ルソーを読む

個人的なメモ。作品『仮面ライダー アマゾンズ』から「自由(鷹山仁)・平等(水澤悠)・友愛(駆除班)」のトリレンマ(正義の衝突)というテーマを受け取った人の、雑想保管倉庫。
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一般意志と全体主義

河樹 彬 @e_rewhon

TKFp89-90《ここでフランス国民の凝集性、団結、統合という方針が、排除の論理と表裏一体であることに気づくだろう。こうして政府は、愛国心を高め、国民の意思を一つにするため、これを阻害する反革命容疑者を消してゆくのである。独裁の論理は…民主主義と愛国の論理に内在している》

2023-03-06 06:58:41
河樹 彬 @e_rewhon

フランス革命は独裁に進む。ここでルソーの「一般意思」が登場する。皮肉だ。>twitter.com/e_rewhon/statu…

2023-03-07 07:25:21
河樹 彬 @e_rewhon

TKFp89《革命のさらなる前進のためには、不穏分子は消し去らねばならない。なぜならフランスは「単一・不可分」でなければならないし、議会は市民の意思の総和である一般意思、その具現たる「世論」によって支えられなければならないからである。》

2023-03-06 06:58:41
河樹 彬 @e_rewhon

ここで「皮肉だ」というのは、およそ「引きこもり」的な自然人観(憐れみをもった孤独人たち)をもったルソーが、群衆の狂乱の中で神聖化され、個人主義的色彩が強い「一般意思」論が、全体主義的独裁の中で、神のごとく扱われたという事実だ。

2023-03-07 07:25:21
河樹 彬 @e_rewhon

実は、ルソーのいう「一般意志」は、独裁の論理(全体意志)の対極にある。光文社『社会契約論』(2013年)の解説で、中山元が手際よく纏めているが、《個別意志が対立し、その違い(差)の全体を合わせたところに一般意志が成立する》のであり《一般意志は代表されえない》。

2023-03-07 07:25:21

『社会契約論』を読む

一般意志と「共同の利益」

河樹 彬 @e_rewhon

ルソーの「一般意志」は分かりにくい。それは全体意志ではない。《一般意志は、全体意志とは異なるものであることが多い。一般意志は共同の利益だけを目的とするが、全体意志は私的な利益を目指すものにすぎず、たんに全員の個別意志が一致したにすぎない》(社会契約論、特記しない場合は以下同)。

2023-03-07 23:36:25
河樹 彬 @e_rewhon

全体意志は「一般意志」ではない。たとえば「会議の結果、参加者の私的利益が調整されて、一つの妥協案(一致)に至りました」とする。あるいは「利益分配について、集団としての結論を多数決しました」とする。これらは「一般意志」とは全く関係がない。

2023-03-07 23:36:26
河樹 彬 @e_rewhon

いや、こういうべきか。『たとえどのような集団的な意志決定過程を経たものであっても、(私的な利益を目指す)個別意志は、どこまでいっても個別意志にすぎない』。そう言い切るためにこそ、一般意志という概念はある。そんな気もする。

2023-03-07 23:36:26

「自由であれ」という命令

河樹 彬 @e_rewhon

ルソー曰く、ひたすらに《共同の利益だけを目的とする》意志、それが一般意志である。だが、具体的には? 「共同の利益」という言葉が「共同体の成員が共有するもの」に関わることは察しがつく。そして、この「共同の利益」には、おそらくは共同体や共同体との社会契約それ自体が含まれている。

2023-03-07 23:36:27
河樹 彬 @e_rewhon

我々は「我々であること」を守らねばならない。『開かれた社会とその敵』で、ポパーは《我々は主張しないといけない。寛容の名において、不寛容に寛容であらざる権利を》と語った。こうした「寛容のパラドックス」を想起させる文章が『社会契約論』にも散見される。

2023-03-07 23:36:28
河樹 彬 @e_rewhon

《〔社会〕契約には、一般意志への服従を拒むすべての者は、団体全体によって服従を強制されるという約束が暗黙のうちに含まれるのであり、この約束だけが、ほかのすべての約束に効力を与えることができるのである。ただこれは、各人が自由であるよう強制されるということを意味するにすぎない》。

2023-03-07 23:36:28
河樹 彬 @e_rewhon

一般意志は「自由であれ」と命ずる。カントは《ルソーが私を正してくれた》と語ったが、カントからニーチェに至る「意志」の哲学はここから発する。

2023-03-07 23:36:29
カント 実践理性批判 (岩波文庫)

波多野 精一,宮本 和吉,篠田 英雄

一般意志:社会の多様性・寛容性

河樹 彬 @e_rewhon

ルソーは続ける。《それぞれの市民はこのこと〔自由〕を強制されることで、祖国にすべてを与えるのであり、これによって他人に依存することから保護されるのである》と。一般意志(自由であれという命令)を受け入れることは、共同体への包摂と、他人(への服従)からの開放を意味する。

2023-03-07 23:36:29
河樹 彬 @e_rewhon

人と共同体は直に結ばれる。《多数者がこの契約によって一つの団体に統合された瞬間から、その成員を傷つけることは、その団体を攻撃することにほかならない》。『非国民』を炙りだし、迫害せんとする者こそが非国民にほかならない。『単一性』や『独裁』は、一般意志の劣化のしるしである。

2023-03-07 23:36:30
河樹 彬 @e_rewhon

《意見の違いが少なくなると、意志の一般性も低くなる。ついにはこれらの結社の一つが…他のすべての結社を圧倒した場合には、もはやわずかな数の差異の総和もなくなり、差異は一つだけになる。こうなるともはや一般意志は存在しない。ただ一つの個別意志が、一般意志を圧倒することになる》。

2023-03-07 23:36:31
河樹 彬 @e_rewhon

こう見ていくと、「一般意志」は、社会の多様性・寛容性を表す概念ともいえる。そもそもそれは次のように定義されていた。《これら〔複数〕の個別意志から、過不足分を相殺すると、差の総和が残るが、これが一般意志である》。

2023-03-07 23:36:31
河樹 彬 @e_rewhon

よって、ルソーは《人民が十分な情報をもって議論を尽くし、たがいに前もって根回ししていなければ、わずかな意見の違いが多く集まって、そこに一般意志が生まれる》とも語っている。東浩紀はこれを以下のとおりパラフレーズする。

2023-03-07 23:36:32
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