自営業者のお金のやり繰りの苦労に想像力が100％行き届く社員編集者は、実質ゼロじゃないかと思う

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

しんどい仕事だよなぁ…… 始めたばかりの頃、「お金がまわらなくてしんどいです」と担当編集さんに相談したら「その内…だんだん…うまくまわるようになるから…」と言われたかなあ。東京で一人暮らしだったし家賃も物価も高くて大変だったなあ、何でサバイバルできたのかちょと自分でもよう分からん

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

いやな事件に遭って東京の家を引き払い、家賃の安い横浜の端っこに移った頃に、ベテランのすごく腕の良い作画アシスタントさんが「親の介護の都合で遠くまで行かれないから」と近場の新人作家のうちに手伝いに入ってくださったのがこの世で最上の幸運だったかな…

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

「新人作家のふところがきついのは知っている、払える精一杯の金額で良い。こんなもんでしょう？」と業界をよく知るその方が言って下さったのが本当に幸いでした。で、美術教育も受けず漫画の技術もよく知らないまま漫画家になったこの人間は、机に向かうその方の背中に漫画の作画技術を学んだのでした

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

辛口で手厳しい方だったけれど、漫画業界でのサバイバルをたくさん教わりました。ハードな連載の〆切明けに休み無しで2週間で読切44pをネームから描かなければならなかった時に「落ちるんじゃないかな」「落ちません」「…落ちるんじゃないかな」「私が関わった現場で原稿が落ちたことはありません」と

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

ゾンビさながらに「落ちるんじゃないかな」「もうダメじゃないかな」と繰り返す漫画家に「落ちません」「ダメじゃありません」「長年このお仕事をしていますが、私がいる現場で原稿が落ちたことはありません」と言い続けたそのベテランアシスタントさんのおかげで、原稿はどうにか間に合ったのでした

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

「私が関わった漫画家さんは不思議とそのあとに売れる傾向にあります。原稿は落ちません。私は福猫と言われています。自分でも福猫なんじゃないかなと思います」とそのベテランアシスタントさんが仰り続けたことを今も忘れていません。その方が入って下さったことが最初の最上の幸運でした

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

その月は月産80pくらいだったからそのペースを続けられるなら週刊連載（週16×4）もできた訳だけれど、20代の体力でもひとつきで無理！！！！！と思いましたよ。福猫さんがいても無理… 本当に死ぬかと思った、ドロドロ液状の生き物になって描いてた。いつ寝ていたのか何日寝てなかったのかようわからん

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

ドロドロ液状になって描いたから現場の記憶があまり無いんだけれど、毎晩きちんと7時間の睡眠を確保する福猫さんがその時だけは少し睡眠時間を削って付き合ってくださったような気がする。アナログの漫画の現場って人間つきあいが本当に濃い… 福猫さんがうちに居て下さったことを本当に感謝しています

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

私のような未熟者に… 新人作家さんに何か言えることがあるとしたら… どんなにお金がきつくても早い段階でアシスタントさんをお願いすることがもしかすると貴方を助けるかもしれないということかなあ。どんなに作画の早い方でも一人で描くよりはサポートがある方がいいと思います。教わることも多い…

吟鳥子@休憩中 @gintoriko

でも… 自分は借金や原稿料の前借りをしてまで描いたことがないので、借金してまで人件費を出すべきか？と聞かれたら、わからんなあ… どうしても、いざ…となったら個人事業主向けの公庫があるので、そっちに相談かな…

一色登希彦 @ishikitokihiko

商業漫画雑誌の初連載の「お金のキツさ」は、また同じ話かよって思われたり自分で思いそうになっても、やっぱり、誰かが気に留めておいてくれたり、やがて共通認識になる一助になることを願って、経験のある人が何度でも何度でも書いて残しておいたほうが良いように思います 経験した人しかわからない

一色登希彦 @ishikitokihiko

twitter.com/gintoriko/stat…

一色登希彦 @ishikitokihiko

初連載の時って、「創作者としての最大苦労」と一緒に「経営者としての最大苦労」が掛け算でのしかかって来る 創作面で一心同体レベルで頼りになる編集さんは多いと思います 一方でこれは仕方ないことなんだけど、どれだけ作品作りに篤い編集者でもその多くは会社員で、自営業者のお金のやり繰りの苦

