#霜降月物語

♯霜降月物語
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RMP @spacetimefoam0

キミは少し驚いたんだと思う。反応に間があり、返事に逡巡したのだろう。でもキミもわかっているみたいだった。私も直接会って話してみたいです。僕の気持ちが伝わってしまった事に後悔はなかった。と同時に少なからずキミにまだ拒絶されていない事を知り、安堵した。良かった。#霜降月物語 26

2022-11-06 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

誰でもわかるような駅の改札で、スーツ姿の僕はキミと食事をする約束をして時間を待つ。キミは落ち着いた雰囲気で近づく。待ち合わせとは言っても初めて会うのになぜだろう、お互いにすぐに眼が合い、お互いに会釈をした。声のとおりだった。声が醸しだす、想像通りの美しい人だった。#霜降月物語 27

2022-11-06 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

君の名は、の如く、君の名前を聴き、僕の名前を伝え、お互いの信頼感は増した。配信の話しにおよび、声のとおり素敵な人である事を伝える。君のハニカミは魅力的だった。まっすぐに自分を信じて努力している人のハニカミだった。人と食事をするのが楽しい事だったと思い出した。#霜降月物語 28

2022-11-06 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

駅まで二人で歩き、11月の冷たくなった空気でやや上気した頬の熱を下げる。歩くたびに揺れる耳元のイヤリングが夜の街の光を反射して僕を惹きつける。名残惜しさを隠しつつ、別れ際にまたお会いできますか?と投げかける。君は微笑みながら、優しく、是非。と答えた。夢のようだった。#霜降月物語 29

2022-11-06 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

遠くに帰る僕は帰りの電車の中で君の配信を聴く。君は何もなかったみたいにいつも通りに配信していた。本当のところはわからないけれど、それがどこかで二人の秘密みたいな気がして嬉しかった。誰も知らない二人だけの時間を共有した事に心が踊る気がした。もう、戻れなくなる。#霜降月物語 30

2022-11-06 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

時間を置きたくなかった。恋とはそういうものなのかもしれない。久しく感じていなかったその煩わしい高まりに抗うことなく従うしかなかった。好きだという気持ちに素直にならざるを得なかった。どうしたら、もう一度会うことができるのだろう。配信の君の声を聴きながら考えていた。#霜降月物語 31

2022-11-07 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

この想いをそのまま伝える方法はあるのだろうかと自問自答する。もうすぐ冬が訪れてしまう今、もしかなうなら、紅葉を見に行けるだろうか?君が海よりも山が好きだと言っていた記憶を頼りに、話しかけた。今年は紅葉狩りはされましたか?いえ、今年は行ったりはしてないですね。#霜降月物語 32

2022-11-07 07:00:02
RMP @spacetimefoam0

順当な返事にむしろ間が空く。鼓動が聞こえてしまいそうな無音をかき消すように話す。もし今度の週末にお時間があったら行きませんか?電車だと場所が限られるので僕が車で迎えに行きます。ドライブしながら湖畔の喫茶店にも行きましょう?美味しいパンが食べられるみたいです。#霜降月物語 33

2022-11-07 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

畳みかけるように誘う僕の緊張に気づき、君はふふっと笑う。はい。楽しそうですね。行きましょう。まるで天使のようなその返事に僕は癒される。何が起こっているかは後で考えよう。今はただ君の気が変わらぬうちに予定を満たそう。その日が楽しくなるようにできる限りの想いを込めて。#霜降月物語 34

2022-11-07 17:00:02
RMP @spacetimefoam0

助手席に乗る君は車が運転できたら楽しいですね。と話しかけてくる。何もかもが予想もつかないスピードで展開していく。高速を降りて山間に入る頃には燃えるような紅色が目に飛び込んでくる。うわぁ。思わず出た声を聞いて君はまた静かに笑う。綺麗ですよね。見にこれてよかった。#霜降月物語 35

2022-11-07 22:00:03
RMP @spacetimefoam0

紅葉に彩られた風景の中で、君と向き合って珈琲を飲む。珈琲、お好きなんですね。少し何かをたどるような視線を流しながら、君も珈琲を口にする。今日はありがとうございます。私、少し気分が下がってたところがあったんです。でもこうして連れ出せてもらって元気になれそうです。#霜降月物語 36

2022-11-08 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

あの、・・・。喉の奥まで出かかっているその言葉をどうやって伝えたらいいのか。君の笑顔を見れば見るほど言い出しづらくなっていく。自分の中に眠る自己肯定感の低さに呪われる。あんなに大胆にドライブに誘っておいて、目の前にいる君に気持ちをさらすのを怖れてしまう。#霜降月物語 37

2022-11-08 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

イタリア語の勉強してるんです。不意に伝えられた情報に思わず黙って見つめてしまう。私がイタリア語、習うのは変ですか?あ、いや、そうじゃないんです。変な風に思われるかもしれないですけど、イタリア語くらい、話せるのかなって根拠なく思ってました。なんとなくなんですけどね。#霜降月物語 38

