- longfish801
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限界研『現代ミステリとは何か――二〇一〇年代の探偵作家たち』読了。大阪出張からチマチマ読んでいたので、時間がかかってしまったが、「これはどうなんだろう?」というのもあり面白かったです。別側面からの見方というのも、自分の認識の甘さに気付かされることもありますし、ユニークでした。 pic.twitter.com/rPQOVbD5r6
2023-03-19 07:04:50以下、個々で取り上げるのは、未読の作家もいたので少しだけ割合。取り上げられている作家さんを一冊だけ読んだら、ここのツリーに評論家さんの名前と一緒にぶら下げていきたいと思います。 こんなわたしのような読者にも、お薦めと言う形で優しい評論になっておりました。
2023-03-19 07:10:02というわけで気になったところから。 「燃ゆる闘魂――森川智喜論 孔田多紀」。森川氏の三途川シリーズを特殊設定ミステリと重ね合わせて論じているこの章。とある方が、基本、三途川シリーズはチェスタトンの逆説という評を聞いて、「あ、なるほどな」と思っていました。
2023-03-19 07:13:46この章では、「設定」の上の「バトル=コンゲーム」から、ホームズパスティーシュを通り「言語」の世界にまで論じているのが面白かったです。
2023-03-19 07:14:46「推理と想像のエンターテインメント――青崎有吾論 蔓葉信博」。遊ぶにはうってつけ、と主観的意見で申し訳ないですが、後期クイーン問題と著者を結び付けているのが印象的。裏染天馬シリーズでは推理が一度破綻するのが大好物な部分なので、そこを論じてくれているのは嬉しい。
2023-03-19 07:19:01「作家だって一生推してろ――斜線堂有紀論 詩舞澤沙衣」。作家論。斜線堂氏の「売り出し方」についての論。こういう見方も有りだなと思うと同時に、ここまでしないと駄目なのか、という一〇年代の作家論とでも言うかな……。ツイキャスから、なろう系の部分にももう少しページを割いてほしかった。
2023-03-19 07:22:06「あらかじめ壊された探偵たちへ――阿津川辰海論 片上平二郎」と、「連帯と推理――今村昌弘論 琳」は少し長くなるかも。 大好きな作家さん方ですので。
2023-03-19 07:23:17「現代ミステリとは何か 二〇一〇年代の探偵作家たち / 限界研[編] 蔓葉信博[編著]」を読む。批評系の集まりの限界研から、近年のミステリ作家を扱った批評集だね。10人の作家論と本格ミステリゲームなどを集めた本で、近年のミステリが、その作家達が何を描いているかを論じていった一冊って感じで。 pic.twitter.com/UVrxAr4vKB
2023-03-21 19:31:06斜線堂有紀のこれまでの活動と総括的に論じて、推し、アイドルとしての作家って内容の詩舞澤沙衣、陸秋槎から台湾や中国のミステリシーンについての坂嶋竜、あと白井智之を通してSFプロトタイピングならぬミステリプロトタイピングの可能性を開示する宮本道人辺りの文章を興味深く読む。面白い。
2023-03-21 19:31:07あとは全般、近年のミステリ作家の作品から読み解けるであろう、SNS、ポストトゥルース、陰謀論とかと後期クイーン問題の結び付きなどは、個人的には一番ミステリで、今、気になっているところだったりする。探偵の言うことは必ず正しいのか、提示された証拠をどう正しいと判別するのか、とかとか。
2023-03-21 19:31:07氾濫する“嘘”や“真実”や“意図”や“正しさ”と“情報”など、そういったものと探偵、ミステリはいかに対峙するのか、という辺りというか。この辺は最近、ミステリ読んでて面白い部分だったりする。そこを描いたような作品もけっこうみられる感じというか、現実への奇妙な近さがある部分というか。
2023-03-21 19:31:08ミステリ、当然、トリックのスゴさやヤバいロジックの流れや小説の面白さが作品にあるだけでも十分なんだけど、ここで扱われているような作品は、社会の結び付きや今を象徴する物語としての+αの部分でも語れる作品で、おそらくここに選ばれた作家はそれに自覚的なのは超スゴいことだよな、と畏怖する。
2023-03-21 19:31:08『現代ミステリとは何か 二〇一〇年代の探偵作家たち』刊行記念イベントに参加してきました。隙があれば私も何か喋ろうかなと思っていたのですが盛況だったので何も喋ることはありませんでした。なのでその場でチラッと思い浮かんだことをここにメモしておきます genkaiken-event-002.peatix.com
