ロシアによるウクライナ侵攻の国際法的取扱いについて

自分用にまとめたメモです
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酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

ウクライナが同国東部で行ってきた人権侵害やミンスク合意を考慮すべきというロシア寄りの意見も寄せられる。しかし、ロシアの軍事侵攻の国際法上の評価は変わらない。仮にそのような事実があったとしても、個別的集団的自衛権の発動要件自体に影響を与えないし、要件を満たすものでもない。

2022-04-04 07:54:57
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

そのような事実の存在により自己の行動を正当化したいのであれば、ロシアは国際司法裁判所に堂々と出廷して書面及び口頭弁論で自らの主張を述べるべき。場も機会も与えられている。そこではロシアによる武力行使の法的評価が正当にそして有権的に行われる。

2022-04-04 07:55:18
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

ウクライナ東部で人権侵害があったのであれば、欧州人権条約違反を理由に欧州人権裁判所にウクライナを訴える国家間事件の付託(33条)もできたはず。自らの欧州評議会からの「脱退」は6か月後に効力が生じるから(58条1項)、法的にはそれまでに付託は可能かも(除名の効果が即時なら困難だが)。

2022-04-04 07:55:41
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

他方、脱退が効力を有するまでに生じた事実については欧州人権条約が適用されるので(58条2項)、新たに発覚したロシア軍による文民の大量殺害についても国家間紛争や個人の申立ての対象になる可能性あり。もちろん別途国際刑事裁判所への訴追対象にも。

2022-04-04 07:56:31
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

どの国も他国との紛争(ここでは「抗争(conflict)」とすべきか)を抱えている。その抗争については、いつから始まり、何が主題で、どのような基準で規律されるべきなのか、各国が自分の行為と主張を正当化できるように任意に切り取ることが行われる。それ自体は国際社会でよくあること。

2022-04-04 07:57:08
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

各国がそのフォーミュレーション如何を含む抗争を争う中で、国際法は国家間の抗争全体における法律的紛争(legal dispute)の側面のみを、関係国間の合意の範囲内で、規律し解決する。それ以外の部分はあらためて当該国の間の話し合いで解消されるべきもの。

2022-04-04 07:57:37
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

しかし、国際社会における問題の行為を言語化する際の関係国間の共通のツールは国際法に依存するところが多いため、説得力ある議論を構築するには国際法に基づくことが求められるし、そうでない議論よりも有利となる。それは抗争全体の法律的側面以外の部分にも当てはまる。

2022-04-04 07:58:00
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

国際法には、「ささやかだけれど役に立つもの」であってほしい。理想かもしれないが。

2022-04-04 07:58:25

酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

全くの場違いの拙文をそっと置かせていただいています。実物は未見ですが、若干の補足を。 twitter.com/Iwanamishoten/…

2022-04-14 17:36:55
岩波書店 @Iwanamishoten

【本日発売】核大国の侵略という悪夢にどう対峙するか。問題の歴史的文脈をさぐり、グローバルな影響を多角的に掘り下げつつ、抵抗の国際的連帯の可能性を追求します。 『世界』臨時増刊 『ウクライナ侵略戦争――世界秩序の危機』☞ iwnm.jp/022242 pic.twitter.com/dpue9JtazD

2022-04-14 11:00:37
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

今回のウクライナ軍事侵攻と比べて、1999年NATOのユーゴ空爆や2003年のイラク戦争はどうかという意見がある。武力行使に関する国際法上の根拠という点ではいずれも弱い、むしろいずれも違法といってもいい。しかし、以下の点で大きな違いがある。上記拙文で言いたかったことの1つは実はこの点。

2022-04-14 17:37:32
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

それは安保理を中心とした国連集団安全保障体制の活用を目指したかどうかということ。コソボ問題では、憲章第7章に言及した安保理決議1160、1199及び1203が採択されたものの、安保理内で協力を得られずに武力行使を許可する文言が挿入されず、不確かな「人道的介入」論を根拠に。

2022-04-14 17:38:18
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

イラク戦争ではやはり武力行使を許可する文言のない安保理決議1441しか採択されず、結果、決議687を踏まえた決議678の復活という筋悪の解釈による正当化に。しかし、それでも国連の集団的措置の形式を踏まえようとはした。私見では、国際法上違法であることは否定できないが。

2022-04-14 17:38:41
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

それは確かに「イチジクの葉」にすぎないし、国益優先の側面もあったに違いない。しかし常任理事国としての責務として安保理を動かそうとする努力は認められた。それに対して今回はどうか。上記の国際違法行為があったからといって今回のロシアの軍事侵攻の免責にはならないのは当然。

2022-04-14 17:39:13
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

しかも個別的集団的自衛権は、国連の集団的措置が発動されるまでの暫定的な性格のもの。だが、最初から安保理を考慮せず、むしろ機能不全に陥れて、自衛権(ですらないが)行使を長期化させようとするその姿勢は、自身が常任理事国として負うべき集団安全保障体制への責務とは逆行するのでは。

2022-04-14 17:39:36
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

拒否権という特権は集団安全保障を実効的に実施するために付与されているはず。戦後の国際秩序を担うべき大国が自国の勢力圏を追い求める手段として用いるのは、その法制度の趣旨としてどうか。常任理事国としてのその資格を真剣に問い直すことも必要なのではなかろうか。現実には難しいとは思うが。

2022-04-14 17:41:13
酒井啓亘(Hironobu Sakai) @UtBeneVivas

拒否権という特権は集団安全保障を実効的に実施するために付与されているはず。戦後の国際秩序を担うべき大国が自国の勢力圏を追い求める手段として用いるのは、その法制度の趣旨としてどうか。常任理事国としてのその資格を真剣に問い直すことも必要なのではなかろうか。現実には難しいとは思うが。

2022-04-14 17:41:13