互恵的利他行動の理論 [感謝という名の負債、罪悪感の大小、”憤慨”という感情の意義]
“ 〔進化心理学の〕互恵的利他行動の理論は、決して耳に快くひびくものではない。自分では高尚な精神に基づいて善行を施していると信じていたのに、それがじつは遺伝子の巧妙な策略だったと聞けば、だれでもあまりおもしろくはないだろう。無駄とわかっていながらも、やはり反発してしまうだろう。” pic.twitter.com/C5wYn2GOUe
2019-11-13 12:18:54“ しかし、反発を覚えるにはそれなりの根拠があるのではないだろうか。同情や好意的な態度の底には利己的な遺伝子のはたらきがある、という事実を知って絶望感を覚える人がじっさいにいるのだとすれば、その絶望にもなんらかの意味があるのではないだろうか。” pic.twitter.com/WRugU5i231
2019-11-13 12:20:49“ なぜなら、互恵的利他行動の巧みな仕組みを知れば知るほど、遺伝子というものがどれほど抜け目のないものであるかもわかってくるからだ。”
2019-11-13 12:22:06“ ここでもう一度、同情という感情について考えてみよう。ある人間が陥った窮状がひどければひどいほど、強く同情してしまうのはいったいなぜなのか。ほんの少しだけ空腹を感じている人間よりも、飢餓状態にある人物にたいして、より強くあわれみを感じてしまうのはなぜなのだろうか? ” pic.twitter.com/KD31Pmb7sp
2019-11-13 12:29:37“ 人間は偉大なる精神の持ち主で、わが身を犠牲にしても相手の苦痛を軽くしようと力を尽くすのだろうか? はたして、どうなのだろう。”
2019-11-13 12:30:10“ トリヴァースはこの問題について、次のように説明している。彼はまず、なぜ人はひどい苦しみから救い出されるほど、強い感謝の念を示すのか、という疑問を提起した。荒野で飲まず食わずの状態で三日過ごしたあとに口にしたサンドイッチは、まさに生死を分けるものだ。” pic.twitter.com/W8UuMouwqc
2019-11-13 12:33:54“ そんなサンドイッチをくれた相手に、ただふつうに夕飯をごちそうしてくれる相手よりもずっと強く感謝するのはなぜなのか?───この問いに対してトリヴァースが出した答えは、拍子抜けするほど簡潔で、しかも納得のいくものである。”
2019-11-13 12:35:05“ つまり、感謝には自分が受けた恩恵の価値がそのまま反映されている、というのだ。それはそっくり、自分が今後返すべき返礼の額に換算される。感謝とはすなわち借用証書であり、自分の負債額の記録なのである。”
2019-11-13 12:35:35“ 恩恵をほどこす側の行動も、このように考えれば明快そのものだ。受益者の窮状が絶望的であるほど、借用証書に記載される額は大きくなる。”
2019-11-13 12:40:29“ 誰にどのていど手を差しのベたらよいのかを敏感に察知する感性は、じつは頼りがいのある投資のアドバイザーなのだ。それは一見、心からの同情に見えても、本当のところは安く買い叩こうとしているだけ、とも言えるのだ。” pic.twitter.com/z4U3o0jyOW
2019-11-13 12:40:38“ 救命センターの医師が死の瀬戸際にある患者に対して平常の五倍の時給を請求すれば、非情な搾取者だと非難され、軽蔑のまなざしを向けられるにちがいない。「思いやりのかけらもないのか?」と、まわりはつめよるだろう。”
2019-11-13 12:43:06“ しかし、その医師がトリヴァースの研究に目を通してこんなふうに答えればどうなるだろう。「とんでもない。私は思いやりに満ちた人間だ。だから自分が感じる思いやりの深さをそのまま忠実に金額にあらわしているだけだ」。これでは、私たちの道義的な怒りも行き場がなくなってしまうかもしれない。”
2019-11-13 12:43:11“ さて、道義的な怒り(義憤)である。これもまた同情とおなじく、互恵的利他行動という観点から考えると意外な素顔がのぞく。こちらを利用しようとたくらむ相手から身を守るのは重要なことである、とトリヴァースは述べている。” pic.twitter.com/C2ZSOAKRVA
