- C_UP_A_Mystery
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…静まり返る食堂。 マリアを叩いた意図も、ケントやリネットを殺した意図も、何も分からない。 彼女が依頼だという「エリーゼの記憶を戻す」こと。 それの情報提供だと彼女は言った。 だが殺す必要はあったのだろうか? 何故ここまでしなければいけなかったのだろうか?
2022-03-06 22:35:19だいたい、この辺にいつもお菓子が眠っている。 好きなものをお腹いっぱい食べられるって、幸せだ。
2022-03-06 22:37:44「やぁ、リネット・ブラック。 悪い子だね。そんなんだからお父さんやお母さんにもいなかったことにされるし、いじめられるんだよ」 「……!」
2022-03-06 22:39:57異能を使った時も、そうだったが、何故彼女がそれを知っている? その疑問を悟ったのか、グリムはそっと歩み寄ると後ろを向いたままのリネットの肩に優しく手を置いた。
2022-03-06 22:41:12「僕はみんなのことがなんでも分かる神様なんだよ。 君のこともわかるし、家庭事情こともわかるし、君の、夢も」
2022-03-06 22:42:08「声が出せないって不便だよね。 周りもそれを嫌がって君を無かったことにしたりいじめてきたんでしょ? ご飯も貰えないし…あぁまったく!世の中は残酷で汚くて醜い!だからさ、こんな世の中からはおさらばしちゃおうよ。 君の2つ目の夢は叶ったでしょ?お腹いっぱい、この半月ご飯食べられたんだし」
2022-03-06 22:43:43皮肉るように、グリムは笑う。 リネットは、それはそうだが、と深く頷いた。この館にいる間ご飯に困ることは無かった。探し回って、近所の人たちの手伝いをしてお小遣いを貰う必要も無い。 暗闇の中で光る黄金の目が、妙に優しい様に思えた。
2022-03-06 22:44:37「1つ目と3つ目の夢は、諦めて欲しいかな。 僕は無いものは作り出せないんだよ。ごめんね。 ───ここよりもっといい場所なら、叶えてもらえるからさ」
2022-03-06 22:45:30そこに行けるのなら、愛されるだろうか。 大声で歌えるだろうか。 そんな幸せなことがあるんだろうか。
2022-03-06 22:46:46リネットはこくこく、と頷いた。 怪しさの見えない少女に向かって、首だけを向ける。 行きたい、と唇を動かす。
2022-03-06 22:47:10───その時、リネットの背中に熱さが灯った。 じわりと、滲むに何かが自分の背中を汚していくのがわかる。 ようやくやってきた痛みに悶え、リネットは声もあげられずに倒れ込んだ。
2022-03-06 22:48:28「〜〜〜ッッ!!」 「痛い?痛い?ごめんね。 けれども耐えたらきっと、 君はお腹いっぱいご飯が食べられるし、大声で歌えるよ」
2022-03-06 22:49:05そう言って、グリムはリネットの身体をぐるりとひっくり返した。 仰向けになった彼女の腹に向かって、包丁を突き立てる。
2022-03-06 22:49:40何度も、何度も刃を突き立てられ、リネットは唇から血が出そうなほど噛んだ。声が出せない、助けも呼べない。けれど、無意識に声を抑えていた。無いはずのものを、抑えていた。 痛みに耐えるように床に立てた爪が、傷を作り始めている。強く握りすぎて、爪が取れて血が出るほどに。
2022-03-06 22:51:41グリムは、ポツリと呟く。 包丁が肉に食い込む音を何度も聞いて、ようやく悲鳴のような空気が聞こえなくなった頃────グリムは包丁を手放した。 カランカラン、と金属特有の高い音が響き渡る。
2022-03-06 22:53:21