松尾豪氏の「現在の電力需給逼迫の一因は電力自由化にあり」のまとめ

松尾豪氏の「現在の電力需給逼迫の一因は電力自由化にあり」のまとめ
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松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

現在の需給逼迫の一因は、電力自由化にもあります。「そうではない」と仰っている方もいらっしゃいますが、明らかに間違いです。 ・自由化前の制度であった、「地域独占かつ総括原価方式」は、数年に一回の猛暑・寒波によって消費電力が急増した場合でも対応できるよう、供給力を余分に確保して、

2022-06-23 10:19:46
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

その費用を電気料金で回収する仕組みで、国民・お客さまに「電気が使えない」事態を招かない制度となっていました。いわば、「国民皆保険制度」です。 ・2016年に始まった電力全面自由化の背景にあるのは、「需要の価格弾力性」を市場メカニズムによって引き出し、余分な供給力を削減する考え方です。

2022-06-23 10:19:46
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

いわば、「無保険自由診療」です。 ・もう少し分かりやすく。先日アベプラに出演した際に、ひろゆきさんからご指摘をいただきました通り、「電気が足らないなら滅茶苦茶電気代を上げれば、消費者は電気の使用を節約する」「電気が余っているなら電気代をタダにすれば、消費者は電気をたくさん

2022-06-23 10:19:46
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

使う。」といった考え方(これを需要の価格弾力性と呼びます)で、電力の需給バランスに合わせて、消費者が電気の使用を柔軟に調整することで、需給バランスを一致させ、余分な発電所を廃止、電気料金を下げるといった思想です。 ・昨今再生可能エネルギーの導入が進んでおりますけれども、

2022-06-23 10:19:47
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

太陽光発電・風力発電は皆さんの生活に合わせて発電してくれません。将来的には需要の価格弾力性の確保は大変重要になります。 ・ただ、皆さん身の回りでよく考えていただきたいのですが…電気はいつでも便利に使えることが大事ですよね。急に、「明日電気が足らないので、洗濯しないでください、

2022-06-23 10:19:47
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

スマホの充電をしないでください」と言われたら、困りませんか?一足飛びに消費者一人一人の意識を変えていくことは大変難しいのです。 ・先日来、私が非難している松村敏弘氏は「(電力会社が)安直に火力を畳むから」と繰り返し仰っています。残念ながら電力自由化は、需要の価格弾力性の確保による

2022-06-23 10:19:48
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

余剰電源の廃止、それによる電気料金の低下を狙っているものなのですから、自由化の考え方と矛盾されたことを仰っています。我々は、この矛盾と松村氏の責任を追及する必要があります。松村氏および政府は、社会が、需要の価格弾力性をそう簡単に確保できないことを認識せず、早急な移行を

2022-06-23 10:19:49
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

目指してしまった。このような批判は避けられないと考えます。 ・英国では、需要の価格弾力性については「Smart Systems and Flexbility Plan」というレポートが出ておりますけれども、エアコンや電気自動車、電気給湯器の自動制御による「スマートでシステム的に需要の価格弾力性を引き出す」点が

2022-06-23 10:19:49
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

ポイントになっています。日本のように、政策の失敗を節電ポイントや精神論でお茶を濁しているわけではありません。 ・需要の価格弾力性を相当に目指した米国・テキサス州では、2021年2月の猛烈な寒波による電力危機にて、16,000ドル(約218万円)の電気料金の請求が来てしまった家庭も

2022-06-23 10:19:49
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

ありました。bbc.com/japanese/56150… 需要の価格弾力性が限界を迎えると、言い換えると、節電が限界を迎えると、全面停電を避けるために計画停電を実施せざるを得ません。この過程で1名が凍死し(Cristian Pinedaさん)、1名が人工呼吸器が停電で使えず亡くなり、また間接的には数百名が暖房として

2022-06-23 10:19:50
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

使ったストーブや自動車の一酸化炭素中毒で亡くなりました。 ・繰り返しですが、需要の価格弾力性は本来精神論で運用して良いものではありません。今も皆さまがお気づきになられていますけれども、新電力は平時は電気料金が安いですけれども、非常時には電気料金が2倍、3倍になっているケースも

2022-06-23 10:19:50
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

あります。無保険自由診療の方は、普段保険料を払ってしませんが、一回病気になると大変高額の医療費を支払う必要があります。これは日本社会に会う考え方なのでしょうか? ※なお、そうなっていない新電力・電力会社もいらっしゃいます。そのような新電力・電力会社は、民間保険に加入している

2022-06-23 10:19:51
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

イメージです。皆さまが電気を使われても、対応できるよう、発電所を自社で保有して燃料をしっかり確保するか、相対契約等で発電所を確保しています。 ・では、本来はどうすれば良かったのか。本来は電気の取引に市場メカニズムを導入して、需要の価格弾力性を促し、その実効性が確保できていることを

2022-06-23 10:19:51
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

見極めた上で、発電所の合理化につながる制度を導入せねばならなかった。 ・電力取引市場では、限界費用(火力電源では、燃料費に相当)で取引されますので、稼働率が低い発電所や燃料費が高い発電所は固定費が回収できません。これら回収できない費用をミッシングマネーと呼びます。

2022-06-23 10:19:52
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

・このミッシングマネーを電気料金で回収し、発電所に受け渡すことで発電所を維持させる、疑似的な国民皆保険制度(しかしながら、独占かつ総括原価時代よりは、"保険のカバー率"が低め)が容量市場という制度です。 ・本来は、自由化と同時に容量市場の導入が必要でした。しかしながら、初回の

2022-06-23 10:19:52
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

受け渡しは2024年。残念ながら、初回受渡より前に発電所の廃止が進み、皆さまの節電に頼らざるを得ない状況となっています。 ・残念ながら、今年日本には発電所が足りません。皆さまの節電に頼らざるを得ません。ただ、現在全国で400万kW近くの火力発電所が建設中で、今年後半から来年にかけて順次運転

2022-06-23 10:19:53
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

開始予定です。今冬を乗り切ってしまうと、需給は緩和すると考えられますが、一方で発電所の合理化は止まりません。2025年の容量市場落札価格は非常に低値となり、"保険のカバー率"が見通せない状況となっているためです。 ・電力業界内では需給逼迫について、火力発電所の建設が進んでいることから、

2022-06-23 10:19:53
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

短期的な問題と捉える向きと、発電所の合理化は止まらないので長期化(10年という説も)するという向きがあります。 ・いずれにせよ、安定供給は崩壊してしまいました。日本のエネルギー安定供給・安全保障を国民一人一人が考えるタイミングにさしかかっているのではないでしょうか。(了)

2022-06-23 10:19:53
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

補記:需給逼迫の一因である電力自由化の影響について説明したところではありますが、再エネ導入拡大の影響など、別の要因はこの場で説明しきれておりません。 あくまで、今次需給逼迫の背景の一面をお示ししたと捉えていただけますと幸いです。

2022-06-23 11:18:12
松尾 豪 Go Matsuo @gomatsuo

更に補記:「需要の価格弾力性」の使い方が間違っている、という指摘を経済学者の方から受けました。あまり使い慣れてない言葉は使っちゃいけないですね。 言い換えるなら、「市場価格に対応した需要柔軟性」ですかな。

2022-06-23 22:13:52