/bijapan/status…

2021-11-26 20:57:53
Business Insider Japan @BIJapan

🔔NEW:「 #バチェラー ・ジャパン」シーズン4が今日から配信されます。 参加者の松本妃奈子さんは「結婚は不公平。制度が変わらない限り結婚しない」と言い、番組のジェンダー観にも批判的です。 参加した理由から撮影中に生まれたシスターフッドまで、話を聞きました。 businessinsider.jp/post-246239

2021-11-25 11:05:02
はるかかなた @isawmydevil

まず初めに、“ジェンダー問題は身近だが、簡単な議論ではない”という事実を確認したいと思います。 確かに人類の半分は女性だし、誰でも当事者だし、議論する手がかりは身近に転がっています。しかし身近だからといって簡単だというわけではありません。むしろ人類史上最も難解な問題といっていい。

2021-11-26 21:02:32
はるかかなた @isawmydevil

なぜ難解か。その難しさは三つに分けられるとわたしは思います。 ①実態把握。 ②原因分析。 ③解決実行。 ①実態把握。単純に研究量が多い。シンプルに人口と調査地域が多いのに加え歴史も遡らなければならず、学問として必要な研究調査の量が膨大です。想像するに途方に暮れてしまうほどです。

2021-11-26 21:10:45
はるかかなた @isawmydevil

②原因分析。実態把握が済んだら次は“なぜそのようになったのか”、つまり原因を分析しなければいけません。日本だけでも1億人以上が住む社会の、しかも数千年にわたるジェンダー抑圧の因果関係に見通しをつけなければなりません。

2021-11-26 21:14:14
はるかかなた @isawmydevil

③解決実行。原因が特定できたら解決策を練り、実行に移します。しかしその解決策がたとえ正しかったとしても、実行するリソースの問題、そして利害関係者の調整には気の遠くなるような努力を要します。 ジェンダー研究せよフェミニズム研究にせよ、これほどの難事業に取り組んでいるのです。

2021-11-26 21:17:49
はるかかなた @isawmydevil

しかも研究の対象者である女性、性的マイノリティー、そして忘れてはならないのは男性もそこに含まれているということですが、今まさに悩み苦しんでいます。つまり100年かけて明らかになればいいという研究ではなく、今ただちに成果が求められるシビアな学問なのです。

2021-11-26 21:19:45
はるかかなた @isawmydevil

こうした制約条件のもと、人類史上全く先行する研究がない(つまり研究対象も研究方法も研究手順も人材も、はては研究資源すら決まっていない)状態でスタートを切らざるを得なかったのがジェンダー研究です。

2021-11-26 21:25:38
はるかかなた @isawmydevil

ジェンダー研究、フェミニズム研究に携わっている方は“この研究は基礎研究である”とどっしりとした気持ちで研究には取り組めていないと思います。 ジェンダー研究は時間との勝負、かつ人間の人生が関わった実践の学問なのです。

2021-11-26 21:22:15
はるかかなた @isawmydevil

自ずと研究には優先順位をつけざるをえず、唱えられる仮説も現実の複雑さをある程度犠牲にして、ある程度割り切った形での提出にならなかった側面は否めなかったのではないかと思います。それが現在、わたしたちが今一般的に認識している“ジェンダー論”です。

2021-11-26 21:27:30
はるかかなた @isawmydevil

つまりわたしたちが今曲がりなりにもジェンダー問題の全容が朧げながらででも見えるのは、ジェンダー問題が単純だからではなく、わたしたちにも把握できるようにジェンダー論が簡潔にまとまっているからなのです。

2021-11-26 21:30:08
はるかかなた @isawmydevil

何が言いたいかというと、ジェンダー論は身近にあって、誰でも当事者として議論する資格があるけれども、どこまでいっても奥底の深い問題だという、ある種の畏怖や敬意の感情を持って議論にあたる必要があるのではないかということです。

