茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2814回「メタバースに「蘭奢待」は香るか」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2814回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。

2022-05-29 04:04:31
茂木健一郎 @kenichiromogi

昨日、おそらく一生に一度と思われる貴重な経験をした。 メタバースに「蘭奢待」は香るか youtube.com/watch?v=PhH-sH… 改めて、志野流香道の蜂谷宗玄宗匠、蜂谷宗苾若宗匠、みなさま、ありがとうございました。

2022-05-29 04:05:27
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茂木健一郎 @kenichiromogi

メタバースに関する議論が盛んだが、視覚、聴覚については良いとして、嗅覚、味覚、触覚については難しいところがあると思う。特に嗅覚については、その神経学的メカニズムや物質的基盤が解明されていないので、とりわけ難しい。

2022-05-29 04:06:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

もちろん、原理的には、ある匂い物質によって生まれる神経活動をなんらかの方法で刺激して再現すればいいのではないか、とも考えられる。しかし、そのことの意味が実はそう簡単ではないと思う。

2022-05-29 04:08:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

たとえば日本文化の中で唯一無二の名香である「蘭奢待」の香りはなにか、それをメタバースで再現しようとしても、その同一性を担保しているものがなにかはわからない。「これ」が「蘭奢待」の香りであるという指し示しを保証しているものはなにか。

2022-05-29 04:09:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

「蘭奢待」の成分が解明されて、すべて再現されたとしても(それ自体難しいチャレンジだと思うが)、それによって引き起こされる神経活動を直接再現するというメタバースのアプローチは、何を意味するのかは明確ではない。個人差や統計的なばらつきもあるからだ。

2022-05-29 04:10:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

「蘭奢待」の香りで引き起こされる神経活動に実際には個人差があったとしても、「蘭奢待」という物質的同一性によって担保されている。そのような構造がメタバースでは明確ではない。強いて言えばデジタルデータの同一性が担保するということになるが、そのアプローチにどのような意味があるか。

2022-05-29 04:12:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

メタバースで経験が再現されるというのは、神経学的にはトリビアルな原理的考察で、それ以上でもそれ以下でもないし、視聴覚以外のモダリティでそれをやろうとすると同一性の罠がある。ぼくはメタバースには実際的以上の原理的深みはないと思う。

2022-05-29 04:13:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2814回「メタバースに「蘭奢待」は香るか」をテーマに7つのツイートをお届けしました。

2022-05-29 04:14:06