【GENSHIN】砕夢奇珍 石心【講談完結】

二次創作の茶博士劉蘇の続きが聴ける講談です。
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次回お楽しみに @cha_boshi

皆さんは石商の所で運試しをもうしたかな?石珀は純度の高い岩元素の結晶だ。石の心とも呼ばれているね。 岩の魂と言い換える事も出来るかな。そして力のある石である程に人の心を映すと云う言伝えもあるのだとか。 今日はその石珀にまつわるお話をしようかね。

2023-03-23 20:51:30
次回お楽しみに @cha_boshi

噂によると、港のどこかに山の石にも海の波にも忘れ去られた場所があるらしい。海風が吹く場所で目を閉じ、街の喧騒を背にして四十九歩。街のざわめきが遠ざかり自分の心臓の鼓動しか耳に入らなくなる瞬間、目を開ければ小さな店に辿り着くのだ。 ごめんください。誰かいませんか?

2023-03-23 20:52:29
次回お楽しみに @cha_boshi

そう声を掛けながら戸を叩いたのは蓑を着た男だった。埃っぽい窓から商品を覗き見る。きらきらとした星屑を集めた瓶、氷の様な輝きの折られた刃、年代物の紙の黄ばんだ絵巻物、不思議な輝きの丹薬、霜の付いた瓦… 男が店へ入ると戸は勝手に閉まってしまった。

2023-03-23 20:53:59
次回お楽しみに @cha_boshi

男はカウンターの前まで入っていき、この世の物とは思えないような素晴らしくも奇妙な品々を眺めていた。 いらっしゃい。何か気に入った物や欲しいものはあったかしら? 不意に優し気な女の声が聞こえ男は驚いた。振り向くとキツネの様な細い目つきの店主がこちらを見て笑っている。

2023-03-23 20:56:01
次回お楽しみに @cha_boshi

男は咳払いをひとつして言った。 ああ、んんっ。その…身の証を立てるものを探しているんだ。過去の清算の為に。 男はその姿に似つかわしくない不安混じりの抑えた口調だった。店主の金色の双眸が濡れた蓑姿の男を上から下へ検分して頷いた。 そう?分かったわ。

2023-03-23 20:57:46
次回お楽しみに @cha_boshi

店主は身を屈めて何かを探し始め、箱の中から見事な石珀を一つ取り出した。男は店主の手から石珀を受け取ると月明かりに照らしてじっくりと見た。 石珀は夜の光に透かすと温かな金色の奥に不穏な嵐が隠れている様に見え、それを持つ男の手は震えた。

2023-03-23 20:59:26
次回お楽しみに @cha_boshi

石珀とは岩の心よ。長い年月の中で変化が起こり、例え硬い岩石であろうと凝縮し不純物のない澄んだ心になる。 男は店主の声をどこか遥か遠くから聞こえる様に、心ここに在らずのままに聞き微かに頷いた。 まさに、私が探していたものだ。

2023-03-23 21:00:30
次回お楽しみに @cha_boshi

低い声で言うと、モラの入った重そうな袋を置き店を出た男の姿は夜の雨に紛れ見えなくなってしまった。 この話の続きは次回お楽しみに。

2023-03-23 21:01:19