ここ数日の「本格談義」に触発され、ミステリのおおまかな流れを備忘的ツイート

ここ数日の「本格談義」に触発され、今日までのおおまかな流れを備忘的におさらい。 印象でつぶやいてるので不正確ですが、当時の点と線をつないで空気感を出してみました。 以下注の説明です。 続きを読む
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じねん @jinensai

(00)とーとつですが、備忘的にミステリの流れを幕末・維新史風にツイート(しばしば敬称略)。事実確認というより流れをざっくり俯瞰(誤認も、ポロリもあるんだよ)。

2011-09-30 04:39:00
じねん @jinensai

(01)黒岩涙香らによる海外作品の抄訳・翻案から細々と流入して来たミステリを野心的かつ類型的に根付かせるべく乱歩他が啓蒙を試みるも、戦争で弾圧され中断(恐らくトラウマになったと思われる)。(続

2011-09-30 04:40:10
じねん @jinensai

(02)戦後横溝さんの覚醒などあるも海外翻訳の大波の前に劣勢を強いられる。コンプレックスが「あとむF氏事件」*1 にみるような屈折した愛情表現に顕現。「本格派」(残念ながら当時のレベルは低い)乱歩と「文芸派」(海外レベルを目指せ運動)木々高太郎の対立へ。(続

2011-09-30 04:41:09
じねん @jinensai

(03)俳句を余技から芸術に高めた芭蕉の如き逸材は出てこないものか(乱歩の一人の芭蕉論*2)という設問に答える形で清張(木々の引き)の登場。こぞって持ち上げるも「清張的」(清張ニ非ズ)ないわゆる「社会派」が経済成長期の落とす影として灰色な閉塞感をもたらす。(続

2011-09-30 04:42:09
じねん @jinensai

(04)同時に質はともかく量を自給できるような状況が現出し、読者的には「バターじゃなくてもマーガリンで十分」的なゆるい擬似鎖国状態で停頓する。翻訳ミステリ不要論まで論じられる。むろん作者側は納得がいかず様々に試行錯誤する。(続

2011-09-30 04:43:09
じねん @jinensai

(05)「本格」は危機に瀕して自己防衛的に翻訳物との地続きである安心感を欲し、クイーン、ヴァン・ダイン、クリスティー、カーらの持ち上げに注力(不思議な「尊氏なし」的「ブランド*3 なし」)。見事な「ねじれ現象」が成立する。(続

2011-09-30 04:43:56
じねん @jinensai

(06)一方、角川春樹による隠棲状態の横溝擁立がメデイア戦略とも相俟ってまさかの王政復古。文章以外から(刑事コロンボ等)の刺激も加わり、既存のしがらみに依拠しない第一次「新本格」が現れる。(続

2011-09-30 04:45:08
じねん @jinensai

(07)トラウマ抱えつつも本流のプライドを保つ「本格派」、質より量に傾いた「社会派」という構図でキャスティング・ボートを握れるはずだった第一次「新本格」は両派に再吸収されたり「トラベル」や「ホラー」に特化、はたまた他のジャンルへと迷走。(続

2011-09-30 04:46:02
じねん @jinensai

(08)一方出版社側でも、読者の「翻訳ミステリ不要論」に危機感を覚え、海外モノを次々文庫化したり未訳の作品を発掘して市場へ投入。かくてお手本だった海外ミステリは国内市場を争うライヴァルとして立ちはだかり、海外モノ専門の読者も形成されることとなる。(続

2011-09-30 04:47:09
じねん @jinensai

(09)そうした中「幻影城」では日本にだって良い作品はあるだろうとディスカバー・ジャパンを行い、古き良き作品の再録・再評価、また独自のカラーを持った才能の発掘を進め、局所的にディープな支持層を勝ち取る。(続

2011-09-30 04:47:47
じねん @jinensai

(10)こうした情勢の中「本格派」(「乱歩」支持)と「社会派」(「乱歩の理念=清張」を大義名分としながら別物へ)の二つの流れは理念はともかく国内を代表するナショナルチームとならざるを得なくなる。(続

2011-09-30 04:48:29
じねん @jinensai

(11)共同で質の向上に努めたものの、理念の異なる政党の「野合」のようなムリは否めず、そのストレスが伝わった読者の中には「なぜ、本格を本格として堂々と書かないのか」と落胆と渇望に苦しむ者も現れる。(続

2011-09-30 04:49:50
じねん @jinensai

(12)彼ら読者の収容先は「幻影城」だけでは不足であり、読書難民の中には「もう、自分が読みたい作品は自分で書くしかない」と思い詰める者も現れる。つまり「作者=読者」といういわゆる「新本格」の動きである。(続

2011-09-30 04:50:34
じねん @jinensai

(13)しかし作者と読者の乖離を埋める方法としては直接的にすぎた。元来モノ作りは武術的で「一人一派一流」の「個」の戦いであり、「作者=読者」という構図は相似しているものの、かつての「本格派」のサロン的一体感とは当然異なるものであった。(続

2011-09-30 04:51:13
じねん @jinensai

(14)初期の「新本格」に見られるガジェット重視は、サロン的共通認識を補うため分かりやすい記号や約束事を前面に押し立てる必要があったからであろう。これは一般読者の獲得には大いに寄与したが、感覚の合わない作者や読者から貶められる原因ともなった。(続

2011-09-30 04:52:06
じねん @jinensai

(15)そして現在…。ネットの発達により作者と読者の間に新たな関係が誕生しようとしている(いや、もう誕生しているな、こりゃ)。つまりサロン的でありながら「個」でもあり、意見交換も認識の確認も出来る空間が今ここにある!皆様大いに楽しみましょう。(了)

2011-09-30 04:52:39