一色登希彦 @ishikitokihiko

自営業者のお金のやり繰りの苦労に想像力が100％行き届く社員編集者は、実質ゼロじゃないかと思う　これは現状の業界構造上は仕方ないと思う 僕らだって社員編集者の苦労の本質は想像が及ばないだろうことと同じです そして編集者に担当作家への100％の経済支援を行う権限も与えられていませんしね

一色登希彦 @ishikitokihiko

商業誌連載が決まる瞬間、作家は、手元に最低100万円レベルの貯金が必要です　できれば300万円くらいありたい これは今もきっと変わらんでしょう 資料代や取材費とかストレス発散に遊ぶ金…とかじゃないです 全て、家賃光熱費と、アシスタントさんに払う人件費です 一人頼めば月に最低10〜15万円

一色登希彦 @ishikitokihiko

連載漫画は、連載開始の数ヶ月前から原稿を描き始めます 連載作品にアシさん不要の作家は少ない アシさんの人件費は1人10〜15万／月 2人だと20万〜30万／月 連載開始時には人件費だけで45万〜90万が飛ぶはず 多くて60万円ほどと思われる原稿料が毎月入り始めるのが早くてそのひと月後 計算が合わない

一色登希彦 @ishikitokihiko

その頃には、「はたしてこの雑誌連載が続くのか」という、創作面で胃に穴が開く案件が頭にのしかかる 10話以内に打ち切りになると、単行本が一冊も出ないで終了 幸運にも連載が続くとして、最初の単行本が出るのは連載開始から数ヶ月〜半年後 単行本印税が入るのはそのひと月後です どうすんだよ

一色登希彦 @ishikitokihiko

アシさんへの支払いとか家賃や光熱費の支払いとか、比喩じゃないんですよ、何ヶ月も、本当に電卓叩いて小銭を数えてやり繰りをする その同じ時期に、創作者としてものすごく重要な、「デビューしたばかりの自分がこの先やっていけるかどうか」という精神的没入に全力集中しないといけない

一色登希彦 @ishikitokihiko

僕の見るTLには、世の中から見ると漫画に近い業界だと思われているだろうアニメ業界に居る人の苦労もよく見受けます 「アニメーターに高給を与えると遊ぶからダメ」みたいなの見かけた時は血管が何本か切れましたけど、連載開始時の新人漫画家にお金の心配をさせないで済む業界構造だったなら、と

一色登希彦 @ishikitokihiko

新人漫画家にお金の心配をさせないで済む業界構造だったなら、と思うことは多いです 「キミがダメなら、キミの代わりはいくらでもいるんだよ」というフレーズ それが支払い側の有効な常套句だった時代には、実は受ける側も(俺も)それを励みに、ルサンチマンとかと接続させて有効に駆動もしてました

一色登希彦 @ishikitokihiko

「キミの代わりなんていくらでもいるんだよ」で、言う側も言われる側も、皆であの頃の社会を駆動させていた だから罪の意識というか共犯者認識はじゅうぶんにあります でももうその社会システムは磨耗し尽くして崩壊してる 次に持続できるモデルも無いままです 暗いんじゃないかなあ。。。

一色登希彦 @ishikitokihiko

初の漫画連載始める時点で、手元に100万円とか300万円のバッファがあった人なんて、いったいどれくらい居る？ それが無いと、編集氏などから「いやみんな乗り越えてるんだから」とね その理不尽を、さらに理不尽な努力で乗り越えた人から、さらにそこをサバイブした人だけが、残ってるんですよ twitter.com/ishikitokihiko…

一色登希彦 @ishikitokihiko

でも共犯意識と書きましたけど、 漫画家として海外などに呼ばれて質疑受けた際に、 「日本の漫画のクオリティの高さの理由は？」と問われた際に、やっぱり、 「週刊誌連載みたいな異様な競争と圧をくぐり抜けて創作を続けていることが要因のひとつなのでは？」と述べたのは本音で、だから搾取や貧困が