T字型ER法の生みの親が語る「模倣は独創の母である」の真実性

佐藤正美 @satou_masami

「模倣は独創の母である。唯一人のほんとうの母親である」（小林秀雄、「モオツァルト」）。模倣は独創の起点であるということは、今どきの高校生の「文学青年」でも綴ることができるでしょう、言うだけなら小林秀雄氏の言を俟（ま）つまでもない。

佐藤正美 @satou_masami

私淑とは 「直接に教えを受けてはいないが、その人を慕い、その言動を模範として学ぶこと」（「広辞苑」）ですが──直接教えを受けている人に対しては 「親炙」 という──、同時代に生きている師には直接に師事することができるけれど、古人を模倣するのであれば私淑しかない。

佐藤正美 @satou_masami

小林秀雄氏は、ヴァレリー 氏やアラン氏に私淑したのでしょう。私淑は、師と仰ぐ人に対する信頼がなければできないでしょう。

佐藤正美 @satou_masami

個性あるいは独創というのは、個性的あるいは独創的になろうとする意欲から生まれるものではない、そういうことは古来言われてきたことで改めて述べることではないけれど、私のような程度の凡人が そういうことを言っても鼻で笑われるだけでしょう。

佐藤正美 @satou_masami

私のような程度の凡人が言っても笑われるだけだから、天才の言を一つ引いておきます──「格に入り格を出でて、はじめて自在を得べし」（松尾芭蕉、「三冊子」）。

佐藤正美 @satou_masami

私のことを言えば、凡人は凡人なりに一つの矜持をもっています──その矜持とは、20年以上にわたってモデル技術 TM を作ってきたことです。私の壮年期は ほとんど TM を作ることに費やされた。

佐藤正美 @satou_masami

もし TM を作っていなかったら、私は社会になじめない・破滅を好む「文学青年」のまま今に至っていたでしょうね──「文学青年」というのは、文学愛好家ではあるけれど、まともな作品を何一つ作ることができないまま、いっぱし批評家を気どった未熟柿（なまじゅくし）の状態なので鼻持ちならない。

佐藤正美 @satou_masami

TM が生まれる切っ掛けとなったのが、コッド関係モデルです。私は、30歳代前半の頃、リレーショナル・データベースおよびコッド正規形を日本に導入普及したエンジニアの一人です。コッド関係モデルには、私は「私淑」するというよりも苦しめられた。

佐藤正美 @satou_masami

苦しめられたという意味は、私はリレーショナル・データベースとコッド関係モデルを日本に導入普及した先駆者として当時 「超売れっ子」になってはいましたが、いっぽうで私がやっていることはコッド関係モデルを「猿まね」して稼いでいるにすぎないという後ろめたさに苦しめられていたのです。

佐藤正美 @satou_masami

他人に比べて、少しばかり早く リレーショナル・データベースやコッド関係モデルを知っていたにすぎないので、その程度の知識であれば、他の人たちも いずれ当たり前の技術として習得します。

佐藤正美 @satou_masami

その状態は、登山に喩えれば、他人よりも少し先に登って、下を見下ろしながら優越感に浸るというような ばか気た状態なので、その状態をよしとしない私は 40歳頃のときに 「独自の」モデル技術を作ろうという これまた ばか気た野心を抱いて、Ｔ字形ER法（TM の前身）を作り始めたのです。

佐藤正美 @satou_masami

ばか気た野心と綴ったように、後々振り返ってみれば、TM はコッド関係モデルを前提にしたモデルにすぎないことが わかった。Ｔ字形ER法そして TM を作るのに費やした年月が 20年以上であるということは、「模倣は独創の母である」ということを私が実感するのにも同じ年月を要したということです。

佐藤正美 @satou_masami

この単純な箴言を実感するのには、それほどの年月を費やすことになったのです。そして、「模倣は独創の母である」ということを私は、今、一切の誇張を入れないで確かに言うことができる。

Hisahiro Tsukamoto @hihats

保守されなくなってきたOSSをForkしたときに似たような野心めいた心情に気づいてなんだかなーって気分だったけど、そんなに後ろめたさを持たなくてもいいかと少し楽になる話。 twitter.com/satou_masami/s…