「COVID-19に対する『古典的集団免疫』達成は不可能だろう」

@influenzer3 先生の2022年4月3日のツイートより。 NIAID所長のアンソニー・ファウチ博士がラストオーサーの論説 ”The Concept of Classical Herd Immunity May Not Apply to COVID-19” (https://t.co/kOSZK9wXO1)の和訳と解説です。
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influenzer @influenzer3

●COVID-19に対する「古典的集団免疫」達成は不可能だろう →JIDに掲載されたNIAID所長のファウチがラストオーサーの論説です。 これから人類が進むべき方向性を宣言した、重要な論説かと思いました。

2022-04-03 20:31:59
influenzer @influenzer3

要点は以下かと。 ・いわゆる「集団免疫」の達成は不可能である。 ・目指すべき目標は根絶ではなく、感染レベルを制御し、生活を正常化する事。 ・それに必要なツール(感染対策、ワクチン、抗体製剤、抗ウイルス薬)はすでに揃っており、達成できる可能性は高い。

2022-04-03 20:31:59
influenzer @influenzer3

・当面の目標は、変異株を念頭においたユニバーサルワクチンの開発。 ほぼ全文を訳しましたので、長いですが紹介します。 意外に長かったので、訳はかなりざっくりですwww 誤訳があればご容赦ください。 The Concept of Classical Herd Immunity May Not Apply to COVID-19 academic.oup.com/jid/advance-ar…

2022-04-03 20:32:00
influenzer @influenzer3

------ ・COVID-19パンデミックの中、「ほとんどの人々が生活に支障をきたす事なくウイルスと共存できるようになるのはいつなのか」について、以前より存在している推測(speculation)がある。これまで、これに関する議論の多くは「集団免疫閾値はどの程度なのか」について焦点が当てられてきた。

2022-04-03 20:32:00
influenzer @influenzer3

<集団免疫閾値とは、ある感染症の病原体に対して免疫(自然抵抗性、自然感染、ワクチン接種などによる)を保有する特定の割合を指しており、これを上回ればワクチンによる免疫獲得が不十分な一部の集団における散発的発生はあっても、社会における病原体の感染伝播がほとんど抑制された状態となる>

2022-04-03 20:32:00
influenzer @influenzer3

・一般に、集団免疫閾値は社会における十分な割合の人口がワクチン接種を受けたり、あるいは自然感染後に回復する事により、地域における感染症の発生が公衆衛生上の脅威となるレベル以下まで減少した時に達成される。例えば、米国におけるポリオや麻疹の流行はこの閾値に到達していると言える。

2022-04-03 20:32:01
influenzer @influenzer3

・しかしながら、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は、ポリオや麻疹とは異なり、古典的集団免疫(classical herd immunity)の達成は難しいかもしれない。

2022-04-03 20:32:01
influenzer @influenzer3

重要な違いとしては、ポリオや麻疹では、SARS-CoV-2と比較して抗原性が安定している事( phenotypic stability)に加え、これらの感染が長期間持続性の防御免疫を誘導する点が挙げられる。その他の理由も合わせ、集団免疫によりCOVID-19を制御する事は、非常に難しい目標かもしれないのだ。

2022-04-03 20:32:02
influenzer @influenzer3

・集団免疫閾値の概念は、微生物学誕生以前より徐々に発展してきたものである。1700年頃まで、天然痘や麻疹などのようないくつかの疾患は、疾患特有の所見や症状によって診断されていた。

2022-04-03 20:32:02
influenzer @influenzer3

1720年の欧州および植民地における天然痘ワクチンの導入により、自然感染とワクチン接種の両者ともに、感染および再感染を予防する事が明らかになった。集団レベルにおいては、アメリカ独立戦争の際の兵士や米国農場で働く奴隷への天然痘ワクチン接種は、流行を防ぎ感染者を最小限とする事が出来た。

