五百蔵容さんの「シン・仮面ライダー」分析

1
五百蔵 容 @500zoo

『シン・仮面ライダー』観てきました シン・シリーズの存続が危ぶまれる

2023-04-01 22:52:14
五百蔵 容 @500zoo

基本的に「良かった」作品を中心に分析も語りもしたいヒトなので、最近自分的に鉄板なはずだった監督やスタジオの作がイマイチすぎて文句ばかり書いてるのを500としても、空しくなりました、自分で自分がイヤになったのです、手の震えが止まりませんと思っているため、これ以上詳しく書くのも憚られる

2023-04-01 22:55:52
五百蔵 容 @500zoo

とはいえあとでもうちょっと何か書くかもしれませんが観ている間中こだまのように500の脳内を去来していたのが もっと予算つけたれよ…… つけたれよ…… つけたれよ…… と………………

2023-04-01 22:57:35
五百蔵 容 @500zoo

昨夜寝ながら考えていて、(でも予算が倍額あっても庵野さんは基本今の形はそのままで細部の完成度を上げたり、アクションのバリエーション増やすだけかもな)と思うようになった。アクションドラマを成立させる為のマスターショットやシーン造形、動機や犯罪の像を彫り込んだりはしなさそうだと。

2023-04-02 10:14:36
五百蔵 容 @500zoo

全くしないということはないと思うのだけど、今の、<劇的な連続性と空間の連続性がきちんとつながって活劇をしながらドラマが充填されていく>ような話法は採用「しない」方向は、塩梅が少し変わっても基本的に変わらないと思う。なぜならそもそもの『仮面ライダー』がそうじゃないから。

2023-04-02 10:17:27
五百蔵 容 @500zoo

今の「設定とトラウマとトラウマの解消を開巻から終幕まで登場人物が全部台詞で喋って了」というのも、内容面では「モダナイズ箇所」にあたるのだけれども、むしろせめてあれくらいのものが添えられているだけでも<誠実>なのかもしれない。これでなんとか現代の映画にしましたアリバイ的な。

2023-04-02 10:20:51
五百蔵 容 @500zoo

観ながら感じていたことのひとつに「ゴダールが撮った仮面ライダーみたいだな」というのがあって、この印象は当たらずとも遠からずかなと、ちょっと考えてみて感じています。

2023-04-02 10:25:46
五百蔵 容 @500zoo

庵野さんの場合はゴダールとは違って、単に「(たとえ現代の話法に見合わなくても)原典の要点」を外さずに堅持したことによって「プロット主義」を結果として破壊しているのだけど、「劇的な連続性を無視してエピソードのブロックがひたすらジャンプし続ける」骨格は『気狂いピエロ』なんかと同じ。

2023-04-02 10:25:46
五百蔵 容 @500zoo

で、「劇的な連続性を無視してエピソード(やヴィジョン)のブロックがジャンプし続け」ているのに、音楽や編集や美学的なレベルでは連続性が維持されているので、ストーリー主義、プロット主義とはまた違う、視覚と音響のジャンルである映画でしかなしえない「ドラマ≒連続性」がうまれる。

2023-04-02 10:28:34
五百蔵 容 @500zoo

ゴダールは、(その考え方でフォーカスした)『気狂いピエロ』をはじめとした一連の作品でそれをかなり成功させているのだけれども(トートロジーっぽくなるが、ゴダールが「それで映画になる」ことを理論的にも実践的にも証明したからこそ、その後の同趣向、例えば『シン・仮面ライダー』も成立する)

2023-04-02 10:31:11
五百蔵 容 @500zoo

ただ、これも観ながら考えましたが『シン・仮面ライダー』は『気狂いピエロ』だったんだよ!と断じ納得したところで「う~んイマイチ」という結論はあんまり変わらなくて。そのゴダール的な方法論自体が、うまくいっているかどうかが怪しい。ぼくの目にはうまくいっていないようにみえる。

2023-04-02 10:35:11
五百蔵 容 @500zoo

視覚的なアクションドラマを成立させるため(観客と何かを共有するために求められる時間と空間の前提条件の構築)に必要なものが欠けすぎている、のは「一般的な活劇映画としての難点」で、それをそもそも必要としていない(ゴダール的な方法論で挑んでいる)と前提したとしてもやはり不足がある

2023-04-02 10:37:26
五百蔵 容 @500zoo

どっちにしても不足なんだけれども、ゴダール的な「非-視覚的、非-音響的テクストはジャンプ(省略)しちゃっておK」的方法論に、主に視覚的・デザイン的インパクトで娯楽性を付与してアクション映画として成立しないか?という(かなりリスキーな)チャレンジだと捉えたら評価がちょっと変わってくる

