ルパンの単行本は順序がグチャグチャな箇所が結構あるがなぜ?→当時の漫画業界の仕組みが現在と全然違ったから

なかなか面白い
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有識者による解説・補足

池本剛 @ikemoto06

連載漫画の単行本化に関する、漫画評論家・伊藤剛さんによる、専門的な解説。歴史を区分する指標について。 twitter.com/goito/status/1…

2023-05-30 09:31:33
伊藤 剛 @GoITO

「雑誌連載が単行本化される」という形態が定着し、ページ数を多く使う物語展開が「あたりまえ」になったのが、せいぜいここ50年ほどだということは、意外なくらい忘れられています。

2023-05-30 05:53:17
伊藤 剛 @GoITO

東京工芸大学マンガ学科教授。著書『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』共著書『マンガメディア文化論』『鉱物コレクション入門』など 2012~14年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査員。2019年大英博物館マンガ展学術協力。※ツイートは個人の見解、意見です。 好きなもの:ホームセンター、農産物直売所

伊藤 剛 @GoITO

「雑誌連載が単行本化される」という形態が定着し、ページ数を多く使う物語展開が「あたりまえ」になったのが、せいぜいここ50年ほどだということは、意外なくらい忘れられています。

2023-05-30 05:53:17
伊藤 剛 @GoITO

それだけマンガ連載・単行本という存在が身近なものになっているということですが、このビジネスモデルの成立は、マンガ史のうえでは、マンガ観(マンガのメインストリームをどこだとみるか)の変化として、たいへん大きなものだと考えられます。

2023-05-30 05:54:53
伊藤 剛 @GoITO

私見では、どうもこの時代(1960年代後半から70年代前半)の変化……というより切断は、歴史を区分する指標としては、戦前・戦後よりも大きいんじゃないかとみています。

2023-05-30 05:56:29
伊藤 剛 @GoITO

雑誌連載→単行本という展開が確立し定着していく過程については、こちらの本が詳しいです。 amazon.co.jp/dp/4787234609

2023-05-30 05:59:46

「大人漫画」というジャンル

伊藤 剛 @GoITO

両者の因果関係・相関関係をどうみるかは難しいのですが、いわゆる「大人漫画」の退潮と、雑誌連載・単行本のビジネスモデルの確立は、だいたい同時期であるようです。

2023-05-30 05:57:52
伊藤 剛 @GoITO

マンガ業界の方でも「大人漫画」といったときに、何を指すのかがすっとわからなくなっているようです。いまほぼ身の回りにないんだから、当然といえば当然です。簡素な線で、一コマからはじまり、多くは定型のコマを用い、せいぜい4ページくらいの分量で、ユーモアや笑いを描いたものです。 twitter.com/GoITO/status/1…

2023-05-30 06:09:21
伊藤 剛 @GoITO

かつては、こちらが「漫画」の主流だったんですね。昭和20年代の文章を読むと、マンガを「読物」の中に入れるのはおかしいけれど、コドモ・マンガの世界では読みものなのだ、とか、漫画で続き物をやるのはおかしい、物語を語るなんてのは小説の仕事だ、とかいったことが言われていました。

2023-05-30 06:10:45
伊藤 剛 @GoITO

さしあたり「漫画読本」(文藝春秋新社、1954~70)を例としておきます。 ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%AB…

2023-05-30 06:14:44
リンク Wikipedia 漫画読本 漫画讀本(まんがとくほん)は、かつて存在した日本の漫画雑誌。略称は漫讀(まんとく)。1954年12月から1970年8月まで文藝春秋新社および、後身の文藝春秋が発行していた。 『文藝春秋』は定期的に、小説特集など、読み物専門の「臨時増刊」を刊行していた。あるとき、横山隆一が文藝春秋社長の池島信平をともなって講演旅行をおこなっていた際、「漫画だけの増刊を出したらどうか」とアイデアを出した。池島は早速電話で『文藝春秋』の増刊担当だった田川博一を呼び出し、漫画専門の増刊の出版を指示した。田川はかつて自身が親しんだ 3
伊藤 剛 @GoITO

