トッドとブルデュー

「実は相性がいいんじゃあないか?」と考えるフランスの碩学二人の思想をこねくり回します。
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トッドはブルデューがお嫌い?

孫二郎 @344syuri

ブルデューのハビトゥス論を切り口にトッドの家族論を分析したら絶対面白くなると思うんだがなあ。 なんかトッドの方がそういうアプローチを嫌がってるようにも見えるが。

2022-02-07 19:40:52
孫二郎 @344syuri

社会学のブルデュー研究者と歴史人口学のトッド研究者はあんまり重なってないのかもしれない。

2022-02-07 20:02:22
孫二郎 @344syuri

エリート中のエリートのくせにフィールドワークまで難なくこなすブルデューとエリート校の落ちこぼれでイギリスに留学して資料と取っ組み合いながらやっと花開いたトッドの相性は確かに良くなさそう。 何かのインタビューでブルデューと比較されたとき露骨に嫌そうにしてたし。

2022-02-07 20:20:52

では勝手にやらせて頂きます

孫二郎 @344syuri

トッドの家族論の穴は「どうして同じ家族型が世代を超えて繋がるか」という点にほとんど言及がないところだと思うんですよ ここにハビトゥスを導入するとめっちゃ収まりがいい というかブルデューが『再生産』で論じているところなんですね

2022-02-08 01:33:52
孫二郎 @344syuri

『再生産』はブルデューの中でもハビトゥスという着想を得る前の初期の著作なんですが(だから凄く晦渋な物言いが多い!)、後にハビトゥス論につながる考え方はすでに表れています。先任者が後任者を揉みに揉んで教育し、後任者がさらなる後任者に同様の教育を施す、徒弟制的な教育が描かれています。

2022-02-08 01:45:03

ハビトゥスとは

孫二郎 @344syuri

人間はオギャ―と生まれてしばらくの間は家族以外の社会を知らない。家族によって教え込まれたナマの振る舞いを受け入れます。言い換えると、赤ん坊は家族という構造を自分の精神の中に取り込みます。これが「身体化された構造」ハビトゥスというわけです。

2022-02-08 01:52:59
孫二郎 @344syuri

成長して自分が家族を持つようになると、どうしても自分が生まれ育った家庭をモデルにせざるを得ない。自分の中にあるハビトゥスを取り出して反映させる必要があるわけです。構造に作られたハビトゥスが今度は構造を作り出すんですね。このことから、例の持って回った口ぶりで「構造化する構造」(続

2022-02-08 02:10:20
孫二郎 @344syuri

続)にして「構造化された構造」とハビトゥスを定義することができるわけです。

2022-02-08 02:10:21
孫二郎 @344syuri

さてトッドに話を戻すと、例えば両親+子供二人の家庭で育った男性はやっぱり「結婚して子供も二人は欲しいなあ」なんて無意識に考えるわけです。ここで収入とか共働きの関係で子供は一人だけにすることに決めた場合、子供は「両親+子供一人」の家庭をハビトゥスとして持つわけです。

2022-02-08 02:19:57
孫二郎 @344syuri

こうやって世代から世代へ「ちょっとずつ形を変えながら」構造は構造化され続けるわけです。 世代間のバトンがどう渡されるか、こう考えるとしっくりきませんか。

2022-02-08 02:24:26
孫二郎 @344syuri

思いのほか長くなってしまったのでまとめを作ります。

2022-02-08 02:25:37

家族から政治を語るという無茶が成立しうる理由

孫二郎 @344syuri

トッドの家族論には個人的にもう一つ疑問点があって、「家族形態が政治(社会)形態に影響する」という命題に対する「なぜ?」に十分応えてない気がするんですよね。 これも実はハビトゥスを挟むとすんなりいきます。

2022-02-08 19:00:04
孫二郎 @344syuri

ハビトゥスは「構造化する構造」と言われる通り、そこから発する創作物をハビトゥスの相似形にしてしまいます。ブルデューはアルジェリアでのフィールドワークで、彼らの内面性と農事暦、家の造りに共通点があることを発見しました。

2022-02-08 19:00:04
孫二郎 @344syuri

家の造りにまで無意識に反映されるような強力な内的構造が、社会や国家のようなむき出しの権力関係に反映されないはずがないですね。 ゆえに政治体制は国民の家族形態に影響を受けざるを得ないわけです。

2022-02-08 19:00:05
孫二郎 @344syuri

ちなみに、国家の側も教育を通じて国民のハビトゥスを変形させることができます。この効果は「鉄は熱いうちに打て」のことわざ通り、子供が幼く素直であるほど効果が高くなります。心理学の大家ピアジェによれば、そのピークは8歳から12歳までの間に訪れるそうです。

2022-02-08 19:00:05
孫二郎 @344syuri

小学校での教育がいかに大切か力説したところでこの項終わり。

2022-02-08 19:00:06

存在しない記憶とハビトゥス

孫二郎 @344syuri

日本は確かに直系家族かも知れないが、自分の家はもう古くから核家族だよっという方多いと思います。ご安心ください、それが普通です。のび太もしんのすけも核家族です。 でも注意して下さい。葬式で喪主を務めるのは長男が多くありませんか?世間体は気になりませんか?

2022-02-10 08:52:32
孫二郎 @344syuri

トッドは『シャルリとは誰か?』あたりから「ゾンビ・○○」という言い回しを好むようになっていて、日本のことも「ゾンビ・直系家族」と評しています。普段は核家族でも、いざというときに古い意識が現れる。「世間体」という構造を反映して、伝統がハビトゥスの中に書き込まれているのです。

2022-02-10 08:52:32
孫二郎 @344syuri

「ゾンビ」が最初に発見されたのはフランスの旧カトリック地帯です。普段はろくすっぽ礼拝にもいかない人々が、イスラム教徒によるテロが起きた途端自分たちがクリスチャンであることを思い出したようなのです。

2022-02-10 08:52:32
孫二郎 @344syuri

核家族は産業社会にとってある意味最適化された家族です。ポスト産業時代に入れば不具合が起きても当然です。そんな時、持てる手札=ハビトゥスから有効な手を打つとしたら、古典的な(実際には経験したことのない)三世代同居を蘇らせるのも仕方ないことだと思います。

2022-02-10 08:52:33
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