無邪気な中高年の教育コスト
4月の話
少し考え込んでしまった。 性を道具にするしたたかな女性の人物造型は「古い」。たしかに。ただ、そういうキャラと利他的な人物を対比させる手法も、それ自体として相当「古い」ものなのでは・・・? よみがえるヒロインたち−オースティンと『イカゲーム』のヒロインたち akishobo.com/akichi/ogawa/v1
2022-04-02 11:45:49竹村和子さんの”ポスト”フェミニズム(ケアフェミニズム含む)と「家庭の天使」を同じと捉えられていますが、それは誤解です。第二波フェミニズム→ポストフェミニズム→”ポスト”フェミニズムの複雑な議論があるので、単に「腹黒キャラ」と「利他的な人物」の対立軸を論じたかったのではないのですが… twitter.com/TakashiKawash1…
2022-04-02 20:53:08第二波フェミニズム的な自立型と”ポスト”フェミニズム的女性の対立軸の説明が不足していたので誤解があったとしたら申し訳ないです。それは自覚しているので次回『ハンガーゲーム』とケアフェミニズムを論じて『説得』のアンが「家庭の天使」のイデオロギーを体現しているのではないと論じる予定です。
2022-04-02 20:56:00@ogawa_kimiyo ぶしつけなコメントに丁寧なお返事をありがとうございます。 ”ポスト”フェミニズムの文脈で浮上するケアの倫理と19世紀的な「家庭の天使」理想は同じではないという点、重要ですね。先のコメントは、あくまで今回の記事を読んだ範囲での感想です。
2022-04-02 22:21:05@ogawa_kimiyo 今回の記事を読むかぎり、その違いがどこにあるかがやや見えづらく、過去の文学と現代のコンテンツに描かれる「利他的な人物」の連続性がもっぱら取り出されているという印象がありました。 (まだ連載の第1回ですし、今後その違いに焦点を合わせるご予定だったなら、気の早すぎるコメントでした。)
2022-04-02 22:21:47とんでもありません。今後連載を書いていく上でも”ポスト”フェミニズムと「家庭の天使」の違いは強調しなければ誤解されうるのだと気づかされました。貴重なコメントに感謝しております。またSNSでの川島先生のご対応はケアに溢れていて、とても感激しております。今後ともよろしくお願いいたします。 twitter.com/TakashiKawash1…
2022-04-02 23:14:51@ogawa_kimiyo こちらこそ、寛大に受け止めていただいて、ありがとうございました。私はTwitter初心者なので、どのように呟くと喧嘩にならないか、いまだ試行錯誤中といった具合です。今後ともよろしくお願いいたします。
2022-04-02 23:35:42…
たとえば18世紀ヨーロッパでは、啓蒙前期の段階では知性的な女性が肯定的に描かれたのに対し、世紀後半の感傷主義の文脈では、「したたかで頭がいい≒腹黒い女性vs.おしとやかで利他的な女性」という対立構図が描かれがちだった。 (cf. ボーヴェンシェン『イメージとしての女性』などなど)
2022-04-02 11:47:20英仏に比べてフェミニズムの展開が弱かったドイツ語圏では、女性がケア系の労働に従事することを大前提に、条件つきで社会進出を認める考えが根強くなる(「母性主義フェミニズム」)。 そのためドイツ文学では、自立した個としての女性を肯定的に描きづらく、利他的なケア型のヒロインが量産された。
2022-04-02 11:47:47英文学では、自立型のヒロインが相対的に多めなのかもしれない。だが、社会規範的にはやはりケア型の女性像(「家庭の天使」)を求める風潮が支配的で、そこに楔を打ち込む形で『高慢と偏見』のエリザベスのような自立の要素を含むヒロインが散発的に生み出されていたと捉える方が実態に近い気がする。
