互恵的利他行動の理論 [感謝という名の負債、罪悪感の大小、”憤慨”という感情の意義]

感謝とはすなわち借用証書であり、自分の負債額の記録なのである。 罪悪感の大小は、悪事が周りに知られているかどうかに左右される。 憤慨という感情は、攻撃のためではなく、他社の罪を公にし集団的制裁を課すために生ずる。
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ エレガントな理論の証といえば、長年解決できなかった複雑きわまるデータをいかに手際よく解釈することができるか、という点だ。1966年に行われたある実験の結果、高価な機械を壊してしまったという自覚が強い被験者ほど、つらい実験に志願する傾向がみられた(Wallace and Sadalla 1966)。”

2019-11-13 13:20:07
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ ただし、これは機械が壊れていることを第三者が気づいている時に限られる。かりに理想主義者たちが考えるように、罪悪感とは人がモラルから踏みはずさないようにはたらく感情であるとすれば、悪事が発覚してもしなくても、その強さに変わりはないはずではないか。” pic.twitter.com/hfg0NM7VBH

2019-11-13 13:22:00
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ さらに、群淘汰の理論を信奉する人々は、罪悪感とは集団にプラスの結果をもたらす償いをしろとうながすものだ、と信じている。それが本当なら、罪悪感の強さに差があるのはおかしいのではないか。”

2019-11-13 13:23:51
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ もしもトリヴァースの主張どおり、罪悪感が単にまわりの者にちゃんとお返しをして不満をとりのぞけとうながすものであるならば、その強さは罪の重さではなく、誰がそれを知っているか、あるいはじきに誰に知れてしまうか、という点に大きく左右されるはずだ。” pic.twitter.com/Iz0mjWaRBs

2019-11-13 13:26:24
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ この論理は、都市生活にもぴたりとあてはまる。ホームレスのそばを通りすぎるとき、手をさしのべてやらない自分に対して私たちは居心地の悪さを感じる。とりわけその感じが強くなるのは、他人と視線が合いながらも援助をしてやらない場合だ。”

2019-11-13 13:27:07
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“ 私たちは、施しをしなかったことよりも施しをしないところを見られる方をずっと気にする(さらに、二度と会わない人にどう思われるのかを気に病むのはなぜなのだろう。おそらく、人類の祖先の環境ではおなじ人間と必ずまた出会っていたにちがいない)。”

2019-11-13 13:27:40
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“「集団の利益」の論理の誤りは証明されたが、「集団の利益」という概念までが否定されたわけではない。じつは、互恵的利他行動は一対一という状況を想定して分析される場合が多い。現実でも一対一で実践される場合が圧倒的だ。”

2019-11-13 13:31:14
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ いっぽう、犠牲的行為はそれよりも複雑な過程を時間をかけてたどりながら進化してきたのだろう。そして、集団への義務感もそこから生まれてきたのだろう。” pic.twitter.com/wJXn2elCaX

2019-11-13 13:31:18
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“ たとえば「仲間を形成する」遺伝子…があるとしよう。その遺伝子によって、ある者は数人のまとまりを一つのチームとして考えるようになる。すると、仲間うちでは二人以上の相手に利他的行動をとるようになり、結果的には仲間に対する犠牲的行為が多くなる。”

2019-11-13 13:32:59
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“ 仲間の策略に加わって危険をおかすからには、将来的に彼らの一人一人からお返しをしてもらうのを(意識的あるいは無意識的に)期待するだろう。ただしそこで期待されているのは、直接自分に返してもらうのではなく、自分がそうしたように「集団」のために彼らが犠牲を払うというかたちだ。” pic.twitter.com/WmoyDOCPC4

2019-11-13 13:36:05
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ 他のメンバーにも同じことが言える。この期待にこたえられないメンバーは、おそかれ早かれ仲間から除外される。”

2019-11-13 13:36:06
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ 仲間どうしの連帯意識は、一対一で実践される利他的行動よりも遺伝子レベルの構造が複雑なので、なかなか難しく感じられるかもしれない。しかし、一対一での相互の利他的行動が定着すれば、進化が次のステップにすすむのはさほど困難ではないはずだ。” pic.twitter.com/qfbSZ7Whsu

