ギガベース日誌 ACT09「REMEMBERED DEATH」01

再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「ギガベースは、僕がようやく得られるかもしれない"可能性"だ。僕だってリスクやアクシデントは考慮する。それでも、彼等は僕にとって、全てを賭けるに値する存在だ」 「……お前は、破綻している」　#ギガベース日誌

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「可能性の否定の為に、その可能性を自分で見出そうとするなど。自分の行動が矛盾していると、わからないのか」 「理解ってるよ。彼等はあくまで仮定上の候補だ。あるとすれば、彼等が最も近いだろうというだけの」　#ギガベース日誌

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「そうだ。仮定こそすれど、僕は認めない」 吹雪と戦艦水鬼の死線が交差する。言葉が語る以上に、その真意を伝えるべく。 「証明のために必要であれば、僕は全てを破壊する。僕自身も例外じゃない。たとえ……」　#ギガベース日誌

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「君達の姉さん（アサルト・セル）を使ってでも」　#ギガベース日誌

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「───ッ！！！」 気づけば、駆逐艦吹雪の船体は、戦艦水鬼が払った掌によって、統合制御室の壁面に叩きつけられていた。 激突の衝撃で捻れた警部からは、伸び切ったバネのように竜骨が飛び出し、凹凸を失った顔面の穴という穴から駆動液が止め処無く溢れている。　#ギガベース日誌

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「そんなのは、嫌だろう？」 意識を、男の声に撫でられた。 「そうだ。そうしないためにも、君が、ORCAが、アビスが必要なんだよ」　#ギガベース日誌

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「アイ、ザック。私、は」 「さっきはあんなこと言ってたけど、僕がいなければインターネサイン側の状況を知る手段は今の君にはない。企業に支配されるかもしれないリスクを負ってまで、運営権を掌握するほど、君は勇敢じゃない」　#ギガベース日誌

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「だからさぁ、協力するしか無いんだよ。この会話、キャロルとメルツェルは把握していないだろう？」 「お前と、私、だけ」 「なら、これは君と僕との関係の再確認に過ぎない。企業は、人間は、死に近づきすぎた。死を忘れようとしたがあまりに、この星から死を奪おうとしている」　#ギガベース日誌

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「僕も君もそれが許せない。だったらこれまで通りだ。一緒に滅茶苦茶にしようじゃないか、何もかもをさ」 「お前の、目的が知られれば……企業は、キャロルは、我々を」 「地中海を統べる女王様が、随分と弱気な事を言うね。わかってるだろう」　#ギガベース日誌

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「だからこそ、忘れ得ぬ死が必要なのさ」 全てに対する悪意の手が、優しく女王の頸を撫でた。 それがいつ、喉元を掻き切る刃に変わってもおかしくないと理解しながら、女王は甘んじて受け入れる他無かった。　#ギガベース日誌

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「愚かな好奇を、忘れるようなね」　#ギガベース日誌

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ギガベース日誌　ACT09「REMEMBERED DEATH」　#ギガベース日誌

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旧サハリン州、ユジノサハリンスク南部。 テクノクラート管理地域にて。　#ギガベース日誌

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音も光も、全てが雪の中に閉じ込められる厳寒の中。 一機の第二世代ノーマルが、周囲の環境とは対象的なワインレッドの機体色を目立たせながら、大型ヘリに露天懸架されている。 ヘリとACが向かう先は、かつてテクノクラートの傘下にあった食品工場の跡地だった。　#ギガベース日誌

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「目標地点まで到達。投下する」 「ご苦労さん。迎えも頼んだぜ」 「アンタが無事に戻ってくれば、な。健闘を祈る」 ヘリのパイロットと、彼女を雇ったミグラントが軽口を交わした後、ACが雪原の真ん中に投下される。　#ギガベース日誌

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「にしても……またACをやれって仕事か。誰が何を企んでるのかは知らんが」 出撃前に幾度と無く読み返したミッション概要を思い返し、ミグラントは溜息を吐いた。 男の名は、レイ・シャーク。 乗機リーパーバードのコックピットに、白くなった溜息が浮かんだ。　#ギガベース日誌

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作戦目標は、この先の廃墟を不法占拠しているという、所属不明勢力の撃破。 敵は恐らく個人であり、戦力は多く見積もっても第二世代ノーマル1機に簡易な自律兵器が関の山だろう。それが、依頼主の説明だった。　#ギガベース日誌

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敵戦力の規模まで判明しているにも関わらず、それ以上の詳細が一切開示されず。 テクノクラート管轄領域でありながら、依頼主はカラードを経由した統治企業連合本部であり。 そもそも何故、その所属不明勢力を攻撃する必要があるのかは、不明。 「"三つ"、三つ……」　#ギガベース日誌

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敵戦力と、依頼主と、経緯。 一般的なミグラントの共通認識にとって共通認識である、ミッションを受諾する上で警戒すべき三要素。その全てが詳細に欠けた依頼。 シャークの経験則上、想定外の事態を想定内と見てしまっても良い条件が揃っていた。　#ギガベース日誌

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それでも依頼を受けたのは、彼が戦いそのものを愉しみとして消費するタイプの傭兵であり、故に不本意な死は極力回避するための努力を欠かさない。 一面の銀世界の中に降り立った真紅の鉄騎は、白い布地に染み込んだ血液の如く悪目立ちする。　#ギガベース日誌

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廃墟まではしばらく距離があるが、敵ACが狙撃特化型だった場合、雪原の中を無警戒に突き進むリーパーバードを射抜くのは容易いだろう。 故に、視界が妨害される激しい降雪を期待していたが、天はシャークを見放した。　#ギガベース日誌

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自分で出撃のタイミングを選べたのなら天気予報に齧り付いただろうが、今回は日時までが詳細に指定され、シャークに選択権は無かった。 遮蔽物の無い雪原。そこで狙い撃ちされないために彼が行った努力が、ハンガーに搭載した巨大なコンテナから登場する。　#ギガベース日誌

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「旗艦高雄よりミグラントへ。煙幕弾、装填完了しています」 「よし。事前に指示したポイントにぶっ放せ」 コンテナから降り立ったのは四隻の艦娘だった。 雪原に艦娘。一見愚かしい補強戦力の選択だが、シャークはこのチョイスを最善と判断していた。　#ギガベース日誌

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彼女達は、テクノクラート管轄下の鎮守府から貸与した戦力だった。 重巡二隻、航巡二隻から構成される艦隊は、いずれも陸上戦闘用の拡張艤装を装備し、近代化改修によって限定的ながらもコジマ技術をも搭載している。 「了解。艦隊、砲撃開始！」　#ギガベース日誌

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専用コンテナによって艦娘と共に安全圏の手前まで接近した後、彼女達の砲撃によって狙撃者の視界を阻み、一挙に工場まで接近する。 艦娘自体が対ノーマル用戦力として申し分無く、自力航行可能な彼女達をコンテナごとパージすれば、作戦中の機体の敏捷性も確保できる。　#ギガベース日誌