2023-04-02 10:42:20
五百蔵 容 @500zoo

超リスキーだから結果としてうまくいってなくても、「2号との対決シーンのクオリティをもう二段階くらい持ち上げられてたら全然違ったのでは……?」「ハチオーグのくだり、もうちょい持ち上げられてたら全然違ったのは?」とか思い当たる節は、かなりある。「動機をちゃんと劇化しろ」じゃなくて。

2023-04-02 10:47:11
五百蔵 容 @500zoo

劇的テクストの面で困ったら浜辺美波に全振りするのは、ゴダールが困ったらアンナ・カリーナに全振りするのと同じだし、言語テクストに振れるところは台本読み下しになっちゃってもいいから語りに振っちゃう、のもゴダール。ゴダールというか、ゴダールが「これでも全然成立するよ」と証明したやり方。

2023-04-02 10:50:55
五百蔵 容 @500zoo

問題は、例えば『気狂いピエロ』に範をとって考えてみると、あの映画は「犯罪サスペンスの文芸的前提条件が全く構築されていないのにも関わらず、視覚的・音響的要素の編集によってのみ映画型の犯罪サスペンス(らしきもの)が成立する」ていて、(続

2023-04-02 10:55:47
五百蔵 容 @500zoo

『シン・仮面ライダー』も、「ショッカーの何が悪いのか、ヒーローの何が正しい(説得性がある)のか、文芸的前提条件が構築されていないのにもかかわらず、視覚的・音響的要素の編集によってのみヒーロー映画が成立」するのを狙っている。方法論は全然問題ないと思う。それはなし得る。

2023-04-02 10:57:48
五百蔵 容 @500zoo

問題は、フェルディナンの犯罪はそれ自体「文芸的説得性」を必要とするウェイトがそもそも「低い」ため、ある意味「省略可能」なのだけれども、ショッカーの犯罪と本郷猛の抵抗に必要な文芸的説得性のウェイトの重さはフェルディナンの犯罪の比ではないという点。ここの見切りが勝負を分けた気がする

2023-04-02 11:03:07
五百蔵 容 @500zoo

ただ、ここは評価難しくて、監督としては「これでいける」「いかねばならない」という見切りだと思うし、予算、スケジュールがもっとあってもそこのウェイトを満たすためには投資しないと思う。

2023-04-02 11:09:18
五百蔵 容 @500zoo

なぜなら、この映画のエピソードのブロックやイマージュのジャンプ構造は、ゴダール的な映画論以上に、「原典の仮面ライダーTVシリーズ(70年代初期の特撮ドラマ)の文芸的・視覚的構造」をできるだけ遵守するというコンセプトに裏打ちされているから。

2023-04-02 11:09:18
五百蔵 容 @500zoo

そのいわばこのジャンルにおける「ギリシャ文化」的構造体を(現代的映画論の支援も活用つつ)どれだけ維持しながら「現代化」できるか、がチャレンジの肝なのだから、金と時間がある・ないの問題ではない。そこを遵守できないなら作る意味がない。だからチャレンジした。ということなんではないかなと

2023-04-02 11:09:19
五百蔵 容 @500zoo

そういった方法論上の理解が可能な一方で、「なんで乗りにくい?」「なんで『シン・ゴジラ』みたいに面白くないん?」的な問いへの答えは、テーマ性、震災文学としての性格云々を持ち出すまでもなく、技術的にシンプルな答えが可能でもある。

2023-04-03 08:08:00
五百蔵 容 @500zoo

『シン・仮面ライダー』は、そもそも『シン・ゴジラ』『エヴァTVシリーズ初期』やその他活劇映画、アクション映画の名作と異なり、「観客との間で、活劇を行う=戦う理由について広汎で強い合意を形成してから話を進める」という形で書かれていない。むしろそれをしないように書かれている。

2023-04-03 08:08:00
五百蔵 容 @500zoo

庵野秀明が、そのあたりきちんとやろうと思えば最強クラスに面白く書ける作家だというのは幾つも事例があるので、『シン・仮面ライダー』はあえてそう書いていないと見るべき。またこの事は、上述した、採用されている構成原理の「一般的な活劇映画」との違いとも整合する。

2023-04-03 13:57:32
五百蔵 容 @500zoo

なぜそうしたのか(一般的な活劇映画の構成原理を採用していないのか)については、「原典がそうしていないから」というベースがあるのではないかと思う。

2023-04-03 14:02:59