悪魔と少女

#悪魔と少女 のまとめ。
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愁夢 @s_shumu

人畜無害な顔で空を見つめる悪魔。「アベル、貴方ってあまり悪魔らしくないわよね」「そうかもな」遠くに視線を向けたまま頷くそれ。「俺が本に封じられてから幾百の時が過ぎた。人間に近付き過ぎてるんだよ、俺は」少女を振り仰いだのは、眩しそうに細められた目。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-05 00:16:16
愁夢 @s_shumu

「セシリア、お前は幸せか?」「貴方には関係ないわ」「幸せでないと契約の意味がない」少女は歌うように笑う。「それも私には関係ない」「……お前は幸せでいなくてはならない」「どうして」少女はそっぽを向いたままの悪魔を睨みつける。「それはお前に関係ない」 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-05 01:21:13
愁夢 @s_shumu

「アグネス、お前は幸せか?」遠い、夕闇の中の記憶。女は目を瞬いた。「どうでしょう?……あの娘が今も未来も、笑っていられること。それだけでいいの」「それが幸せなのか?」目を見張り、「そう、ね」笑った。幸せそうに。「では、俺も守ろう」セシリアの幸福を。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-05 01:34:42
愁夢 @s_shumu

「ゴホ…」「セシィ、風邪?」「だいじょうぶ」「ひどい声。休んだら?」「いいの。それに、休むとシスターが部屋まで来られるでしょう?」「? 嫌いなの?」「とんでもない。シスターは尊敬しているわ。……だからこそ、会いたくないの」「ふーん」罪悪感に揺れる。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-07 23:37:12
愁夢 @s_shumu

俺は、ロングスリーパーだ。日が昇る頃から日が沈むまで、冬でも10時間近く寝る。夏に至っては15時間近い。学校とやらで遅寝早起きな召喚主にはじと目で見られるが、まあ、こういうのが悪魔なのだからしょうがないじゃないか。 #悪魔と少女 #twnovel #twremix @1_dark

2011-11-07 23:45:06
愁夢 @s_shumu

部屋から優しい唄が聞こえる。「あら、もう起きていたの」冬が近づいて、悪魔が目覚めるのは早くなっていた。「おかえり、セシリア」目を瞬く。「おかえり、ね。貴方が言うにしては優しい言葉ね。……さっきの唄も」子守歌に似たメロディ。それは、少女にとって母の。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-07 23:59:18
愁夢 @s_shumu

目覚めても、セシリアはまだ帰っていなかった。それは悪魔にとって初めてのことだった。夕暮れの空を見上げて、ふと懐かしいメロディが口をつく。薄暗くなった部屋に怯える子供をあやす、優しく暖かな子守歌を唄う声。嗚呼、俺の中はまだこんなにもアグネスで一杯だ。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-08 00:04:56
愁夢 @s_shumu

一人の夜が寂しくて、悪魔の名を呼んだ。悪魔は不機嫌な面持ちで、けれど心配そうな瞳で、私を見る。こんな悪魔を知れば知るほどに、私の中の殺意が空回りする。もう、何を信じればいいのだろう。 #悪魔と少女 #twnovel #twremix @1_dark

2011-11-09 00:02:55
愁夢 @s_shumu

あるところに一冊の本を手にした少女がいました。悪魔の封じられたその本は、少女は幼い頃に亡くした母から受け継いだものでした。数年後、寂しさに倦んだ少女は悪魔を呼びだしました。それは、悪魔にとっても、少女にとっても悲劇の始まりでした。大切な存在を失くした、二人の物語。 #悪魔と少女

2011-11-23 00:23:06
愁夢 @s_shumu

月明かりを反射する雪景色は幻想的だった。窓の外を眺める俺の後ろ、少女は書き物をする手を擦り合せた。「寒いのか?」こちらをちらりと見て、また机に向かう少女。「言えば良い」魔力を部屋に満たす。瞬く間に暖かくなった部屋に、少女はひとつ溜め息を落とした。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-24 00:43:18
愁夢 @s_shumu

「嫌いよ、嫌い」そう、嫌い。絶対に。大嫌い。部屋のランプに照らされた悪魔の黒い翼。いつだって悪魔を想えば浮かぶのはその麗しき顔ではなくて、人外を強調するその翼だった。「嫌いよ、嫌い」泣きそうになりながら繰り返す。何が嫌いなのかも考えたくないの。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-24 01:02:01
愁夢 @s_shumu

