四の舟×おろし丸によるスケッチブックリレー小説 ねぎくが~夜編~

スケッチブックのカップリング小説。妄想好きな方向けです。根岸君と空閑さんの夜のお散歩編。
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四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko コートに身を包んで、俺は家をこっそりと抜け出した。時間は夜の3時を過ぎたほど。幸いうちの家族は寝静まるのが早い。抜け出すのはとても簡単だった。こんな時間にどこへ行くのかと言えば、空閑と朝日を眺めに行くのだ。

2011-10-25 22:01:35
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE この時間帯の駅前というものは、恐ろしいほど人がいない。人だけではなく、車も通らないこの場所はホラー映画のような恐怖感すら覚える。コートの襟を立てるのは寒いからだ、うん、そうだ。

2011-10-25 22:05:32
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 人気のない駅前を通り、シャッターの降りた商店街を抜けると、バス停がある。この時間にはバスなど走ってはいないから、人などいるわけがない。だからこそ、ここを待ち合わせ場所にしたのだ。そして、空閑はすでに来ていた。

2011-10-25 22:10:59
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「遅いわ、根岸ちゃん」不満そうな顔で、空閑は俺を見ると言った。「悪いな、脱け出すのに手間かかって」「言い訳は聞きたくないわ」言うが早いが、空閑は俺にすり寄ってきた。「…寒かったのよ」

2011-10-25 22:17:48
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「……空閑」 「なに?」 「いや、お前、付き合い始めてから大胆になってきたなーと…」 「そうかしら?」 「付き合う前の俺なら、お前がこんな風にすり寄ってくるなんて考えられなかったからな」 そう言いながら、俺は空閑の手を握って歩きだした。

2011-10-25 22:23:31
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 人気のない道は、薄ぼんやりとした街灯の光しか見えない。そんな中を、二人だけで歩いているとまるでこの世界で二人だけになったかのような感じだ。「…でも、こう言うのも悪くないな」「でしょう?」

2011-10-25 22:27:00
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 向かう先は志免炭坑だ。空閑が「朝焼けに照らされる櫓をスケッチしたい」と言ったので、俺はこうして空閑を連れて夜中の街を歩いている。付き合い始めて数ヶ月。俺が空閑を誘ってどこかへ行くことはあっても、空閑が具体的にどこかへ行きたいと言ったことはこれが初めてだ。

2011-10-25 22:34:15
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 身体が覚えている道を、二人で歩いていく。道中何を話そうか考えたのだが、何も浮かばなかった。空閑の方は、と視線を送るといつもと変わらない彼女がいるだけだった。

2011-10-25 22:35:43
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「それにしてもさみぃな…」 「そうね」 「まだ秋だっていうのに、こうしてコートが必要なんだからなぁ…」 実際、今夜の冷え込みは予想外だった。たんすの中からこのコートをひっぱりだすのに苦労したものだ。

2011-10-25 22:39:20
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 一方の空閑も、結構な重装備だ。「…お前は温かそうだな。」「ユタンポがいないから、実は結構寒いのよ、これでも」

2011-10-25 22:44:24
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「お前、身内にロシア人でもいるのかってくらいの重装備だな」 「あら失礼ね。身内にいるのはフィンランド人よ?」 「えっ……? 初耳だぞ」 「……冗談よ」 そんな他愛もない会話をしていると、自動販売機が見えてきた。幸いなことに。‘あったか~い’飲み物もある。

2011-10-25 22:49:30
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「空閑、何か飲むか?丁度あったかいのもあるし」「…そうね、じゃあホットレモンは……あ、ある。」ガコン、と音を立ててホットレモンが出てきた。続いて微糖コーヒーも出てきた。「あれ?根岸ちゃん微糖飲めたの?」「飲めるわこれくらい」

2011-10-25 22:52:26
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 俺は自分で買ったコーヒーに加えて、もう一本コーヒーを買った。 「あら、根岸ちゃん、もう一本飲むの?」 「いいや。ほれ」 言うが早いか、俺は空閑のポケットに缶を入れた。「これなら、少しはカイロの代わりになるだろ? ぬるくなったら、俺が飲めばいいしな」 

2011-10-25 22:56:32
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…そうね。ユタンポほど柔らかくないけど。」「んじゃそろそろ行くか。」自販機の前から歩くこと十数分、ようやくお目当ての場所までたどり着いた。

2011-10-25 22:58:34
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「ライトアップはされていないようだな…」 「フェンスがあるから櫓がここにあるのがわかるけど、暗いとよくわからないのね…」 だが、さすがは竪坑櫓だ。そこに巨大ななにかがあることだけは感じ取れる。「あそこのベンチで座ってるか」 「そうね…」

2011-10-25 23:01:59
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 幸い、天気は良い。月は沈んでいたが空は段々と白んでいる。もうそろそろか。隣の空閑はいそいそとスケッチブックを取り出していた。

2011-10-25 23:05:53
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「やっぱり、描くのか」 「ええ。こんな機会、めったにないから」 「ふむ」 空閑がスケッチブックに描く竪坑櫓は、どんなものなのだろうか。時計を見ると、もう少しで夜明けだ。空が次第に明るくなりはじめている。この絶妙な色合いを見ていると、スケッチがしたくなる。

2011-10-25 23:12:36
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「俺も、持ってくりゃ良かったかな。」「また来れるわよ。」「そうだな」段々と、空が眩しくなっていく。やがて太陽がその姿をちらりと現していった。

2011-10-25 23:16:47
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko この朝日を富士山から見ていると、ご来光と呼べるのだろうな…。「昨日」がさよならを告げ、「今日」がゆっくりと顔を出している。俺はいつも、こんなきれいな光景が繰り広げられていく中起きて、1日を送っているのか。それは空閑も同じなのだ。

2011-10-25 23:21:26
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE なんだか夢を見ているかのような幻想的な光景が、目の前に広がって行く。気付くともう太陽は半分ぐらい昇っていた。「…できたわ。」「おっ」見せてもらおうと覗きこんだら、空閑はすぐにスケッチブックを閉じてしまった。

2011-10-25 23:23:22
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「なぜに、閉じるかな」 「なぜだと思う?」 「…わからん」 「…根岸ちゃん」 「なんだ?」 「…お腹すいたわね」 それは同感だ。夜中中起きているが、俺も空閑も飲み物しかとっていない。腹も、いい具合に空いていた。

2011-10-25 23:26:19
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「…コンビニ、あったかな」「……どうだったかしらね。」空閑は座っていたベンチから立ち上がると、胸にしまっていた缶コーヒーを取り出した。「すっかりぬるくなっちゃったわね」

2011-10-25 23:29:01
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「そうか。なら…」 俺は空閑の持つコーヒーの缶ごと空閑の手を握った。「ホットコーヒーにしながら、飯屋でも探そうぜ」

2011-10-25 23:49:07
焼き鳥P @Yakitori_P

@YOTSUnoFUNE 「この時間から開いてるお店って言うと……」「駅前行けばなんかしらあるだろ」ぬるくなってしまったはずの缶コーヒーが、少しだけ熱いような気がした。

2011-10-25 23:50:29
四の舟(よつのふね) @YOTSUnoFUNE

@oroshiwanko 「でもね、根岸ちゃん」 「なんだ?」 「私、コーヒーは‘つめた~い’派なのよ?」 「えっ!?」

2011-10-25 23:53:43