三国志こばなし集 2023年3月号

三国志こばなし集 @omikanboy3594

黄忠「今日の稽古はこれまで」 孫尚香「ありがとうございました！」 黄「…おや？」 孫「どうしたの？」 黄「弓袋がだいぶくたびれてしまってな…」 孫「あ、大変…」 黄「どうしたものかのう…」 孫「任せて！お爺ちゃん！」 黄「何かな？」 孫「私が繕ってあげるから！」 黄「おう、それは助かる！」

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孫「…と言ったものの」 侍女A「姫様、お帰りなさいませ！」 孫「この中で、裁縫ができる者はいない？」 B「…」 C「…」 D「…」 孫「そりゃそうよねぇ…」 B「姫様が募集要項でそういうの不問って言ってたじゃないですか」 C「それを期待されても…」 D「私たちは武術試験だけで採用されましたから」

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孫「…」 劉備「どうした尚香ちゃん？」 孫「…旦那様」 劉「なんか困り事か？」 孫「…すごく恥ずかしいことなんですけど」 劉「なんでも言ってみなよ」 孫「私にお裁縫を教えてくださる方はいらっしゃいませんか？」 劉「お裁縫？」 孫「お爺ちゃんの弓袋を直してあげたくて…」 劉「なるほどね…」

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孫尚香…今まではお裁縫なんて絶対やりたくないと思ってた。 黄忠…ワクワクしてるらしい。 劉備…適任者がいるからちょっと待ってなよ。

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A…鼎を持ち上げられる力自慢。 B…牛と格闘できる武術自慢。 C…荒馬を御せる馬術自慢。 D…弓が上手な弓術自慢。

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劉備「尚香ちゃん、お裁縫の師匠を連れてきたぜ！」 孫尚香「ありがとうございます…!?」 張飛「よう、奥方」 孫「…張飛将軍が、私にお裁縫を？」 ？「ほら、あなたの顔って女の子からするととっても怖いのが分かったでしょ？」 張「うるせえ！」 夏侯氏「旦那が怖がらせてごめんなさいね、奥方様！」

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孫「…初めまして。孫尚香と申します」 夏「ほら、あなたがいると怖がっちゃってお裁縫もできないから」 張「…おめえがついてこいって言ったじゃねえか」 夏「どうだか？」 劉「おじゃま虫はさっさと表に行くぜ、益徳」 張「ケッ！」 夏「…改めまして。張益徳の奥方の夏侯と申します」 孫「え…？」

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夏「どうしたの？」 孫「夏侯さんが、あの張飛将軍の奥方様？」 夏「そうよ」 孫「こんなに小柄で可愛らしいのに？」 夏「嬉しいこと言うわね」 孫「旦那様が張飛将軍？」 夏「…やっぱり馴れ初めからお話しした方がやりやすい？」 孫「お許しいただけるなら…」 夏「初対面で攫われたのよ」 孫「!?」

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孫尚香…劉備陣営の女性陣も只者ではないことを思い知らされた。 夏侯氏…初対面こそ攫われたが、その後の夫婦間の逆転劇は鉄板ネタ。 劉備…おめえを尻に敷くとは大した嫁さんじゃねえか。 張飛…敷かれてねえやい！

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夏侯氏「何を縫いたいの？」 孫尚香「このお爺ちゃんの弓袋です」 夏「…どれどれ」 孫「…」 夏「これくらいなら大丈夫そうね」 孫「よろしくお願いします」 夏「そんなに固くならないで良いって」 孫「…いいの？」 夏「私たちはお友達ってことでいいじゃないの」 孫「友達？」 夏「何かおかしい？」

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孫「…そういえば、今まで女の友達なんて一人もいなかったってことに気がついて」 夏「じゃあ私が初めての友達なの？」 孫「ええ…」 夏「それは光栄ね！」 孫「いいの？」 夏「いいに決まってるじゃない！」 孫「ありがとう！」 夏「私は翼って呼んでくれない？」 孫「あなたの名前？」 夏「そうよ」

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夏「旦那からもらったの！」 孫「張飛将軍から？」 夏「もらったというか、奪ったというか…」 孫「なあにそれ？」 夏「そのうち話すよ」 孫「分かったわ」 夏「だけどこの弓袋、とっても大事な物じゃないかな？」 孫「そうなの？」 夏「だって弓の名手が預けてくれたんでしょ？」 孫「その通りね…」

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孫尚香…ことの重大性に気づいてハッとした。 夏侯氏…結婚する時に、益徳か翼徳のどっちかをよこせと要求した結果、翼の字をもらったという。