2019-11-13 13:37:57
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ さらに、そこからもうすこし大きな集団への忠誠心が培われるのも、それほどむずかしくはないだろう。じっさいに狩猟採集社会では、小集団のなかでうまくゆけば、ダーウィン理論のとおり、それが刺激となってさらに大きな集団のなかでそれが行われるようになるだろう。すると、競争力もつくはずだ。” pic.twitter.com/s8TTAm3K1m

2019-11-13 13:40:35
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ 突然変異でそのような行動を広めてゆく遺伝子が現われれば、きっと繁栄してゆくことになるだろう。”

2019-11-13 13:42:13
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“ ダーウィンはかなり大きな部族集団を単位として、群淘汰の理論からモラル観の誕生を考えた。いまここで述べている道すじ〔=利己的遺伝子論〕からは、それと同じくらいの規模の集団内に通用する忠誠心と犠牲的行為ができあがるまでの仕組みを解き明かすことができる。”

2019-11-13 13:42:16
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ しかも、こちらのシナリオは群淘汰のシナリオよりもすっきりしている。ようするに、きちんとお返しをしない人間に対しては、誰も犠牲的行為をしない、ということだ。”

2019-11-13 13:43:49
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ じつは、一対一の基本的な相互利他行動のパターンさえ実践していれば、いかにも集団の利益を考えて行動を取っているようにみせかけることができる。言葉をもつ私たちヒトという種が、善良な人に報い、よこしまな心の持ち主を罰しようとすれば、情報を流してしまうのが手っ取り早いやりかただ。” pic.twitter.com/6sAEz4yjEy

2019-11-13 13:49:40
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ ある人物が自分をだましたという事実が広まれば、報復を果たしたことになる。それを聞いた人々は、だまされるのを恐れてその人物には利他的行動をとらなくなるだろう。”

2019-11-13 13:52:27
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ なぜ「憤慨」という感覚が進化してきたのか、これでわかるはずだ。それは不当な扱いを受けているという気持ちとともに、その気持ちを公然と表現したいという衝動である。” pic.twitter.com/rMZlui997N

2019-11-13 13:52:42
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“「報復的な攻撃をしかける原動力として「道義的な怒り」をあげたトリヴァースの目はなかなか鋭かった、というわけだ。マーティン=デイリーとマーゴ=ウィルソンが述べているとおり、単なる攻撃がゴールであるのならばモラル的に許せないという怒りの感覚は不要だ。純然たる敵意だけで充分なはずだ。”

2019-11-13 13:56:39
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ モラルの次元が高くなるにつれて不満がはっきりと表明されるようになったのは、おそらく人間が、影響力のある発言をする第三者がいる環境で進化してきたためだろう。” pic.twitter.com/2XMCRzJdu1

2019-11-13 13:56:41
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ なぜ第三者の意見が影響力を持っていたのかは、また別の問題である。デイリーとウィルソンの指摘どおり、第三者は「社会契約」(あるいは、少なくとも「仲間うちの契約」)の一部として「集団内の制裁」をおしつけてくるかもしれない。”

2019-11-13 13:56:42
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“ あるいは、すでに述べたように第三者は、反則をおかした者をじぶんの利益からも遠ざけてしまうかもしれない。これで事実上、社会的制裁が加えられたことになる。その両方が実行される場合もあるだろう。”

2019-11-13 13:57:31
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ いずれにしても、不満を表明すれば幅広い層からの反応があり、結果として集団的制裁の効果がある。これはモラルのシステムのなかでもひじょうに重要な部分だ。”

2019-11-13 14:00:11
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

“ デイリーとウィルソンは「モラルというのは、たいへん高度な認識力にめぐまれた動物が、これまた大変語に複雑な社会集団のなかで自分の利益を追求するための手段なのである」という見解を示したが、これには進化心理学者もまず異論はないだろう。” pic.twitter.com/UK218FdgUH

2019-11-13 14:00:14
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