2019-11-13 12:47:25“ 毎回二つの選択肢から一つを選ぶというアクセルロッドの単純なコンピュータの世界でも、「しっぺ返し(Tit For Tat)」戦略を悪用しようとする者は確実に罰せられた。”
2019-11-13 12:47:25“ 現実の世界では、友情を利用して相当な負債をためこんだあげく、ふみたおしや泥棒同然の行いが横行している。そんな状況ではなおさら他人を利用するような行為は断固として思い留まらせなくてはならない。だから、私たちは道義的な怒りを覚え、不当な扱いには敏感になり、犯罪者は罰せられるのだ。” pic.twitter.com/HBIjH6goNG
2019-11-13 12:51:17“ 正しいおこないは報いられるという確信、つまり人間の本性の一部として生まれつきそなわっている正義感は、進化の副産物なのである。つまり、これもまた遺伝子の戦略だったのだ。” pic.twitter.com/S9DV6f8PkM
2019-11-13 12:52:35“ それにしても、正義感はなぜこうも激しい怒りとなって現れるのだろう。まだはっきり相手が罪をおかしたと決まってもいない段階から強く反発したり、時には命をかけて抗議をしたりする。なぜ遺伝子は私たちを唆して「名誉」などという漠然としたもののために、死の危険すらおかそうとさせるのか?”
2019-11-13 12:53:40“ トリヴァースはこのように説明している。「ささいな不平等でも一生のあいだに何回もくりかえされれば、ツケは膨大なものとなる」ので、「少しでも裏切りの徴候を感じとれば、強い非難を示す」のはもっともなことである。”
2019-11-13 12:54:44“ トリヴァース以後に明らかになったのは、義憤が公然の場で示されたときには、いっそうの価値が出てくるという点である。名誉を守りとおしたという評判がたつのなら、隣人が自分を欺こうとする気配を見とがめて、それを阻止するために一対一の激しい殴り合いをしても、じゅうぶんな見返りがある。” pic.twitter.com/I56fq9JdV0
2019-11-13 12:58:23“ 狩猟採集社会では、すべての行動が筒抜けだ。噂話(ゴシップ)はあっという間に広まり、殴り合いにはおあつらえむきに見物人があつまってくる。現代的な産業化社会でも、知り合い同士の殺し合いには、たいてい第三者が居合わせている。”twitter.com/tabbata/status…
2019-11-13 13:04:40俺と、そんなにタイマンしたけりゃ HATASHIAI @HIUFightClub のリングで待ってるぜ! よわいてんちょう サンよぉ タバタ完勝、見えてるぜ すごいきんちょう するだろ? twitter.com/eraitencho/sta…
2019-11-09 19:37:08“ これは一見、理屈にあわない行動パターンに見えるかもしれない。なぜ、わざわざ目撃者の前で殺人を犯すのか?しかし、進化心理学の考え方では少しも不合理ではない。”
2019-11-13 13:06:55“ トリヴァースによれば、現実世界で行われる囚人のジレンマ・ゲームは、なんとも複雑でまわりくどい。ある目的のために発達した感情が、それ以外のことに対しても向けられてしまうためだ。”
2019-11-13 13:08:01“ 裏切り者が、自分の身にふりかかった疑いをはらすために、義憤を感じているふりを意識的あるいは無意識的にすることもある(「よくも私の信用を落としてくれたな!」などと言う)。”
2019-11-13 13:11:10“ また、罪悪感というのも、そもそもは未払いの負債をきちんと返しなさいとうながす単純な役割だけを負っていたはずなのに、第二の役割まで担うようになる。”
2019-11-13 13:11:11“ つまり、他者をだましたことがばれそうになった時に、先回りしてそれを告白させようとうながす〔=誠実性シグナリングになる〕役割である(じつは、つかまる可能性が高くなればなるほど、犯人の罪悪感は強くなる、という相関関係がある)。 pic.twitter.com/CTO1LXE806
2019-11-13 13:11:12