稲川淳二の『つぶやき怪談』(2022.11.29)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

その明け方、電話が鳴ったんだけど、 睡眠不足もあって、その人の返事は、 少し、トンチンカンになっていたようでした。

2022-11-29 22:24:35
稲川淳二 @Junji_Inagawa

電話の相手は、 その人が経営するクラブのマネージャーだったんです。

2022-11-29 22:24:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「社長、すいません、実は○○店が、昨夜ボヤを出しましたが、 処理の方は、うまくできましたので、 ご連絡いたします」

2022-11-29 22:25:17
稲川淳二 @Junji_Inagawa

っていう、 その言葉を聞いて、その人、 「えっ!?それ何時ごろだ?」

2022-11-29 22:25:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

相手が、時間を言ったから、 「たぶん俺、そのサイレンの音を聞いたぞ」

2022-11-29 22:27:05
稲川淳二 @Junji_Inagawa

一瞬、マネージャー、 どうしようかと迷ったんでしょうね。

2022-11-29 22:27:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ちょっと、言葉をとぎらせてから、

2022-11-29 22:27:37
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「社長、いくら、夜が静かだからって、 店に向かう消防車のサイレンが、

2022-11-29 22:28:01
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そちらのマンションに、 聞こえるとは思えませんが」

2022-11-29 22:28:07
稲川淳二 @Junji_Inagawa

確かに、店とマンションの距離を考えれば、 聞こえるはずはないんだけど、

2022-11-29 22:28:32
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「だって俺、聞いたんだよ」 って、電話を切りました。

2022-11-29 22:28:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それから、1ヵ月か、2ヵ月ぐらいして、 そのマンションに泊まったんですが、

2022-11-29 22:29:16
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたらまた、同じように、 すっごい汗っぽくて、熱っぽい。

2022-11-29 22:29:33
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(いやあ、具合悪いなあ)

2022-11-29 22:29:39
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、頭では分かるんだけど、 からだは動かない。

2022-11-29 22:29:57
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そのうち、不思議なことに、 自分のイビキが、聞こえる。

2022-11-29 22:30:12
稲川淳二 @Junji_Inagawa

やがて、今度は、 心臓がウンウンといってるのが分かる。

2022-11-29 22:30:22
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(ああ、俺もう、死ぬんじゃないか)

2022-11-29 22:30:30
稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、思った瞬間、目が開いた。

2022-11-29 22:30:37
稲川淳二 @Junji_Inagawa

目が開いたら、 真っ赤な天井が見える。

2022-11-29 22:30:52
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(うわあ、いやだなあ、具合悪いなあ。 熱があるからかなあ)

2022-11-29 22:31:05
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と思って、一生懸命、 ジワジワと意識をはっきりさせようとしたんです。

2022-11-29 22:31:19
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