ギガベース日誌 ACT09「REMEMBERED DEATH」01

0
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

地中海深海棲艦拠点・アビス。 最深情報領域・統合制御室にて。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:02:23
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

サイセターが横須賀鎮守府海域から撤退し、既に1時間が経過していた。 キャロルを通じて横須賀の状況を得たORCAの長たる戦艦水鬼は、一隻の駆逐艦を、文字通り鬼の如き表情で見下ろしていた。 「言葉を違えるなよ、アイザック」 「……」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:06:38
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

見下されている吹雪型駆逐艦のネームシップ吹雪は、財団ことアイザックが外部とのやり取りの為に使用している端末、謂わば分身(アバター)に過ぎず、その小さな船体にアイザック本人の自我が宿されているわけではない。 それでも戦艦水鬼は、明確な敵意を表情を以て突きつけていた。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:09:12
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「貴様の返答によっては、我々は今後一切財団との協力関係を断ち、敵対組織と認定する。キャロルとメルツェルも、この処分に同意している」 「厳しいねえ。僕の話を聞く前から」 「……それだけの事をしたという、自覚すら無いのか」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:13:12
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

戦艦水鬼の背後の機械構造体が蠢き、有機的脈動によって巨大なモニターを形成する。 仄暗い統合制御室を青白く病んだ光が照らし、駆逐艦吹雪の顔で嘲るアイザックの表情を際立たせた。 「横須賀における戦闘が、我々やアスピナの想定を超えた状況となっていた事は認めよう」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:17:09
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「しかし、万が一にDfJと不知火の排除が失敗した場合にも、ギガベース鎮守府二番艦の撃沈は決定事項だった。そのために、我々からは棲姫級個体3隻を派遣。キャロルを介しては、ローゼンタールとBFFの部隊を差し向けるに至った」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:20:33
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「しかし、ギガベースの撃沈には至らなかった」 横須賀における戦闘のタイムラインを表示していたモニターが切り替わり、とあるネクストの戦闘記録を映し出す。 「貴様がインターネサインから解放、派遣した、ストレイド……リプレイ・L・カーチスによって」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:23:10
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

映像の中の黒きネクストは、鬼神の如き挙動でBFFの艦隊を切り刻み、爆炎の華を咲かせ続けている。 「貴様に問う。何故、奴を解放した」 「何故って……状況を見ればわかるだろう?サイセターに沈んで欲しくなかったからさ」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:25:44
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「質問の仕方を変えよう。貴様は何故、ORCA全体の意向として決定された目的に反し、それを妨害した。そして何故、妨害の為に選択した手段が、よりにもよって彼の解放であったのか」 戦艦水鬼は、吹雪に、アイザックに詰め寄る。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:28:37
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

人型の船体部分だけで5mを越える威容に急接近されて尚、財団はその他者を舐め腐った笑顔の面を一切崩さない。 「わかったわかった。女王様にそう凄まれちゃ黙ってもいられない。話すよ。そうだね……わかりやすく言うと、気が変わった」 「……」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:31:31
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「僕がサイセターの撃沈に賛成していたのは、DfJという"個"が、サウードの計画で消滅する可能性が高いだろうと踏んでいたからだ。でも、アスピナが事前に組み立てていたプランや、大淀を通じて得ていた一番艦轟沈直前までのDfJの状態を見ていて、直前で気が変わった」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:34:08
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「僕は確信した。アスピナは失敗し、DfJはDfJという自我を真に勝ち取るだろうと。ま、直前と言っても本当に直前、彼等がゾディアックと接触したあたりだけどね」 「……それが何故、ギガベースを支援する行動に繋がる」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:37:11
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「"価値"があるからさ。幾度の死線を超え、厳選され、より純度の高い例外となったあの艦隊には、他のあらゆる力では代え難い価値がある」 「価値、だと?」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:41:07
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

戦艦水鬼は自らが存在を開始してから今に至る全ての記録、彼女が持つ記憶を走査し、財団が同じ言葉で以てその心中を語った場面を参照していた。 それは、彼女と財団が邂逅して間もない頃まで遡る。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:43:00
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

BFF本社艦クイーンズランス。 リンクス戦争の最中に撃沈されたBFF上層部の居城は、護衛にあたっていた多数の艦娘、通常艦と共に海底へと叩きつけられ、戦艦水鬼は底に膿のように溜まった深層情報から産まれた。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:45:13
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

正確には、観測上最初に自我を得た『離島棲鬼』がその最期に放った、同胞達の目覚めを喚起する声によって。 多くの艦娘の残骸を基盤とした事で、船体は巨大化。 処理能力はそれに伴って増大し、明瞭な自意識を得るに相応しき地盤は出来上がっていた。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:47:31
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

彼女が得た思いは唯一つ。 アイアンボトムサウンドの最深部に存在する深層情報処理施設、インターネサインの管理下から脱すること。 力こそあれど策を持たなかった彼女に、初めて接触した深海棲艦以外の存在が、他ならぬ財団だった。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:49:48
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「誕生おめでとう、女王様。いや、女王様の亡骸から産まれた遺子って所かな?」 不快だった。だが、すぐに手を取った。 全く理解できぬことだったが、財団は、棲姫級個体の中でも上位に位置する自分ですら干渉できない、インターネサインの中枢へのアクセス権限を有していた。 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:52:40
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「僕の計画には君が必要だ。そして、君の願いにも、僕が必要だ。君の首輪を外してあげられるのは、僕だけなんだから」 「お前の、計画?」 「否定だよ。僕は、例外を否定する。そのために、僕の正しさを証明する」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:55:18
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「どう、やって」 「候補を見つけなければいけない。最も恐るべき例外(イレギュラー)を。そして破壊する。それだけじゃない。例外を人為的に産み出し、管理しようとする企業も、インターネサインも、その成果物も、全てを破壊し、破滅させる」 #ギガベース日誌

2022-05-06 01:57:38
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「君には手伝って欲しいんだ。僕が否定するに相応しい価値を持った例外。その選定と否定の為には───」 #ギガベース日誌

2022-05-06 02:00:19
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「何もかもを、滅茶苦茶にしなければいけない……」 記憶の中でアイザックが続けた言葉を、戦艦水鬼は無意識に、その冷たい唇から溢していた。 「なんだ、忘れていなかったのかい」 「私がお前との……いや、深海棲艦が、観測した記録を失うわけが無いだろう!それより……」 #ギガベース日誌

2022-05-06 02:02:14
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「お前の齎すものは……既存の体制の破壊に留まるものではないと?企業に抗う……我々を含む全ての、飽くなき戦いの世界と、破滅だとでも?」 戦艦水鬼は、至ってしまった。財団の真意に。 それまで、財団が自分に語った言葉を、あくまでも都合良く解釈していた。 #ギガベース日誌

2022-05-06 02:13:22
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「だとしたら?」 戦艦水鬼は、返す言葉を失った。 膝をつく彼女に、吹雪は、アイザックは、嘲りを保ったまま近づいた。 「この短い間に、随分と色んなことが変わったね。君は一介の棲姫級個体から、史上最大の反企業勢力を纏め上げる女王だ」 #ギガベース日誌

2022-05-06 02:19:08
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「でも、僕は何一つ変わっていない。僕が僕として在る時からずっと、全てを破壊して、例外を否定するために生きている。背負うものや護るものが増えたのは、君だけなんだよ。クイーンズランス」 #ギガベース日誌

2022-05-06 02:22:36
1 ・・ 8 次へ