泣きたくなるが、ある。特に雪がぼたぼたと降る、冬の夜は。独りきりじゃない、暖かな部屋。今年の冬はいつもと違って。でも、だからこそ寂しくなる時がある。泣きたくなる時がある。「傍にいて」縋りつけたら、きっと楽になれるのに。縋りつけない私の弱さと脆さ。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-25 01:47:24
愁夢 @s_shumu

冬は人間が脆くなる季節だと悪魔なら誰でも知っている。例外なく俺も。セシリアは元から脆い。それは馨しい魂の匂いでわかる。腐り落ちる前の、強烈な芳香。セシリアの幸せを守るという約束が胸の奥で罅割れてる。「守れない」セシリアは頑なに、俺に守らせないのだ。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-25 02:14:47
愁夢 @s_shumu

れはある雪の夜。暖かな部屋に、震える少女。その瞳の奥で凍えるような寂しさが揺れていた。それでも、爛々と俺を睨み。唐突に気付いた。その瞳、その奥、揺れる寂しさは狂気に似て。そして、憎しみの色。寂しさに揺れるその瞳。その奥。俺を確かに殺す、その狂気。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-25 02:21:41
愁夢 @s_shumu

それはある雪の夜。暖かな部屋に、立ち尽くす悪魔。その瞳の奥で燃えるような切なさが揺れていた。真っ直ぐに私を見て。唐突に気付いた。その瞳、その奥、揺れる切なさは狂気に似て。そして、愛しさの色。滑稽に揺れるその瞳。その奥。私を確かに見つめる、その狂気。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-25 02:26:12
愁夢 @s_shumu

満月の夜、少女は囁く。「アベル、貴方の名の意味、知ってる?」「意味?」「そう。貴方は知らないでしょうね。アベルはアダムとイヴの二人目の息子。兄であるカインに殺される、人類最初の殺人の被害者なの」振り返った少女。「それが貴方の名前」歪んだ少女の笑顔。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-26 00:22:21
愁夢 @s_shumu

アベル。呼ぶ声は嫌いじゃなかった。アグネスが呼ぶ名とも違う、不思議な響き。それをセシリアは嬉しそうに呼ぶから。「アベル」それが決意に彩られた愉悦だと気付いたのは幸福なのか、不幸なのか。不意に少女が覗き込む。「っ!どうした?」「貴方こそ」笑う、少女。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-29 23:31:57
愁夢 @s_shumu

朝焼けに彩られた空を見て、眠気の襲う瞼を瞬く。そろそろ時間だな。踏み入れた部屋は魔力の残滓で少し暖かい。暖め直し、少女の枕元に立つ。「セシリア」ぱちりと目を開けた少女の瞳は赤い。「有難う」心のこもらない礼。この些細な言葉でさえ苦痛なのだろうか。 #twnovel #悪魔と少女

2011-11-29 23:32:17
愁夢 @s_shumu

優しさは嘘だ。労わりは偽りだ。なぜなら、アレは悪魔。甘言で人間を騙し、幻想で人間を貶める、黒い黒い悪魔。だから私は信じない。騙されない。貶められない。自分に言い聞かせるように、繰り返す。「自分に暗示をかけるのか?」悪魔の囁きはいつだって残酷だ。 #twnovel #悪魔と少女

2011-12-01 23:48:56
愁夢 @s_shumu

その部屋はいつも薄暗かった。ママだけの部屋。入ってはいけないと言われた訳じゃないのに、踏み入れづらかったその部屋。ある日覗いたその部屋にママの姿はなく。凍りついた笑みを浮かべた其れだけがそこにいて。ママはもう何処にもいないのだと幼い私に告げた。 #twnovel #悪魔と少女

2011-12-17 22:33:31
愁夢 @s_shumu

母娘というものは似るのだと思っていた。何代の手を経てきた中でアグネスだけは違った。優しく、強い。暖かな太陽のような人間だった。今までの召喚者たちとはまるで違って、彼女は何も願わないくせにたくさんのものを求められた気がする。でも、それは悪くなかった。幸せ、だった。 #悪魔と少女

2011-12-21 23:14:40
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