#霜降月物語

♯霜降月物語
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RMP @spacetimefoam0

たった一つの言葉をきっかけに、言いかけては言えずにいた心の内をゆっくりとだけど丁寧に伝える。君の気持ちもそれに呼応しながら聞くことができた。ある部分聞けずにいるコアのようなものは残りつつ、今は君といられることに幸せを感じていた。少し残ったぬるめの珈琲を口に運ぶ。#霜降月物語 51

2022-11-11 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

この後どうするつもりだったの?君はまた意地悪そうな顔をしてみせる。朝まで時間があるから、ずっと話していたい。どこで?が抜け落ちた子供みたいな発言を真面目な顔をして伝える。くすっと笑う君が、しょうがないなぁ、コンビニによってプリン買って帰りましょ。楽しそうに答える。#霜降月物語 52

2022-11-11 07:00:02
RMP @spacetimefoam0

コンビニからの帰り道、コンビニ袋を下げた君の手から袋を受け取ろうと手を差し出す。君は袋を握ったまま僕の手を握る。あったかいですね。君の冷たい指はむしろ心地いい。手が暖かいとね、心は冷たいんだって。言葉にして伝えるとそれが正しいのかどうかよりもズキンと傷みが走った。#霜降月物語 53

2022-11-11 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

だったら、私の手で冷たくなったら、暖かくなりますか?浸透力が半端ないってこういう事を言うんだな。君の優しさはきっと天然なんだろう。屈託のない笑顔が僕を襲う。声で感じた君の輪郭は目の前にしてより鮮明となり、裏切りのない美しい月のようだった。知らぬうちに見惚れている。#霜降月物語 54

2022-11-11 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

公園にさしかかったところで、君はベンチに腰掛ける。星が綺麗。ホントだね。  どうして私なんですか?  うーん。うまく説明できないけど、たぶん、君だけが僕の声を聴いているような気がして。そして、これはもっとたぶんだけど、僕だけが君の、本当の声を聴いたような気がして。#霜降月物語 55

2022-11-11 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

もうそれ以上言葉は必要なかったのかもしれない。もしくはもっと言葉が必要だったのかもしれない。君の部屋でプリンを食べてスマホの小さな画面でサブスクの映画を観る。2つのマグカップにはココアが入っていてその甘さを今は受け入れられそうな気がしていた。ふと画面から目を離す。#霜降月物語 56

2022-11-12 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

画面を見つめる君の横顔が無防備にそこにある。やや肌寒い暖房を効かせていないこの部屋で息は白くなる。切れ長の君の眼とは対照的な少しアンバランスな小さな唇。君が気づく。映画は無音になり、君はそっと眼を閉じる。近づく僕もまた目を閉じる。星の降る音が聞こえてきそうだった。#霜降月物語 57

2022-11-12 07:00:00
RMP @spacetimefoam0

少しずつそれぞれの生い立ちを話したりする。きっと言えることと言えないことがまだまだあるけど少しずつ伝えあう。おそらくそれはアイデンティティみたいなものを伝える作業で、過去に捉えられていても今の自分を形成してることにはかわりないから。ここにいる自分を見てほしいから。#霜降月物語 58

2022-11-12 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

夜明けが近づくにつれて、どうして2人が惹かれたのかはお互いにわかるような気がした。気がした、だけかもしれないけど、足りない何かを埋めようとした時にそこにいてくれた、そんな感覚だったのかもしれない。空気中に漂う目に見えない粒子は二人の温度に合わせて結晶化するのかな?#霜降月物語 59

2022-11-12 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

太陽が昇る前に時計のアラームが振動する。二人ともソファに座ったまま眠ってた。君を起こさぬようにそっと立ち上がりブランケットを掛け直す。少し広めのおでこにキスしようか躊躇うと君がそっと眼を開ける。ぎゅっとハグをされて君は小さな声で囁く。いってらっしゃい、気をつけて。#霜降月物語 60

2022-11-12 22:00:01
RMP @spacetimefoam0

週に1度、君のもとに向かう。運転する間、眠くならないように配信を聞かせてとお願いする。誰かと話している君の優しくて落ちついた声をコメントはせずに聞いている。ただ、こころなしか疲れて聴こえる。僅かでも生活のルーティンを乱してしまっているのだろうかと不安になる。#霜降月物語 61

2022-11-13 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

二人で過ごす時間はきっとイレギュラーで、もしかすると君は無理をしてるのだろうか。かと言って僕が自ら会いに行くのをやめるとは言い出せなかった。会いたい気持ち、ずっと話していたい気持ちはとどまることがなかった。高速を走っている間ずっと、こんな風に自問自答を繰り返す。#霜降月物語 62

