「STAND BY ME ドラえもん」と原作マンガのしずかちゃんの泣き方の比較から考察する女性像の違い

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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「STAND BY ME ドラえもん2」が発表された。 2014年に公開され、興行収入83億円の大ヒットとなった、映画ドラえもんシリーズ初のフルCG作品「STAND BY ME ドラえもん」の続編である。 #ドラえもん #映画レビュー pic.twitter.com/V60c9RfbPV

2019-12-13 02:31:40
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私は普段作品レビューをする際、批判的なものはなるべく書くまいと思っている。 しかし、この「STAND BY ME ドラえもん」に対しては、一つだけどうしても言いたいことがあるのでこのレビューを書くことにした。

2019-12-13 02:31:40
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私は原作ドラえもんのファンだが、この映画でどうしても許せないシーンが一つある。 それはてんとう虫コミックス34巻「しずちゃんさようなら」に該当する部分である。 pic.twitter.com/qmXXowImKl

2019-12-13 02:31:42
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回では、のび太が身勝手で見当違いな心配から「しずちゃんと絶好する」と言い出し、人に嫌われる「虫スカン」という薬をドラえもんに出してもらい、飲む。 しかし大量摂取しすぎて誰も近寄らなくなってしまうが、のび太が自死するのではと勘違いしたしずちゃんだけが、助けにきてくれる。 pic.twitter.com/X99LJ6gm3q

2019-12-13 02:31:44
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「SBM」のほうでは、虫スカンの臭気に耐えてのび太の元に向かうシーンがじっくり描かれ、感動的な音楽が流れる。 pic.twitter.com/vszh8FXGI5

2019-12-13 02:31:46
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして、トイレでのび太に虫スカンを戻させたあと、原作通り怒りだす。台詞も原作とほぼ同じだ。 しかし一つ違う箇所がある。「しずちゃんの泣き方」である。

2019-12-13 02:31:46
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

原作では「のび太を叱るところ」で涙している。一方SBMでは言い終わった後に「のび太さんのバカ…バカ…!」と言って泣き出してしまう。 pic.twitter.com/6VJn9k5HpF

2019-12-13 02:31:47
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここまで書けば私が何に怒っているか、もうお分かりいただけたと思う。 しかし念のため、わからないという方のために説明したい。 問題は「源静香という女性の人格の在り方」なのである。 pic.twitter.com/9C9KgBnTGE

2019-12-13 02:31:48
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

初期はともかくとして、藤子F先生がしずちゃんを、聖女のような理想の女性として描いていたのは明らかである。 感受性豊かで優しく聡明な女性。それが「源静香」というキャラクターだ。 私も昔から理想の女性像として挙げさせてもらっている。 pic.twitter.com/bNNu4kxPuu

2019-12-13 02:31:49
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「しずちゃんさようなら」は、そんなしずかのエピソードのなかでも屈指の名回である。他にもしずかの懐の深さを描くエピソードはあるが、この回で更にしずかの造型が深みを増したと言ってもいい。 pic.twitter.com/bLFNVOkUqG

2019-12-13 02:31:51
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回の終盤しずかは「友人として本気で心配している」 12Pと短い回だが、登場人物は意外に多い。しずかの他にはのび太、ドラえもん、先生、ジャイアンスネ夫、出来杉、ママが出てくる。 出来杉とママはドラえもんの通常プロットにおいて必須キャラではない。なぜこんなに登場キャラが多いのか?

2019-12-13 02:31:51
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

それは「しずかだけがのび太の異変に気付き、見捨てなかった」ということを強調するためである。 話の発端部に「のび太の将来の嫁」ということが挿入されているのもポイントだ。 pic.twitter.com/fch0d17IH0

2019-12-13 02:31:52
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

つまりこの回では、のび太の異変に気付かない周囲や、ドラえもんや親でさえ見捨てるという描写と対比し、「のび太としずかだけの特別な繋がり」が描かれているのである。 pic.twitter.com/cD3qIXXXMw

2019-12-13 02:31:54
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しずかは嫌悪感に耐えながらのび太の元に辿り着き介抱する。そして心底ほっとし、のび太の軽口で我に帰り、怒り出す。 「あたりまえでしょ!!お友だちだもの!!」 のび太の珍しい表情にも注目したい。 pic.twitter.com/8AnPayQhHL

