「農学部に行きたくなる」必要なのに利用できない?よくわかる『リン循環』の話

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れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

リン循環の話をメモっておこう。 農学部や教養学部でならう基礎的な話だけど。 リンは自然界ではおおよそリン酸の形で存在してる。 リン酸は土壌のカルシウム、鉄、アルミニウム、マグネシウムなど化合すると水に溶けなくなる。 この「不溶性になりやすさ」がリンの循環の様子を決めてる。

2022-10-30 07:47:11
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

NYAFA勤務/お気持ち特派員/身の丈にあった猫耳モフモフアドバイザー(主任 / 猫からヒトを守る党・党首 / 6歳 / 一級マンションポエム士を目指して勉強中 / 毛玉フェロー / パロディです

rei.to

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土壌には上で書いたミネラルがたくさんある。 なので、糞や死骸などからリンを含んだ水が土壌に流れると、土壌のミネラルと結合して不溶になり、その場で土壌と一体化=吸収される。 なので、リンは川にはほとんど流れていかない。 リンはほぼその場にとどまり、動植物の栄養になる。

2022-10-30 07:57:04
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

ただ、リン酸塩はそのままだと水に不溶なので、植物が利用できない。 pH、酸化還元電位、微生物の働きなどで少しずつリン酸が出てくるので、植物はそれを利用してる。 カルシウムやマグネシウム塩だと利用しやすく、鉄やアルミ塩はなかなか利用しづらい。

2022-10-30 08:06:17
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海や湖などだと、不溶性の塩は沈んでいってしまう。 魚や微生物が食べたり運んだりして多少混ぜてはくれるが、最終的には海底に沈んでしまう。 なのでとくに海の真ん中なんかはリンが足りなくて植物が育たず、生物が少ない。

2022-10-30 08:09:08
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

沈んだ大量の不溶塩からは微生物とか熱とか化学反応で少しずつリン酸が溶けだしているので、海底を流れる海流はリン酸濃度が高い。 なので、大陸にぶつかって上昇したところ(湧昇流)が良い漁場になる。 ペルー沖とかカリフォルニア沖とかそういうところ。 これが多少リン酸を回してる。

2022-10-30 08:15:24
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

でもまぁ基本不溶なので、海に入ったら基本海底に積もってしまう。 陸にあるリンも、土壌にかなり蓄えられるし、流れは遅いけど、いつかは海に流れてしまって、海底にたまる。 海の魚を食べる鳥が運んだり、虫が運んだり、多少は陸に戻ったり標高が高い場所に移動したりはするが、ほんの少し。

2022-10-30 08:20:04
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リンの供給元がないと、地表からリンがなくなり、海からもなくなり、我々死に絶えちゃうんだけど、 実はリンは「岩」から供給されてる。 地殻中の元素の存在度がこちら。 リンは0.1%程度存在している。 ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0…

2022-10-30 08:28:02
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地表のその辺の堆積岩、火成岩の中などにもおおよそおなじくらい、0.1%程度リンが含まれている。 造山活動や噴火、隆起などで地上に岩がでると、 その岩の表面から少しずつリンが土壌に溶けだして、 そのリンを植物が回収して利用している。

2022-10-30 08:32:19
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

リンは岩の表面からしか溶けない。 雨が山を削り、岩を削って新しい表面が出たときに、少しずつ溶けだす。 溶け出しても不溶性の塩を作るので、すぐに流れてはいかない。 動植物の間で循環しつつゆっくり下っていく。 海にたどり着き、そこでも循環し。 最後に海底にたどり着く。

2022-10-30 08:36:23
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

海底にたどり着いたリンは押しつぶされ、岩になり。 いつかプレート運動で隆起して山になるまで、そこで蓄積される。

2022-10-30 08:38:01
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植物の三大栄養素は窒素、リン、カリ。 たまたまなんだけど、これらの循環の違いが「物質の三態」に関連づいてるのはとても面白い。 窒素は最後は窒素ガスになって大気に。 カリウムは基本水溶性なので、海に。 そしてリンは不溶性の塩になって、岩に。