2023-04-02 02:02:04個人的に本書で一番印象に残ったのは、蔓葉サンの青崎有吾論の中の「ユーモアは、自分とは違う相手の信念を許容するためのひとつの方法だ。ユーモアを持てるというのは、心理的な余裕のあらわれにほかならない。殺人事件という悲惨な物語を楽しめるのも、心理的な余裕があればこそだ」という一節です。
2023-04-02 02:05:57ここを読んだ時に、巽昌章サンによる『黒い仏』評における〈ひとびとの掛け合いにみられる、ちぐはぐしたおかしみもまた、すれ違い趣味のあらわれだろう。すれ違いとは、世界の分裂を、古典的なコメディに翻訳する技法に他ならない〉を思い出したのです
2023-04-02 02:11:26私自身はこの十年ほど、ミステリにおける「レトリック」性というのが関心にあって、「ナラトロジー」とか「叙述トリック」とかへの興味もその一環なのですが、それにおける「ユーモア」の位置というのが段々腑に落ちるようになってきました。以前はそうでもなかったのですが
2023-04-02 02:17:29すなわちミステリでユーモアというと「ユーモアミステリ」という言い方のものもあるわけですが、いわゆる「ユーモアミステリ」というのは、私自身は全然面白くないし、世間的にもシリアスなものに比べるとあまり評価が高くないと思う。ところが最近、「ユーモア」について考え直す機会がありました
2023-04-02 02:21:29その前に、なぜ「レトリック」について関心があったかというと、探偵役の話す「推理」というのは、考えの違う相手に対する一種の説得だからです。ロジックがある言説の内容面だとすれば、レトリックはその方法面で、同じ内容を話しても受け入れられ方が違うことがある。ではその違いはなぜなのか……
2023-04-02 02:29:25今日は青崎有吾作品や古野まほろ作品を例に「推理の分担」という話がチョットありましたが、私は「ホームズ役」と「ワトスン役」というのも、ある意味「推理の分担」なのではないか?と思う。それは探偵役の一人称(たとえばハードボイルド)と比べると違いが顕著だと思います
2023-04-02 02:36:48もっと極端なのが叙述トリックものです。叙述トリックものは極端な場合、推理がなくても成立する。分裂した二つの筋を書き分け、最後に合流させるだけで成立するのです。しかし「推理」はそうはいかない。そこには何か二つ(以上)の異なるものを言葉でもって結ぶ翻訳的な作業がある
2023-04-02 02:43:58たとえば今回のように作家論を書いて思うのは、それが非常に翻訳的な作業だということです。誰かがいて、何か重要なことをいっている。それが世間には(場合によっては作者本人にさえも)理解されていない。ならば、自分がそれを拾い集めて説明し直さないとといけないのではないか……
2023-04-02 02:56:00私は長らく「ユーモア」というとコミュニケーション不可能性の方に傾いていたのですが、最近では「ユーモアとは、自分とは信念の違う相手を許容するための方法」のほうに傾いています ミステリ評論でいえば、作家を変に貶すよりもそのいわんとすることを汲み取るほうが書きがいがある、という感じです
2023-04-02 03:09:01改めて昨日の振り替え。限界研トークイベント『テン年代のミステリ、テン年代というミステリ、そしてこれから』へ。思っていた以上に内容の濃いトークが展開。非常に楽しかったです。画像は会場にて購入した『現代ミステリとは何か』と『21世紀探偵小説』。 pic.twitter.com/BDvxrOvl5U
2023-04-02 23:53:18前半出演者4人のトーク、後半が観客からの質疑応答コーナー。3時間でも足りないぐらいの濃さ。規模こそ大きくはないかもしれないが、こういったミステリ批評のイベントにはまだ可能性が眠ってるのでないか……地熱を感じさせてくれる一夜でした。また7月には大ゲストを迎えた第二弾が予定中だとか。
2023-04-03 01:03:14先日の『現代ミステリとは何か』の出版記念イベントでテン年代ミステリ作家の「真面目さ」が議題に上がったが、そもそも作家に「真面目さ」を要求している我々読者(あるいは出版社)にも問題がある気がする。作家論と同じレベルで読者論もまた必要なのでは。
2023-04-03 19:55:56