2022-11-13 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

チャイムの後、ドアが開く。ドアが閉まると同時に手を握り、君をひき寄せる。抱きしめて鼓動を、熱を感じる。あのね、もうすぐ、誕生日だったよね?うん。ケーキ以外に食べたいものある?そうだなぁ。何か得意料理があるなら食べてみたいな。得意はないけど、じゃあ、唐揚げにしよ。#霜降月物語 63

2022-11-13 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

今度、一緒にどこかに行かない?どこか?うん、この前、山に紅葉狩りに行ったから、今度は海沿いでお魚食べに行こうよ。海かぁ、今頃の海は寒そうだね。そうだね。だからさ、温泉にも行こう。海だけどさ。温泉。うん。それなら温かそう。君とのどんな会話も全てが楽しかった。全てが。#霜降月物語 64

2022-11-13 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

それでも君が無理して付き合ってくれてないのか。気にしてしまう。僕といて、楽しい?聞いたなり愚問である事を悔やむ。君はまっすぐにこう言うのだ。楽しくなかったら会いにきて欲しいなんて思わないし、私から来ないでって言う。それとも楽しくない?ご、ごめん。楽しい、しかない。#霜降月物語 65

2022-11-13 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

海沿いの道をゆっくりと走る。潮の香りを感じながら、太陽の光をキラキラと反射する波間を見つめる。ほどなく、今日泊まるホテルが見えてきた。小高い丘陵部に建つそのホテルは窓から面する海を一望できる上にベランダのように配されたそこに露天風呂がある。気持ちよさそうだ。#霜降月物語 66

2022-11-14 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

チェックイン後にホテルから散歩に出る。陽の当たる場所は暖かいが、日陰になると途端に寒くなる。くっつくように歩きながらこの前見た映画の話になる。どうしてあんなこと言ったんだろう。私が彼女ならあんな風に黙って見ていることなんてできないかも。じゃあ、なんて言う?#霜降月物語 67

2022-11-14 07:00:00
RMP @spacetimefoam0

うーん、別れる理由があるならちゃんと教えて、納得できるなら今すぐに別れてあげる。でも理由が言えないのなら、ずっと付きまとうから。かな。ずっと付きまとうんだ?うん。別れの理由を言わずに別れようとするなんてずるいって思っちゃう。別れるのも付き合うのも事実だから。#霜降月物語 68

2022-11-14 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

そうじゃないと付き合ってた事実まで、否定されそうだし、自分自身も否定しちゃいそう。そうなんだね。僕はどうかなぁ。別れる理由が自分にとってツライ事だったら、聞こうとしても聞けなくなるかも。弱虫だからかなぁ。というか、別れる理由がツラくないことなんてないよね。#霜降月物語 69

2022-11-14 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

結論としては何も聞くことができなくなるのかな。そうなんだ。じゃあ、と君は言いかけて、口をつぐむ。付き合いはじめたのかも曖昧な気がするのに、別れをもう考えなきゃいけないのか。二人は同時に思ったんだ。どこかでいつか、相手に別れの理由を説明する未来がある事を。#霜降月物語 70

2022-11-14 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

このお魚も美味しいね。刺身もいいけど揚げてるのも美味しい。少し早めの食事に舌鼓をうちながら白ワインを嗜む。二人でする食事は楽しい会話の連続だったけど、今日はなんとなくぎこちなかった。旅行と言う非日常が普段の二人でいる非日常を上回り、地に足がつかないからなのか。#霜降月物語 71

2022-11-15 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

それ以上に季節の持つ温度と乾き具合が感覚を狂わせているのかもしれない。遠くで鳴る波の音を聞きながらお風呂に入る。澄んだ空に浮かぶ星は砂のような音をさせながら降ってきそうな気がした。そういえば、あの配信はもう聞いた?二人ともよく聞く、花の似合う配信者の話題になる。#霜降月物語 72

2022-11-15 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

どうしたらあんなこと思いつくんだろうね。確かに、面白いよね。時間と空間が濃密になるに従って不思議なくらい他愛もない話をしてしまうのは逆に何かを意識しているからだろうか。夜の深まりと体温の上昇がシンクロする中で、君といる幸せを感じる。本当に君がいてくれて幸せだった。#霜降月物語 73

2022-11-15 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

こんな言い方は酷いかもしれないけど、どうしてあなたなんだろうって思ったりもした。想像する限り優しいだけの声、冷静さを装って心をみせない冷たい人、周りの人をどこか諦めているようなものの言い方、でも、好きなものは好きなんだって感情を忘れてないところ、私は好き。#霜降月物語 74

2022-11-15 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

気持ちの高鳴りを抑えるように君を抱きしめてゆっくりとなぞる。触れているすべてが溶けるように交わってむしろ苦しくなる。ここまで何かに支配されるように捧げたいと思ったことはないのかもしれない。これでいいのかはわからないけれど、正解じゃない何かを今、僕たちは求めてる。#霜降月物語 75

2022-11-15 22:00:00
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