2022-10-30 08:41:23
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

岩になるので、循環するのに千万年のスケールがかかったりする。 なので、リンの循環はちょっとわかりづらいかもしれない。

2022-10-30 08:43:52
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

話が戻って。 リン酸はすぐに不溶性になっちゃうので、施肥しても、不溶性のリン酸になってしまって土の一部になっちゃう問題がある。

2022-10-30 08:48:29
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

本来は「収穫した植物の中に含まれるリン酸の量」と同じ量のリン酸を供給すればいいんだが、 土が吸収しちゃうので、たくさんリンを供給しないと植物が育たない。 何年もたくさんリンを与えると、土がリンでいっぱいになって植物が育つ。 「土を育てる」っていうのはこういうのがある。

2022-10-30 08:52:24
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

この吸収の割合は土の種類で違っていて、火山由来の酸性土だったりすると吸収量が多くて、なかなか植物が育つ土にならない。 北海道なんかは大変だったらしい。

2022-10-30 08:53:46
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

逆に。土に含まれる不溶性のリン酸をうまく水溶性に変えられれば、施肥は少しで済むことになる。 これが実は「水田」。

2022-10-30 08:56:25
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

水を張って低酸素状態で微生物が働くと、土が還元雰囲気になって、リン酸鉄やリン酸アルミからリン酸が溶けてくる。 これをイネが利用する。 痩せた土地でも水田にすればイネが育つのはこれ。 痩せた土地ってのは「栄養がない」土地ではなく、実は「栄養が閉じ込められてる」だけ。

2022-10-30 08:59:50
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

まぁ当然、土に入ってる量に限界はある。 どのくらいかというと。 その辺の土には0.1~0.2%程度のリン酸が入っている。 1m^2の土地を考えると、イネが使える土の深さが20cmくらいとして、土は500kg。リン酸は約1kgはいってる計算になる。

2022-10-30 09:38:30
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

玄米は0.3%くらいリンを含んでいる。 リン酸換算だと0.9%。 なので、1m^2の土地のリン酸で最大玄米300kgとれる。理論上は。 現代農法だと1m^2で玄米500gくらいなので、実に600年分。

2022-10-30 09:38:31
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

実際には、水田にしても全部のリン酸を取り出せるわけではなく、だんだん出てこなくなる。 なので伝統農法だと十数年に一度土を入れ替えたり、洪水で土が入れ替わるのを利用していた。

2022-10-30 09:44:54
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

まぁそんなわけで。 リンってのは植物に必須な栄養素ではあって、植物は常にリンに飢えているんだが、それはリンがないんじゃなくて、実はその辺にたくさんあるんだが、全部「利用できない」状態になっているから。 ってイメージを持っておいてほしい。

2022-10-30 09:52:57
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

石の中に大量にあるのに出てこない。 ほんの少し染み出したリンを我々生物は頑張って利用してきた。 リン鉱石からリンを取り出して大量に施肥しても、ほとんどのリンは利用できない状態=石に還ってしまう。

2022-10-30 09:56:02
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

リン鉱石は限られているのに、たくさん施肥すればするほど、リンは土に吸収されちゃうので、最近はできるだけ利用する分だけ施肥する方向に変わってきてる。 たとえばこれ naro.go.jp/project/result…

2022-10-30 09:58:38
れい(猫耳の専門家)🍥 @rei_software

まぁメモはこんなとこかな 面白い話もオチもない。 世界最初の人工肥料はリン酸肥料の「過リン酸石灰」で、リービッヒ冷却器を発明したリービッヒさんが作ったとか 「ナイルの賜物」でしられるエジプト、実は水田と同じように水をため、リン酸を作ってたとか そういった豆知識はまたいつか。

2022-10-30 10:36:41