「かつてはこちらが漫画の主流だった」と書くと、そんなことはない、私はそういった大人漫画は読んできていない……という方が現れそうなんで先回りをしておくと、それはその当時、子供の年齢だったからです。

2023-05-30 06:16:44
伊藤 剛 @GoITO

一方、1970年代に書かれた本などには、上述の「戦後まんが史」のような記述と「大人漫画」を中心とした記述が同居しているものが見受けられます。あるいは米沢嘉博『戦後ギャグマンガ史』には「漫画がまんがになる」(いま手元にないので正確な記述ではありませんが)といった書き方が出てきます。

2023-05-30 06:20:54
伊藤 剛 @GoITO

ここまで、漫画とまんが、マンガの表記を使い分けてきましたが、これはこうした歴史的経緯を踏まえてのことです。いずれにしても、1960年代後半から70年代にかけて、マンガ観も、マンガを語る言説も、主軸が移り変わっていったことがうかがえます。

2023-05-30 06:22:20
二匹大介 @Yta8Ntion1FKvR0

@kingbiscuitSIU @nawokikarasawa 劇画と大人漫画との違いも、並べて考えると面白いと思いつつ...(「大人漫画」がもうかなり人々の意識の外にある昨今ではありますが) twitter.com/ikemoto06/stat…

2023-05-29 19:17:57
池本剛 @ikemoto06

パワァコミックスなんかも将にその口。「ルパン」単行本を出す為に作られたレーベル。 原作(旧)連載時に単行本化されなかったのは…多分…「ルパン」が所謂ところの劇画・青年漫画とは捉えられてなかったから…なんじゃないかなぁと思います。大人漫画的な存在。大人漫画は滅多に単行本化されません。

2023-05-28 18:37:42
池本剛 @ikemoto06

@Yta8Ntion1FKvR0 @kingbiscuitSIU @nawokikarasawa 大人漫画は今ではもう殆ど顧みられなくなってしまいましたが、かつてはむしろメインなジャンルだった感じでしたよね。隔世の念を覚えます。

2023-05-29 20:59:34
組長 @vang_adamczyk

@ikemoto06 @kingbiscuitSIU @Yta8Ntion1FKvR0 @nawokikarasawa 内容としては今でも各所に生き残ってるとは思うんですよ。 絵柄としてはごく一部ですよね。

2023-05-29 21:23:57

「貸本文化」の存在

castroganga @castroganga

50~60年代の日本のマンガ業界では「雑誌マンガ」と対になる概念が「単行本マンガ」で貸本産業が壊滅するまではその言葉は貸本マンガとイコールだった。それぐらい書店流通をメインとする出版社のマンガ単行本出版は稀だった。(続く twitter.com/ikemoto06/stat…

2023-05-29 19:28:32
池本剛 @ikemoto06

そもそも漫画は『あらゆるタイトルが基本的に自動的に単行本化されるもの』…ではなかったんですよね。大昔の漫画は描き下ろしの単行本と、雑誌連載されるものの二種類だけ。連載漫画を単行本に収録して販売するという選択肢は存在してませんでした。描き下ろしの漫画と読み捨ての漫画の二極のみ。

2023-05-28 18:37:38
castroganga @castroganga

写真は「COM」68年2月号の新刊情報。既に講談社や小学館といったメジャー出版社がマンガ単行本レーベルを新設し新市場に参入し始めた時期だがいわゆる「コミックス」と「単行本」が別カテゴリーになっている。(続く pic.twitter.com/IiUEKgek9H

2023-05-29 19:33:54
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castroganga @castroganga

講談社、小学館、少年画報社、朝日ソノラマといった東販や日販などの取次を介して書店流通の書籍を一般書店に供給する出版社のコミックスと主に貸本店を中心に書籍を供給していた小規模出版社の単行本がそれぞれ新しいメディアと前時代のメディアとして並立する過渡期の時代状況が伺える一覧である。

2023-05-29 19:43:18
池本剛 @ikemoto06

@castroganga なるほど…所謂ところのコミックス以前の、描き下ろしの単行本については念頭にありましたが、それとはまた別の、貸本文化については迂闊にも失念していました。そう言えば貸本も大きな潮流でしたね。

2023-05-29 20:51:37