サイゼリヤデート、たんぽぽの花束、クリスマスの4℃、そしてバレンタイン、贈与論からまとめて考察

Twitterでよく燃える全てを「贈与」という観点に着目して考察してみました。
37
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

これは最初に言及した、上司から部下への「奢り」もそうですね。若い時分には給与が少ないから、上司が飲食を負担することで少しでも経済的に助かる。そして、部下がやがて上司になるときに、また自分も若い人に奢る。そういう差延を伴う交換が成立している。

2022-02-13 12:36:49
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

ただし、ここでのミソは、上司本人は決して奢った部下から、お礼を言われることはあっても、反対給付を直接受け取ることはほとんど期待されていないということです。給付は自分が若いころにすでに受け取っているのであって、部下が上司になるときには、その部下に奢る。

2022-02-13 12:36:49
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

差延の性質上、給付者に反対給付する人が別人格である場合は、「非礼」が発生しにくいという構造があるのかもしれませんね。 ここから、非礼が発生する贈与について考察を進めていきます。いったん休憩。

2022-02-13 12:36:50
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

ここまで、上位者⇒下位者(または対等者間)の場合、内容は権威にかかわることはあっても、被贈与者が贈与内容をもって「欠礼」にはならないか、なりにくいという話をしましたが、ここからは、贈与の内容が粗末であることが「欠礼」になる事例について考察します。

2022-02-13 14:17:11
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

端的に言うと、「欠礼にならない事例」の逆で、下位者⇒上位者の贈与ですね。一番端的なのは、いわゆる「献上」というやつです。「もらっていただく」という事例ですね。例えば「宮内庁献上品」のみかんが傷んでいた場合、たぶん、担当者には想像を絶する怒られが発生するでしょうね(おそろしい)。 pic.twitter.com/ZkxnFCav9c

2022-02-13 14:17:12
拡大
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

同じような構造は、表彰式などでも見られますね。主催側で表彰式を取り仕切ったことがある人は御存知だと思いますが、表彰する側(贈与者)は下手で、表彰される側(被贈与者)は上手です。こうした贈与のプロトコルを無視すると、直ちに「欠礼」が発生します。 pic.twitter.com/JEsIQpI8xa

2022-02-13 14:17:13
拡大
拡大
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

表彰状の記念品にも着目してみましょう。「下賜」がタバコや菓子といった「消耗品」であるのに対して、「表彰」の場合は、メダルや盾といった豪奢さを演出した価値物となります。贈与にあたっても、白手袋をはめて、傷がつかないように細心の注意が払われます。 pic.twitter.com/AsqI2RwB3l

2022-02-13 14:17:14
拡大
拡大
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

「下賜」が上位者からのねぎらいであるのに対して、「献上」は贈与者が「贈与したこと」によって権威を得るものであり、「表彰」はすでに達成された功績や公共的善(善行表彰など)への共同体からの「返礼」の性質を持ちます。

2022-02-13 14:17:15
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

「下賜」と「献上」の非対称性は、贈与者と被贈与者の権威と権力の差にあります。「贈与させていただく」性質をもつ献上においては、内容物が粗末であったり、贈与のプロトコルが粗略である場合、被贈与者の権威を軽んじ、傷つけたとみなされ、「欠礼」が発生するのです。

2022-02-13 14:17:15
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

「表彰」の場合は、共同体の代表者である贈与者側はしばしば、被贈与者側よりも高位者ではあるのですが、式典の最中は下手に立ち、被表彰者を敬って品物を「贈与させていただく」わけです。ここでの贈与物は、被表彰者のなした功績や善行への「返礼」という性質を持ちます。

2022-02-13 14:17:15
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

ここでの贈与は、功績や善行の「権威」を具現したものですから、それに見合うものでなくてはならず、贈与行為と贈与物に粗末さや粗略さがあれば「欠礼」になります。金メダルを噛んで炎上した名古屋市長がいましたが、その贈与の背景を考えれば、当然のことだと言えるでしょう。

2022-02-13 14:17:16
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

さて、やっと大元の問題に言及することができます。 >「待ち合わせデートでサイゼ」のミラーリングは「定年退職の花束にたんぽぽ」 だと発言者は主張し、一定の賛同を集めています。ここまでの考察をもとに、考えてみましょう。 twitter.com/rtoiuyuiotyuij…