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馬超「曹操と戦だぞ、龐悳！ワクワクするな！」 龐悳「…都のご家族は？」 馬「俺の父上は韓遂殿だが？」 龐「ご兄弟も？」 馬「俺の将兵が皆兄弟だ！」 龐「…」 馬岱「諦めましょう、龐徳殿」 龐「随分と目が赤く、やつれましたな…」 岱「三日三晩血涙を流しておりましたゆえ」 超「湿っぽいぞ！」

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兵「韓遂殿から使者が！」 超「誰が来た？」 兵「閻行殿です！」 超「…」 兵「若様？」 超「一緒に行こう、龐悳」 龐「…かしこまりました」 岱(生涯のトラウマだもんな、閻行殿) 龐「遅参しました」 閻行「まだ龐徳がいないと俺と話せぬか孟起よ」 超「…そんなわけないだろう」 閻「どうでもいい」

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閻「涼州の軍閥は概ね賛同するだろう」 龐「痛み入ります」 閻「お前に言っていない、龐悳」 龐「…」 閻「殿が日頃から誼を通じていたおかげだからな、孟起」 超「…」 閻「貴様らだけで蜂起して死ねばいいものを、よりによって殿を巻き込みやがって」 超「…」 閻「俺は貴様らを同志と思わぬからな」

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馬超…やたらテンションが高い時もあれば、閻行と会うとテンションが落ちて別人のようになる。 龐悳…馬騰に仕えて奮闘するのが性に合っていたのに、いつの間にか馬超に付いていた。 馬岱…たまたま涼州にいたからセーフだったけど、都にいたら死んでたと思うと… 閻行…馬超の宿敵。絶対に許さない。

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孫権「蜀から費禕がやって来るぞ」 諸葛恪「どのような者です？」 孫「ありあまる仕事を抱える重臣ながら、仕事を全て終えた後で遊びに行く遊び人で」 顧雍「蜀にそのような御仁が…」 孫「当意即妙な受け答えに定評のある男だという」 諸「なんですと？」 孫「お前と良い勝負かもしれんな、諸葛恪」

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費禕「お初にお目にかかる。費禕、字を文偉と申します」 孫「うむ」 費「丞相が南蛮征伐より帰還いたしましたことをご報告に参りました」 孫「もう征伐を終えたのか」 費「中々に苦労されたそうで」 諸「ひいひい言ったでしょうな！」 費「…彼は？」 孫「奴は諸葛亮の甥だ。子瑜の子の諸葛恪という」

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費「丞相の甥御とは。是非ともご挨拶を」 孫「諸葛恪」 諸「諸葛恪。字を元遜と申す。父は貴殿の丞相の兄です」 費「費禕。字を文偉です。貴殿の叔父上の命で参りました」 諸「益州の民はあなたの事をよく呼ぶことでしょうな」 費「そのこころは？」 諸「山椒が辛くてひいひいとね！」 費「…面白い」

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孫権…費禕が来る宴会の時にイタズラするぞ！ 諸葛恪…まず一本取ってやったとしたり顔。 顧雍…外交の使者に対してやることではないと渋い顔。 費禕…反撃の機をじわじわ伺っている。

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孫権「絶対に誰も宴席で費禕に反応するなよ」 顧雍「…」 谷利「こちらへ、費禕殿」 費禕「恐悦至極…」 孫「おう」 臣「…」 費「…」 孫(どうする？) 費「鳳凰が参った暁には麒麟なら食事を辞めたそうですが、この辺りにはラバや驢馬しかおらぬそうで、食事に執心たまらぬそうですなあ！」 孫(ほう)

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諸葛恪「鳳凰ですと？」 孫(やれやれ) 諸「我らは鳳凰を待っていたつもりでしたのに燕雀がチュンチュンやって来て自分が鳳凰だと言っているそうで！私がパチンコで鳳凰とやらを故郷まで追っ払ってやりましょうか！」 費「ひい〜それはご寛恕のほどを…」 孫「皆。費禕を出迎えよ」 費「恐れ入ります」

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孫「宴を楽しまれよ、費禕殿」 費「！」 谷「？」 費「餅！歌わずにはいられないッ！」 孫「？」 費「この餅の 麦を作りし 農夫たち 諸兄はすごい 厨房よりも」 孫(この野郎…) 諸「整いました！」 孫「おう！」 諸「この餅は 磨と杵とで こねしもの 粘る我らの 光明いずこ」 孫「見事だ！」 費「…」

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孫権…費禕もやるではないか。 顧雍…私はこういう機転が効かぬもので。 諸葛恪…費禕にライバル心やら自己顕示欲やらを全力で振り撒いてる。 谷利…賢い人ってすげえなぁ… 費禕…丞相の甥御の人となりはおおよそ分かりました。