2022-04-02 11:48:19大変興味深いです。ドイツ語圏文学は専門外なので、ぜひまた比較してみたいです。19世紀のイギリスにも自立型のヒロインとケア系の女性が多様に描かれています。ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』のドロシアや『フロス河の水車場』のマギー、それにアン・ブロンテが描くヒロインもケア系ですね。 twitter.com/TakashiKawash1…
2022-04-02 21:06:18@ogawa_kimiyo 作中で一人の人物が両方の要素を備えていることも多いですね。たとえばジェイン・エアなんかも、声高に自立を叫ぶヒロインの極北みたいな位置づけなわりに、他人の子どもを養育する係になったり、最終的にロチェスターの介護役に収まったりと、自立の要素とケアの要素のはざまで常に揺れていますし。
2022-04-02 22:23:27@ogawa_kimiyo 私の専門はヨハンナ・シュピーリですが、彼女の場合、ドイツ語圏ならではの「家庭の天使」イデオロギーの圧の強さゆえか、自立の要素とケアの要素のあいだの揺れないし分裂は、さらに露骨で残酷な形を取っています。 (その一方、ケアの要素が男性側に振り分けられていたりと、面白い点もありますが)
2022-04-02 22:25:44シュピーリの『アルプスの少女ハイジ』は以前からケアの側面から注目しています(すみません、それ以外は読んでいません)。父親が医師でヨハンナも自宅兼診療所に出入りして入院患者の近くにいたことを考えると、自立型への志向とケアすることの価値で葛藤があったのかもしれないと思ったりしました。 twitter.com/TakashiKawash1…
2022-04-02 23:00:47@ogawa_kimiyo シュピーリは、結婚して家庭に入り、母親になった結果、鬱になったという人でもあります。 『ハイジ』以外の作品は、どこの国でももはや研究者にしかアクセスされなくなっていますが・・・。長編『ジーナ』(1884)は、女性の大学教育というテーマを扱ったヨーロッパ初の少女小説だと言われています。
2022-04-02 23:29:00@ogawa_kimiyo 『ジーナ』は、自立とケアのあいだの分裂があまりにひどいので、小説としては正直ちょっと破綻している観もありますが(私は10年以上前に一度全訳しているのですが、いまだに本にして出してくれるという出版社は見つかっていません)、そこから『ハイジ』を読み直すと、色々と発見があって面白いです。
2022-04-02 23:32:44シュピーリの葛藤が鬱をもたらしたことは、やはり結婚、出産、育児などをめぐる抑圧の問題に深く関係していそうですね。チョ・ナムジュの 『82年生まれ、キム・ジヨン』を思い出しました。『ジーナ』が手に入ったら、ぜひ読んでみたいと思います。貴重な知見を共有くださり、ありがとうございます。 twitter.com/TakashiKawash1…
2022-04-02 23:50:28@ogawa_kimiyo 『ジーナ』原書はやや入手困難かもしれません。ヒゲ文字の初版本は電子版が公開されていますが。 e-rara.ch/sikjm/content/… 拙訳でよろしければ、データでお送りします(関心ある方にはどなたにもお渡ししていますので)。
2022-04-03 04:23:41@ogawa_kimiyo しばらくぶりに取り出したら、また手を入れたい箇所がいくつか出てきましたので、少々お待ちください。(出版するあてのない訳というものは、こうして永遠に手を入れ続けるはめになります)
2022-04-03 14:36:41@TakashiKawash10 ありがとうございます🙇♀️ 『ジーナ』を訳されたものを拝読させていただけるのを楽しみにしております!
2022-04-03 23:25:09@ogawa_kimiyo 先ほどリンクをお送りしました。お暇があるときご笑覧いただければ幸いです。 いきなりネタバレするなら、『ジーナ』は医師を志して大学で学ぼうとした女性が夢を諦め、最終的に医師と結婚するまでの物語です。 その展開だけ見れば、保守的作家シュピーリの反フェミニズム的な主張が表に出ています。
2022-04-06 03:31:13