2019-12-13 02:31:55
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「あなた弱虫よ!!先生にしかられたくらいで……。」 ここで泣き出す。しかし、涙を浮かべつつも身振り手振りと「……。」から、叱咤が続いたことがわかる。 「泣きながら叱り続けた」のである。 ここでは「泣く」のは本分ではない。「叱る」ことだ。 では、なぜここで「しずかが泣く」のか? pic.twitter.com/c2j97e2DGQ

2019-12-13 02:31:56
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しずかは優しいキャラクターで、のび太のことを怒ったりすることはほとんどない(エッチな悪戯をされた場合は別) 周囲が虐めてもしずかだけは肩を持ってくれたりもする。 しかし、ここで怒らなければ本当にのび太が人生を諦めてしまうのではと思い、心を鬼にして叱り、慣れない行いで泣いてしまうのだ。

2019-12-13 02:31:57
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

遠まわしな言い方や遠慮をするのではなく「弱虫」という、のび太の最もダメな部分をあえて指摘している。優等生のしずかが「先生にしかられる」ということを軽視もしている。 それほどまでに、のび太の身を第一に考え、本気で案じているということだ。

2019-12-13 02:31:57
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回ではしずかの本当の優しさと芯の強さが描かれている。この回で最も重要なのは「このコマ」なのである。 「STAND BY ME」はどうか。 この映画の該当シーンでは、虫スカンの臭気に耐えるシーンで感動BGMが流されている。これが個人的には「全く違う」 そもそもこのシーンはそんなに重要ではない。 pic.twitter.com/8bC0yuWoyF

2019-12-13 02:31:58
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

このシーンの主眼は「しずか」である。しずか以外に芝居しているキャラクターは居ない。 原作では、しずかは自分の行為を鼻にかけたりしていないし、この時点では純粋に心配だから行っている行為である。 ここで英雄的なBGMを流すということはしずかの行為に何か尊大なものを付与させたいのである pic.twitter.com/scCAOOMvjC

2019-12-13 02:32:01
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回が感動的なのは、「周囲との対比」と「しずかの混じり気のない、純粋一途な行動」があるからだ。 ここでわざわざ『しずちゃん頑張ってますぅ~!!』みたいな音楽を流すのは野暮以外の何物でもない。 しずかは自分を立派に見てもらいたいからこういう行動を取ったのか?否である。

2019-12-13 02:32:02
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして最も許せないのがここの泣き出すタイミング。 まずそこまでの「言い方」が軽すぎる。原作のマジに心配してのトーンとは似ても似つかない軽い調子だ。 そして「バカ…バカ…!」といってのび太の胸で泣く。 オイオイ・・・そりゃないだろ。 pic.twitter.com/EX1MZ2gO8k

2019-12-13 02:32:03
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここで「女の涙」は卑怯である。男は女の涙に弱い。こうされると何も反論出来ない。 それを、こういう切迫した状況でやる女。 私にはこの神経が理解出来ない。本気で相手を心配して、二度とこういうことをするなと諭さなければならない場面で、相手が反論出来ないような「泣き落とし」をするだろうか?

2019-12-13 02:32:03
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここに、F先生が描いた源静香の精神の高潔さはカケラも居合わせていない。ただの身勝手なあざとい女が居るだけである。 私はこのシーンを劇場で見て心底怒りに震えた。いやこの映画のダメなところはそれだけじゃないので、ここまでにもだいぶ怒っていたが。

2019-12-13 02:32:03
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回は「未来を危惧する見当違いのロマンチストなのび太を、現在の関係を大事にしているリアリストのしずかが修正する話」である。 だから、将来の夫婦関係を持ち出したのび太と対比的に「お友達だもの」としずかが言う。 のび太の「予定」ではなく、読者はしずかの行為に「将来への希望」を見出す。

2019-12-13 02:32:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして「嫌われるのは今度にする」=未来のことじゃなく今を大事にする、とのび太が学習するのである。 映画版では「しずかちゃんに怒られちゃったよぉテヘヘw」と言うだけである。 この男、全くわかっていない。 pic.twitter.com/5WZUuf7g6b

2019-12-13 02:32:05
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