アイデンティティ・ポリティクスはいかにして「勝利」をおさめたか・・・権力を奪った側からふりかえる

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Osamu @orpheonesque

TRANS/gressive: How Transgender Activists Took on Gay Rights, Feminism, the Media & Congress… and Won! -- 「いかにトランスジェンダー活動家はゲイ権利運動、フェミニズム、メディア、そして議会を攻略し、そして勝ったか!」これ、陰謀論ではなく、奪取した側の物語。 amazon.com/dp/B072M31VH9/

2021-07-26 18:13:31
Osamu @orpheonesque

著者はクイア理論についての著作もある、トランスアクティヴィストの Riki Wilchins 。冒頭の章は、女性だけの音楽フェスティバルとして有名だったミシガンウーミン音楽祭をトランス排除としてどのように抗議し、中止に追い込んだかの成功体験の叙述から始まる。

2021-07-26 18:26:14
Osamu @orpheonesque

当然つぶされた側のナラティヴもあるので、つぶした側とつぶされた側の両方の話を読むとスリル満点。片方だけ読めばもちろん綺麗事。

2021-07-26 18:31:22
Osamu @orpheonesque

最後まで勝利の凱歌なので、そ—の語りにのっかって読めば思わず高揚感が伝染するが、ここで語られていないが、別の当事者が伝える裏側の——しばしば暴力を伴う——話を思うと背筋が凍る。

2021-07-26 18:40:12
Osamu @orpheonesque

これ、どの立場からでも一種の必読と思う。明確な戦略と、技術を持ってそれぞれの場を次々攻略していくのを、手に汗握る成功譚と読むか、スリラーのように読むか、立場によって違うだろうが、ともかくも見事。 twitter.com/orpheonesque/s…

2021-10-09 08:59:04
Osamu @orpheonesque

ミシガンの女性音楽フェスを潰したあたりからはじまり、デモの技法やメディア対策、ロビイイングを学びながら、タイトルにあるようにゲイ権利運動、フェミニズムや性に関係する他の運動体を次々攻略していく。

2021-10-09 09:00:37
Osamu @orpheonesque

今では、LGBTQ運動の総本山のようになっているHuman Rights Coucil が90年代前半には、ゲイ、レズビアンだけで、Tを入れることに敵対的だったところに、抗議運動や人脈を用い、政策に徐々にTを付け加えさせ、そして、活動家を意思決定の中に。Chap. 5.

2021-10-09 09:01:39
Osamu @orpheonesque

これの手法も極めて多様かつ系統的、前もって、"標的の人物に前もって抗議行動を通告しておくと実際に派手にやらなくても、相手が恐怖でパラノイアを募らせていくので効く"とも。As a nice side-benefit, telling the target of your protest in advance helps build their paranoia. (143)

2021-10-09 09:02:27
Osamu @orpheonesque

フェミニズムの米の総本山 National Organization for Women 全米女性協会に、トランス包摂をプログラムに加えさせていくときの戦略も見事だった。最初は人脈を用いたロビイイング。 Chap. 6.

2021-10-09 09:02:59
Osamu @orpheonesque

このときの交渉にあたっての心理的機微の洞察が面白い。Welchins は、フェミニストの女性たちの、女装する男たちへの蔑視を感じとる。Wilchins はSRS済のTSだが、そこで、意図的に男性カードを用いる。ミスジェンダリングと怒ることなく、わざと、男性的な声、男性的な格好で、力関係を戻していく。 pic.twitter.com/deKMCP9kCH

2021-10-09 09:09:43
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Osamu @orpheonesque

そして演説の機会が与えられ、勝負に出たときの、戦略の熟考。2つのアプローチ法について、検討する。ここからは、そのままの訳で。 「方法1は、寛容や受容と言った古き良きリベラルの価値観への熱意に溢れたアピールをリベラル派の罪の意識に結びつけるのに頼ることだった。→

2021-10-09 09:11:06
Osamu @orpheonesque

すなわち、”あなたがたは私を包摂しなければならい。それは道徳的行為だからだ。私たちはこんなにも嫌われている、そしてトランス女性は家父長制の同じ抑圧を受けている”と。」

2021-10-09 09:11:33
Osamu @orpheonesque

「方法1は、聴き手の善意と研ぎ澄まされた良心に依存しており、それはしばしば効くが、しかし楽しくはない。誰が罪悪感を楽しめるだろうか。私は、もっとビッチな気分でいたかった。ということで方法2を選ぼう。」

2021-10-09 09:11:54
Osamu @orpheonesque

「方法2は、きわめて非従順的かつ、この上なく倒錯的なポストモダン的議論を構築すること、それによって、トランス包摂の問題を生み、そもそもプレゼンのようなものを余儀なくしていたパラダイムを掘り崩すことだた。方法2のほうがもっと楽しい。」 「この議論が勝ちに有効だったかは分からない。→

2021-10-09 09:13:59
Osamu @orpheonesque

「しかし、私は彼女たちに、『ジェンダー・トラブル 』からそのままのJ. バトラーの8小節を歌い、4声のハーモニーをそこに組み込んだ —— 硬直したジェンダー体制は、す べ て の 女性、ゲイ、トランスジェンダーの人々、クロスドレッサーを、女々し少年を、レズビアンの女性を抑圧する…」

2021-10-09 09:15:00
Osamu @orpheonesque

これが功を奏してか、1997年に、この精神で、フェミニズムにとって、TS、TGの支援が重要だとの決議が、通過。(フェミニストのジェンダーイシューとTのジェンダーシューを合体させたこの決議が後々、この種のもののモデルになっていく) pic.twitter.com/OhJZU3L5DK

2021-10-09 09:16:10
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Osamu @orpheonesque

Wilchins はしかし、フェミニストたちの支援のは限定的と見て、BDSMのコミュニティ、フリーセックス擁護団体、そして DSD (当時はIntersexの名)の団体を巻き込んでいく…のようなことが Chap. 7 Feminists, Leatherqueens and Intersex Activists に。

2021-10-09 09:17:07
Osamu @orpheonesque

どまんなかの当事者の戦略の開示として、学ぶことがつきない。

2021-10-09 09:18:09
Osamu @orpheonesque

Wilchins は別の本では、こうしたアクティヴィズムに加え、勝利の要因のもう一つとして、90年代にアカデミア界をポストモダニズ、特にクィア理論によって制覇されたことを挙げている。上記のバトラーの利用やBDSM界への接近ははそこから。 Wilchins 2004 Queer Theory, Gender Theory

2021-10-09 09:29:26
Osamu @orpheonesque

"But in the 1990s, gender advocacy received an incredible infusion of energy from two sources: the unexpected rise of an energetic transgender rights movement, and the amazing conquest of academia by postmodernism, particularly queer theory. "

2021-10-09 09:30:17