conspiracy theory のピットフォール

内田樹 @levinassien

甲野先生のところに「茂木とウチダをなんとかしろ」という筋違いのご注文をした人がいるそうです（甲野先生、ご迷惑をかけてしまってすみません）。conspiracy theory の扱いがむずかしいのは「部分的に妥当する」からです。でも「あれもこれも」そうなわけではありません。

内田樹 @levinassien

例えば、「ユダヤ人の世界的ネットワーク」はたしかに存在します。でも、それは僕たちが想像するような「結社」的なものでも「評議会」的なものでもありません。それを適切に指示する概念も語彙も非ユダヤ人は持っていない。「陰謀」はもっとも遠い語のひとつです。

内田樹 @levinassien

conspiracy theory の最大のピットフォールは「自分の中にある欲望や邪悪さ」を尺度にして「他者の欲望や邪悪さ」を類推することです。あたかもconspiracy があるかのように見える事態は存在します。でもそれは属人的な悪意や貪欲では説明し切れないのです。

内田樹 @levinassien

僕は反ユダヤ主義の研究を１５年間してきたので、近代ヨーロッパで書かれた「陰謀史観」書籍の類をずいぶん読みました（BNまで行って読んだですよ）。そして、得たとりあえずの結論は「陰謀史観論者たちは総じて善意の人であるけれど、適切な推論をすることが苦手である」ということでした。

内田樹 @levinassien

あたかも陰謀があり、manipulator が存在するかのように事態が見えるのは「なぜか？」というふうに議論の次数を上げることの方が「陰謀がある」「ない」という議論よりもより生産的であるというのが僕の考えですけれど、理解してくださる方はあまりいないですね。