2022-04-03 20:32:03
influenzer @influenzer3

このような初期の集団免疫現象の発見は、19世紀末に科学者らによる天然痘根絶への提言へとつながり、1978年についにその目標は達成されたのだ。

2022-04-03 20:32:03
influenzer @influenzer3

・1807年頃、集団免疫とは一見無関係に見える重要な現象が発見されていた。大都市では、小児麻疹が一定の周期で発生していたのだ。都市間を比較すると、その周期は2-3年から6-7年と様々であり、それぞれの都市に特有の周期がある事が分かった。

2022-04-03 20:32:03
influenzer @influenzer3

小さな都市では周期は長く、人工密度が高く出生率の高い都市では周期が短い事が多かった。イギリスの死亡率データや、19世紀初頭の国際20都市麻疹周期データの比較など、当時の最新データでもこの現象を説明することはできなかった。

2022-04-03 20:32:04
influenzer @influenzer3

1876年以降になって、微生物学、免疫学、疫学という新しく生まれた科学がこの謎を解き明かし始めたのだ。

2022-04-03 20:32:04
influenzer @influenzer3

・麻疹や他の小児が罹患する感染症は、感染規模を減少あるいは予防するのに十分な長期的防御免疫を誘導する。その効果は、免疫を持たない感受性小児の累積数が、次の新しい感染症の波をもたらすのに十分な数に到達するまで続くのだ。

2022-04-03 20:32:04
influenzer @influenzer3

この現象に関する最初の観察研究の一つが、1904年から1907年に起こったイギリスの小学校での麻疹アウトブレイクの報告だった。クラスでの麻疹流行は免疫を持つ小児が70%以下になると発生し、85%以上になると収束へ向かう傾向があった。

2022-04-03 20:32:05
influenzer @influenzer3

つまり、感染性疾患伝播の測定可能な「法則(rules)」は、集団レベルの免疫状態と関連していたのだ。

2022-04-03 20:32:05
influenzer @influenzer3

・この「法則」には当初名前がなかった。「集団免疫」や「集団免疫閾値」という用語は、第一次世界大戦中に米国の獣医学研究者が使いだすようになってからである。

2022-04-03 20:32:06
influenzer @influenzer3

この用語はすぐに、動物実験を用いて集団免疫を研究していたイギリスの統計学者や疫学者に採用され、ヒトにおける疾患制御を規定する変数ではないかと期待された。しかし研究が進むにつれ、その期待はすぐに打ち砕かれた。

2022-04-03 20:32:06
influenzer @influenzer3

集団免疫閾値は、疾患や宿主の違い、感染伝播様式(呼吸器系 or 腸管系)、免疫の持続期間や強度、人口密度や人流、免疫を持たない小集団(宗教団体や反ワクチングループ)の存在などにより大きく異なっていたのである。

2022-04-03 20:32:06
influenzer @influenzer3

・これらの変数は複雑な相互作用を持っており、特定の状況が集団免疫閾値を決定するが、それは主要変数の小さな変化によりしばしば大きく変動するものだった。例えば、数学的研究では、人口密度のわずかな変化が集団免疫閾値に大きな影響を及ぼしていた。

2022-04-03 20:32:07
influenzer @influenzer3

集団免疫理論は一般的概念としては有用に見えたが、リアルワールドにおいては機能しなかったのだ(inadequate)。

2022-04-03 20:32:07
influenzer @influenzer3

・過去70年以上に渡り、感染性疾患の制御や、地域的排除あるいは根絶の試みの中で、集団免疫の概念が繰り返し疑問視されてきた。

2022-04-03 20:32:08
influenzer @influenzer3

例えば、インフルエンザではワクチン接種や自然感染後の免疫の持続性が不十分であり、くわえて、ウイルスの抗原性が持続的に変異したり(antigenic drifting)、時にパンデミックを起こす大きな抗原変異(antigenic shifting)を起こすため、強い集団免疫効果を達成出来ていない。 (続く)

2022-04-03 20:32:08
influenzer @influenzer3

(続き) ・少数のワクチン未接種者の存在は、多くの表現型(抗原性)の安定した病原体であっても、完全な集団免疫達成を困難なものにしている。

2022-04-03 20:36:23