#霜降月物語

♯霜降月物語
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RMP @spacetimefoam0

霜。空気と接触している物体の表面の温度が零度よりも低くなると、空気中の水蒸気が昇華し物体の表面に微細な結晶構造を持つ氷が成長する。この現象が発生するとき、日本語で霜が降ると表現する。11月は霜月または霜降月とも言われる。窓の露はいつしか霜に変わり、白い結晶をみせる。#霜降月物語 76

2022-11-16 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

日常に戻りつつ、日常に戻れない時間が訪れる。君の声が聞こえないとどこかで不安になるような感覚に陥る。声が聞けなくても文字で連絡が取れるから、街角で見つけた、これ可愛い、これ綺麗でしょ、の写真がどれも宝物になっていく。そして夜になれば、君の声を聞くことができる。#霜降月物語 77

2022-11-16 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

会いに行ける日はどうしても限られるから、行けない日は落ち着く時間に連絡をする。眠そうな君の声を少しだけでも聞きたくて、連絡したくせに謝りながらすぐ切ろうとすると、君は眠るまで話していてほしいと言う。子守唄のように今日あった事を話しているとそのうち寝息が聴こえる。#霜降月物語 78

2022-11-16 12:00:00
RMP @spacetimefoam0

目覚ましで起きると、スマホの向こうでおはよう、の声が聞こえる。でもまだ私は寝る、おやすみ。www。起きてね。おやすみ。とともに赤いボタンを押す。ただこのままつながらなくなったらどうしようと依存度の高い中毒者のような自分に少なからず不安を覚える、けどそれでよかった。#霜降月物語 79

2022-11-16 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

君がいてくれることは奇跡なんだとやっと気づけた。会えるなら、いつでもどこでもよかった。どうしたら君が喜んでくれるんだろうってずっと考えていられた。あ、でも、コラボをして配信をすることだけはタブーにしてた。わかりやすい自分に他人をごまかせるような自信はなかった。#霜降月物語 80

2022-11-16 22:00:01
RMP @spacetimefoam0

そのくせ、挑戦的ではあった。サムネールに君だけに向けた暗号を施す。縦読みじゃないけれど、数字と文字の配列は君だけへのメッセージだった。でも難しすぎて、君にも伝わらないことがあった。私はコナンでも、金田一でもないんだから、って笑ってくれたのはちょっとだけ嬉しかった。#霜降月物語 81

2022-11-17 02:00:03
RMP @spacetimefoam0

そんな時、君からの返事が遅れる時があった。何かあったのかな。大丈夫だよね。でも別に忙しくて気づかないことだってあるよ。から、連絡してくれなくてもいいから何事もない事を祈る、ようになる。落ち着いたらきっと返事がくる。本を読みながら何度も同じページを捲るしかなかった。#霜降月物語 82

2022-11-17 07:00:02
RMP @spacetimefoam0

そろそろ寝るね、おやすみ。何事もなかったように連絡が入る。返事ではない。きっと、何かあったんだろうけど、これを聞くのはおそらく野暮なんだって思いながら、おやすみって返すしかなかった。きっと話したくなったら、話してくれる。そう思う以外、僕には方法がなかった。#霜降月物語 83

2022-11-17 12:00:02
RMP @spacetimefoam0

どこかで僕が気にしちゃいけないことなんだ、と消極的になっていた。恋愛に慣れない子供の発想だったかもしれない。つまらないことを聞いて嫌われてしまう経験は多々ある。きっとこれもそういうことだと想像した。けど、違ったみたいだ。私のこと、気にはならない?と連絡がある。#霜降月物語 84

2022-11-17 17:00:02
RMP @spacetimefoam0

気にしてるよ。何かあった?遅かったかもしれないけど、そう返すので精一杯だった。もういいよ。おやすみ。ごめん、何があった?今からでも教えてほしい。すごく気にしてた。ごめん。君はためらいながらも、仕事の愚痴を吐いた。こんなこと言いたくなかったけど、聞いてほしかった。#霜降月物語 85

2022-11-17 22:00:01
RMP @spacetimefoam0

僕はまだまだ君のことをわかっていないみたいだった。大人の余裕のような、待つつもりの自制が無関心みたいに伝わってしまう自分が情けなかった。そばにいたらちゃんと気にしてあげられるのだろうかとこの微妙な距離を嘆いたりもした。もっとずっと君のそばにいられたらいいのに。#霜降月物語 86

2022-11-18 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

本当はありがとう、だし、素直じゃないんだけど、もっと早く気付いてほしいって思ったの。思っただけで伝えない私が悪いし、いつもだったら、ちゃんと伝えられるはずなのに、言えなくなってく自分もいて。すべてを聞いた後で君が漏らした本音に僕は勝手に愛おしさを感じる。#霜降月物語 87

2022-11-18 07:00:00
RMP @spacetimefoam0

愛おしさはきっと相手を思う深さ。言葉が独り歩きしないように遠慮してしまうのは心のすべてを伝えられたらと思う一方で、自分だけでなんとかしたい、迷惑をかけたくないと思う気持ちが芽生えるから。喜びを分かち合うのは簡単なのに苦しさを分かちあうのはどこかでためらってしまう。#霜降月物語 88