2021-11-26 21:34:52
はるかかなた @isawmydevil

別にインテリぶれとか四六時中緊張を持てということを言いたいのではありません。ただ、ジェンダー問題を考えるときは“ああ、本当にこの問題は難しいんだな”という謙虚さを、一欠片でもどこかに残す必要があるのではないか。それが結果的に議論相手や加害者被害者に対する謙虚さにもつながると思います

2021-11-26 21:37:35
はるかかなた @isawmydevil

つまりバチェラー4に松本さんが出演されている件、ときどき自分を振り返ってみてほしい。バチェラー4を見て様々な感情や考えに駆られると思います。それを感情的にどこかにぶちまける前に、“なぜ自分はこのような感情を感じたのか”という自問を投げかけてみてほしい。

2021-11-26 21:41:31
はるかかなた @isawmydevil

たちまち頭がゴチャゴチャしてこんがらがると思いますが、それがフェミニズムです。自分のことなのに自分でわからない。つまり自分ではない何かが、自分の思考や感情に影響を与えている。 それが社会です。社会は人間を育てますが、また人間を拘束するものでもあるのです。

2021-11-26 21:43:56
はるかかなた @isawmydevil

フェミニズムはその社会というものを、ジェンダーを切り口に分析して明らかにし、その解決に挑戦する取り組みなのです。 女性の権利の回復、権利の改善はもちろん大事ですが、それは過程に過ぎません。この社会に生きるわたしたちが本質的に自由になること。 それがフェミニズムの目標だと思います。

2021-11-26 21:46:38
はるかかなた @isawmydevil

そして松本さんはおそらくとても聡明な方で、自分が社会学者としてこうした使命を背負っていることに自覚的なのだと思います。 なのであえてバチェラーというジェンダー問題の渦中に飛び込んだ。松本さん自身が社会の歪み、人々の認知の歪みに気づくための装置になることを選択したのではないか。

2021-11-26 21:49:17
はるかかなた @isawmydevil

長くなりましたが、従ってバチェラー4の一つの見方は社会実験です。バチェラー4と松本さんという装置、鏡を通して、わたしたちが自分自身を見つめるという社会的な試みなのです。 かといって肩肘を張る必要はありません。わたしたちはただエンタメとして番組を楽しめばいい。

2021-11-26 21:52:16
はるかかなた @isawmydevil

ただわたしたちは番組を見終わったあと、そっと目を閉じて自分の頭の中、自分の心の中を反省して見ることが有用かもしれません。 バチェラーで語られるのは性と競争、好意とその分配の物語です。勝者もいれば敗者も出ます。どこか不条理なこと、気に食わないこともあるでしょう。

2021-11-26 21:57:27
はるかかなた @isawmydevil

もしその物語を見て心がどこかざわついたなら…そのざわつきを立てたのは抑圧的な社会なのかもしれません。その正体を探ろうと好奇心を抱いたとき、あなたはすでに社会学の徒になります。 そのあとは自分が感じたこと、考えたことを家族や友人、SNSでシェアしてみましょう(ただし謙虚さを忘れずに)

2021-11-26 22:00:41
はるかかなた @isawmydevil

バチェラーは人気番組です。これだけ多くの視聴者が同じものを見て、同じ問題意識でジェンダー問題を共有したら、あれだけ難しかったジェンダー研究も大きな一歩を前に踏み出すことになります。そしてそれが松本さんが番組に出演された理由の一つなのではないかと思います。

2021-11-26 22:02:35
はるかかなた @isawmydevil

最後に、要するに。 “楽しみましょう、娯楽として。そして知的冒険として。わたしたちは番組の出演者ではありませんが、この知的冒険の登場人物のひとりなのですから。” そしてこの旅にはチケットは要りません。ただ相手に対するマナーさえ忘れなければ、誰でも一歩ずつ先に進める旅なのです。

2021-11-26 22:06:13