【三魔女と霊夢】魔法使いの式典

ハチ🐾 @hachisu716

アリ「これ」 タンブラーグラスをなにかで満たし、慣れた手付きでアリスが差し出す。 なにか、黄金色の液体が入っている。 霊夢は鼻先を近づけてくんと匂いを嗅いでみた。 嗅いだことのある匂いだ。 あ。そうか、分かった。 ぱちぱちとまばたきをして、アリスを見る。 ニワトコの花だ。

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アリ「エルダーフラワーのお酒なのよ。少し強いお酒だけれど……霊夢なら飲めるでしょう？　焼酎と同じくらいだから」 うんうん。 霊夢が無言で頷く。 アリ「魔理沙を取られて、退屈そうだったからね。なにか食べられるものがあるところに行きましょうか」

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ちゅうて魔法使いの集会を楽しんでほしいんじゃ

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使い魔を連れてきてもよいというルールはそこまで厳格に律されるものではないので、実はけっこう、霊夢を連れてきた魔理沙のように、 他の魔法使いたちも使い魔に見えるよう魔法をかけて誰かを連れている可能性も大いにある、ということだ。 アリスがいくつかの皿から菓子を取りながら説明する。

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だから、あの猫も、もしかしたら魔法使いについてきた、親しい誰かかもね？ そう言われて見回してみると、静かに付き従っている猫やカラスや狼が、時折あたりを観察している。 みんな自分のように、黙って物珍しいものを見渡してるのかな、などと思うと、人間くさく見えてくるから不思議だ。

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（ただ、話せないからなあ） あなたは人間ですか？　とは訊けない。 アリスや、魔理沙を通して魔法使い同士で訊いてもらってもいいが、そこまでして暴くのは野暮という気がする。 もとは使い魔を伴うというルールなのだから、破っているか、裏をかいているのか、を訊くわけにもいくまい。

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────あ。 と、誰かが連れている狼と目があった。 煤色の毛に、瑠璃色の眼。 行儀よく座って、こちらをじっと見ている。 霊夢は試しに、ちょっとお辞儀をしてみた。 はたから見えるとしたら、軽く首をもたげた三毛、といったところだろうか。

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狼も、頭をもたげた。 会釈を返したように見えた。 ふわり、と煤色の尻尾が揺れる。 ────ふふっ 秘密を共有したようで、なんだかちょっとくすぐったい。 あれは、人間かもね。 狼のそばの魔法使いが、他の魔法使いとの談笑から振り返って、狼に何事か笑いかけ、話しかけている。

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狼は大きな頭を、魔法使いに向けている。 魔法使いは肩をちょっとすくめてみせて、ひょいと向こうを指差した。 そちらへ魔法使いが歩き出すと、狼も静かについてゆく。 あっちへ行こうか、と相談したように見えた。 あれ、魔法がなければどう見えるんだろうなあ、と霊夢は思った。

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腕に留まるカラスに、少し頬を染めてくすぐったそうに笑いかけ、そっと額を寄せている魔女。 皿の上に積み上げられた、とりどりのお菓子に眼を奪われている黒猫。 それを呆れた顔で眺めながら、猫が見上げると、皿ひとつひとつ指差して、なにかを教えている魔法使い。 みんな、人間かなあ。

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考えていたら、菓子がこんもりと彩りとバランスよく盛られた皿を持ってアリスが戻ってきた。 アリ「お待たせ。適当に見繕ってきたけれど、他に食べたいものがあったら云ってね」 ありが……おっと、言えないんだった。 ただ、頷く。 ありがとう。と声に出さずに口を動かした。

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アリスが、にこり、と笑う。 相槌程度ではないほどのにこり。 こういう笑い方をするときは、なにか意図がある。 霊（…………？） ふと、なにかが額に当たった。 いや。なにもないのだけれど、急になにか、うまく感触を言い表せないものが、おでこにやってきた気がしたのだ。 霊（……？？　？）

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なんとなく、おでこが暖かい。ような。 なんだろう。これは。 ……光？ ──眩しい？ ────そうよ。 なにか聞こえた気がした。 けど、なんだか分からない。 急にほかほかしだしたおでこに戸惑って、霊夢が首を傾げていると、アリスが「にこり」を解く。 アリ「……惜しい」

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と言う。 アリ「もうちょっとな気がするんだけどねえ。わたしの声、聞こえた？」 霊夢がゆっくり首を傾げる。 一瞬なにか聞こえたような気もしたけれど、それが声かは分からないままだった。 アリ「思念の会話。魔法も妖力も神通力も、根底は同じだと思うから、霊夢も出来ると思うんだけどね」

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なんだそれ。そんなこと出来たらこわい。 という顔をしていたのか、なにかしら魔女の力で読み取ったのか、アリスが笑う。 アリ「霊夢は最初から怖いわよ」

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そういえば、アリスとパチュリーが無言で顔を見合わせていることがある。 あるいは、パチュリーとレミリアがそうしているのも見たことがある。チェスをしながらなにか盤面の情報だけではないものを、（主にレミリアのほうが）表情を変えて会話していたように見えた。 あれって、もしかしてそうなのか

ハチ🐾 @hachisu716

────そうよ。 また、なにか聞こえた気がしたが、聞こえないふりをした。 わたしは、そんな魔法使いみたいなことはできない。 その領域は、あなたたちのもの。 勝手にやってくれればいいから。

ハチ🐾 @hachisu716

アリ「残念」 アリスが今度は（たぶんね）声に出して、笑う。 アリ「意思疎通できれば便利だと思ったんだけど」 でも、霊夢は顔がおしゃべりだから、このままでもおしゃべりできそうね。 そう言って、霊夢の頬に触れた。

ハチ🐾 @hachisu716

そんなに感情を読みやすい顔をしているのだろうか。 アリ「だって可愛いもの」 とよくわからないことを言ってまた笑う。 わかんない。 と霊夢は口唇の動きだけで返した。 アリスって、よくわかんない。

ハチ🐾 @hachisu716

アリスがまた笑って、両手で霊夢の頬をこねた。 これもはたから見れば、猫をかまっている魔女に見えるのだろうか。 そういえばお酒のグラスを持ってるのはどうなるんだろう。 アリ「なにか考えてる？」 とアリスが訊くので、霊夢の口唇を、区切りながら動かす。

ハチ🐾 @hachisu716

自分のグラスや、菓子を盛った皿を指差しながら、 『これ』 『猫』 自分を指して、 『わたし』 周囲をきょろりと見渡しながら、 『周り』 どう見える？ という意味で、首を傾げる。

ハチ🐾 @hachisu716

霊夢ってよく小首かしげるとかわいいと思いません？ こういうところにちょっと小動物みがあるといいと思います

ハチ🐾 @hachisu716

あと幻想郷というかごの中の小鳥ちゃんなので鳥っぽい仕草いれがち

ハチ🐾 @hachisu716

アリ「わたしには霊夢が霊夢に見えるから推測だけれど。たぶん、お皿もグラスも、霊夢がテーブルにおかない限りは地面にあって、それに口をつけてるように見えるんじゃないかしら。他の使い魔もきっとそうだから」 あ、そうか。と霊夢は気づく。 人間の食べ物を飲み食いしていたら人間かもしれない。

ハチ🐾 @hachisu716

無言でぱちぱちとまばたきしている霊夢に、アリスが微笑む。 アリ「使い魔って、必ずしも動物ではないから、人間の食べ物を食べる人間ではないものもいるわ。動物に見える魔法をかけているんじゃなくて、動物に変身してる人もいるだろうし」