2022-11-18 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

君は何事もなかったように屈託なく配信を始める。良かったと思いながら、一抹の寂しさも覚える。僕がもっとちゃんとしてたら、君は僕だけを見てくれるのだろうか、と考えだしてしまう。そんなことじゃないことは実はちゃんとわかっているのに、君の声を聞いてどこかで嫉妬している。#霜降月物語 89

2022-11-18 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

愛って何だと思う?以前、君が僕に聞いたことを思い出してみる。なかなか一つの答えはないよねってはぐらかしたけど、あれが私のことを愛してる?って質問なんだとしたら、間違いなく愛してるんだと思うけど、でも、配信を聞きに来ている他のリスナーと僕とで一体何が違うんだろう。#霜降月物語 90

2022-11-18 22:00:01
RMP @spacetimefoam0

会いに行く日はそわそわしながら仕事を終え、車を走らせる。玄関で迎えられ、ハグをする。いつもと何も変わらないはずなのに、どこかで自分の自信のなさに狼狽している。どうかした?勘のいい君はすぐに目を覗いてくる。じっと見つめるその顔に吸い込まれ、思わずキスをした。#霜降月物語 91

2022-11-19 02:00:01
RMP @spacetimefoam0

馬鹿だなぁ。そんなこと感じるなんて。僕の小さな嫉妬心について説明すると一蹴された。私があなたに会うのに凄く勇気が必要だったのわかっていてほしいし、好きだよ、だけじゃ会えない。会って感じてる信頼感もある。そうだよね、ありがとう。またつまらないことで君を煩わせた。#霜降月物語 92

2022-11-19 07:00:01
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君がシャワーを浴びてる間、珈琲を入れようと台所に立った。マグカップはここにあって、インスタントでも珈琲があるといいな。と吊戸棚を開ける。そこにはミルとドリッパー、ペーパーフィルターの一式が収納されていた。一式揃ってるなんてすごいなと思いながら、いったん戸を占める。#霜降月物語 93

2022-11-19 12:00:01
RMP @spacetimefoam0

珈琲入れるのに一式揃っててすごいね。吊戸棚開けて発見しちゃった。え?うん。勝手に開けちゃったんだ。ごめん。二人で珈琲を飲もうかと思って、ココアでもよかったんだけど、甘くないものでもないかなと思って探して・・・。ごめん。 君が少しだけ緊張した顔をして俯いた。#霜降月物語 94

2022-11-19 17:00:01
RMP @spacetimefoam0

いいんだけど、一応声かけてからにしてほしかったな。そうだね。ごめん。それ以上、何も言えなくてソファに座る。君は僕の膝の上に腰をかけて、その綺麗な瞳でまたじっと僕を見つめる。『愛したいんじゃなくて愛しちゃうんだ』たぶん私の心はそう言ってる。そう呟いて僕を抱きしめる。#霜降月物語 95

2022-11-19 22:00:00
RMP @spacetimefoam0

明け方に目が覚める。話しながら眠ってた。部屋は豆電球でほんのりと色づいてる。薄暗い中で本棚を眺めてしまう。僕は小さい頃から本棚を眺めるのが好きでどんな順番で読んだんだろうなんて想像するのも好きだ。あ、イタリア語の本だ。勉強してるって言ってたな。興味で手にとる。#霜降月物語 96

2022-11-20 02:00:02
RMP @spacetimefoam0

手に取った瞬間、何か紙切れのようなものが抜け落ちた。栞にしては大きいな、と思いながら拾う。それは一枚の写真だった。君と誰かが写っている。薄暗いのが幸いして、じっと見るのをやめて、手に取った本に挟み、元に戻した。何してるんだと苦しくなる。自分で自分を苦しめてる。#霜降月物語 97

2022-11-20 07:00:01
RMP @spacetimefoam0

台所でコップに水を入れ一息で飲む。目が冴える。君の気持ち、僕の気持ち、理解してる範疇で心穏やかに過ごせばいいんだ。何もわかってないことにつまらない思考を持ちこんでも後悔するだけだ。過去のない人間なんていない。僕にだって付き合った彼女くらいいる。疑う余地なんてない。#霜降月物語 98

2022-11-20 12:00:00
RMP @spacetimefoam0

時計のアラームが震え、僕は身支度を整える。眠っている君に囁く。行くね。君は寝ぼけながら必ずハグをする。いってらっしゃい、気をつけて。外はまだ暗い。缶珈琲を買って車に乗る。なぜだろう。大きくため息をついてしまう。気にしてもしょうがないことがどんどん大きくなっていく。#霜降月物語 99

2022-11-20 17:00:00
RMP @spacetimefoam0

帰りの高速で朝焼けを迎えながら、あの写真の人と珈琲の一式とが結びつくのだろうか、とか、珈琲を飲む時に君が伏し目がちになるところ、そう言えば気にもしてなかった2つのマグカップが意味を持つようで苦しくなる。そしてこんな風に嫉妬してる自分に気づいて、本当に嫌になる。#霜降月物語 100

2022-11-20 22:00:01
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