2022-11-08 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

でも、なぜイタリア語なのか?と疑問に思っても聞けなかった。ふっくらと焼きあがったパンを食べ終わる頃にぱらぱらと雨が降り出した。帰りは寒くなりそうですね。静かに迫る冬の気配の中で僕と君は言葉にならないゆっくりとした時間を過ごし、この時間が永遠ではないことを感じる。#霜降月物語 39

2022-11-08 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

帰りの車の中でどうして配信を始めたんですか?と聞かれ、そのどうしてを聞き返す。私はきっかけが欲しかったんです。一人でいる自分を励まそうとしたかったのかなって。配信することで認められるって。誰かに聞いてほしいではなくて、誰かに聞いてもらえるのを確認したかったのかな。#霜降月物語 40

2022-11-08 22:00:01
RMP @spacetimefoam0

僕でよければちゃんと聞きます。じゃなくてちゃんと聞いてます。配信、素敵です。君は少し目を大きくして、ありがとう。嬉しい。と素直に言葉にする。僕はごまかしながら話した自分をやや悔いて、でも目の前の君の穏やかな心持ちをかき乱したくなくて、また黙ってしまうしかなかった。#霜降月物語 41

2022-11-09 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

君を送って一人、高速を走る。自分の至らなさよりも君と過ごせた事実に高揚する。秋の終わりに向かっていくこの季節は新しい何かを始めさせてくれるのかもしれない。人の感情を暗に遠ざけてきた僕が君の透き通るような佇まいに魅せられて、君との未来を夢に見ようとしている。#霜降月物語 42

2022-11-09 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

配信はいつも通りにしている、つもりだった。常連と呼ぶべき友達が聞きに来て告げる。何かいいことがあった?わかりやすい声なのだろうか、ドギマギしながら、いつも通りです、とコメントする。いつも通りってなんだろうねって自問自答しながら、目の前の文章に集中しようと思った。#霜降月物語 43

2022-11-09 12:00:00
RMP @spacetimefoam0

配信前後で連絡をとる。文字の時もあれば、声の時もある。話しているだけで幸せだった。気持ちをちゃんと言葉にしていないくせにこのままでもいいのかなって思ってしまった自分もいた。会った時の輪郭は声を通して伝わるし、知らない瞬間をみせられても容易に想像がつく気がした。#霜降月物語 44

2022-11-09 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

いつもお話聞いてくれてありがとう。本当に優しいです。不意に言われたその感謝を思わず否定してしまった。いや、ごめん、優しいわけじゃないんだ。優しいわけじゃなくて、君の話を聞いていると僕が落ち着くし、癒されるんだ。優しくしたいのとは違ってさ、僕は君のこと、好きなんだ。#霜降月物語 45

2022-11-09 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

言ってしまった後に沈黙となる。思わず、が思わぬ、に変わり、思うな、に落ち着く。深い溜息をつきそうになったその瞬間、私も好きです。ありがとう、です。配信で答えてるのとは違う自分だけに向けられた言葉。この場を取り繕うためかもしれないが、僕は心の中でその言葉を繰り返す。#霜降月物語 46

2022-11-10 02:00:00
RMP @spacetimefoam0

嬉しい、ので、調子にのります。逢いに行ってよければ、今すぐに逢いたい。⁈、え、あのー、ダメです。まず休んでください。ぐっすり眠って朝起きて、その時にも逢いたいって思ってくれるなら、仕事が終わってから会いにきてください。その時はちゃんと待ってます。朝、連絡ください。#霜降月物語 47

2022-11-10 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

溢れる想いになかなか寝つけず、それでも2時間ほど目を閉じた。目を開ける。うん、眠い。ぐっすりは寝てない。でも変わってない。窓の露は連なって線を引いている。会いに行くね。躊躇いも恥らいもなく伝える。君に出会えたこの奇跡を奇跡のまま、終わらせたくなかった。また逢える。#霜降月物語 48

2022-11-10 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

君の街に着く。駐車場に車を停め、教えてもらった通りに最寄りの駅に着く。笑顔の君をすぐに見つける。本当に来てくれたんだ。大丈夫ですか?聞いてくる君に思わず、大丈夫じゃないと口にする。君にこのまま会えなくなったらどうしたらいいのかって思えば思うほど眠れなかったんだ。#霜降月物語 49

2022-11-10 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

洋食屋で遅めの夕食を済ませながら、確認してしまう。会いに来るの、迷惑だった?君は意地悪そうな顔をして答える。迷惑でしたよ。私の予定とか関係なさそうだったし、優しいわけじゃないみたいだし、すぐに来ちゃいそうだったし、強引だったから。でも、私も会いたいって思いました。#霜降月物語 50

2022-11-10 22:00:02
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