2022-02-13 14:17:16
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

職場で送別会を取り仕切った経験がある人ならわかると思いますが、定年退職で花束などの記念品を授与するのは、明らかに「表彰」のプロトコルに基づくものになります。一般には在職者の代表が、その企業や組織を代表して贈与するものであり、どれほど役職に差があっても、贈与者は下座から手渡します。

2022-02-13 14:17:17
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

たんぽぽの花束のような「粗末さ」が「欠礼」となるのは、「表彰」と同じように、退職者がこれまで組織や企業にそれまでに貢献した「善」や「功績」を軽んじることになるからです。贈与者と被贈与者には、「権威」の差があり、贈与は返礼なのです。 twitter.com/rtoiuyuiotyuij…

2022-02-13 14:17:17
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

そう考えると、「サイゼデート」の「欠礼」が、「下位者から上位者への贈与の粗末さ」による欠礼と同一のもの(ミラーリング)であるとする主張者の言葉は、「待ち合わせデート」が贈与であり、しかも「欠礼」に怒っているほうの性別が、上位者であり、被贈与者であるという含意が立ち現れてきます。

2022-02-13 14:17:18
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

もちろん、補足しておきますが、「奢りを前提だとはしていない」と当該主張者は付け加えています。しかし、もしそうであるなら、「上位者への贈与」における贈与物の粗末さから生じる「欠礼」は「ミラーリング」になっていないと言えるでしょう。 twitter.com/rtoiuyuiotyuij…

2022-02-13 14:17:18
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

むしろ、これが「ミラーリング」として成立しているという主張の中に、なにか私たちの社会の男女関係における内面化された意識や権威の格差を生んでいるのではないか、と私は感じるのです。さらに、男女の「贈与」を分析していきましょう。

2022-02-13 14:17:19
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

そういえば、明日はバレンタインですね。男性から女性への贈与というと、しばしばクリスマスシーズンに4℃が炎上しますが、チョコレートのメーカーが炎上したという事例は聞きません。男性から女性にチョコレートを贈るケースでは、すぐに炎上するのに、おかしいですよね。 matomedane.jp/page/94519

2022-02-13 15:18:32
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

それどころか、むしろ、手作りなどのほうが「本命」感がでて喜ばれる風潮まであります。品質だけの話をするならば、手作りよりもメーカー製のチョコレートのほうが高品位のはずですが、武骨な手作りのチョコレートを女性からもらうのは嬉しいものです。

2022-02-13 15:18:33
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

男性から女性へのプレゼントについては、やれ4℃のネックレスはセンスがないだの、誕生日のプレゼントをケチるなだのと言うのとは、実に対照的です。この差異はなんでしょうか。

2022-02-13 15:18:33
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

かなり大胆な物言いをしてしまうと、男女の関係(恋愛から性愛まで幅広く含む)では、女性から男性への贈与は「下賜」の性質を持ち、男性から女性への贈与は「献上」または「返礼」の性質を持つのではないか……と考えるのです。詳しく説明していきましょう。

2022-02-13 15:18:33
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

バレンタインのチョコレートの内容物の品質の高さを問うことはあまりありませんが、「もらった事実」は話題にあがりますし、「もらえなかった人」が傷ついたり、嘲笑の対象になることはしばしばあります。「贈与されること」それ自体に価値があるのです。

2022-02-13 15:18:34
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

手作りがたっとばれる点にも着目しましょう。上位者が下位者に贈与する際に、内容物がそれほど重要視されないのはすでに述べましたが、逆に、「手間をかけて」「自らそれを作った」ことは、非常に重要視されます。

2022-02-13 15:18:34
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

例えば、蒲生氏郷は、功績のある部下をねぎらう際に、自らの屋敷に呼び、自ら竹を吹き、風呂をわかしてもてなした、というエピソードがあります。彼の部下たちはいたく感動したそうですが、もし、風呂焚き名人の従僕にやらせていたら、どれほど良い風呂であっても、同じ感興を与えることはありません。

2022-02-13 15:18:35
青識亜論(せいしき・あろん) @BlauerSeelowe

江戸時代の殿様が城下町で手ずから桶を割り、酒をふるまったとか、戦国武将たちが功臣を狭い茶室に呼び、手ずから湯をわかして茶を点じて振舞ったというのも、やはり同じような構造といえるでしょう。バレンタインの手作りチョコと同じく、「下賜」の構図です。

2022-02-13 15:18:35