東方翻訳SS「冬来たりなば」

冬を前にした霊夢と魔理沙は、どこかすれ違いを抱えて…。原文はhttp://archiveofourown.org/works/1054527 連続ツイート翻訳完成しました。
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Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

霧雨魔理沙は博霊神社の屋根をかすめて高度を下げ、手水舎前近くに着陸した。箒からぴょんと跳び降りて、手を洗い、ついでに顔も濡らすと、魔理沙は境内の参道を駆けていった。1

2015-08-02 21:19:36
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

博麗霊夢は賽銭箱の前の石段で掃除に没頭している。2

2015-08-02 21:22:53
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

霊夢はいつも神社の境内で一カ所ばかり掃除しているようにしか見えない。いつだったか、それってお賽銭アップの作戦かよ、ってからかったら、霊夢はムッとしつつも、失敗失敗、博麗の巫女としては境内を等しく手をかけなきゃ、って呟いてたっけ。 3

2015-08-02 21:49:33
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

あの時を思い出してニヤニヤしながら、魔里沙は箒を小脇に抱え、腰のエプロンをまさぐりながら霊夢の横をすり抜けると、賽銭箱に五円玉を放り込んだ。4

2015-08-02 21:57:19
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賽銭箱の底に当たった五円玉のチャリンという音に、掃除をしていた霊夢が顔を上げた。5

2015-08-02 21:59:01
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「ご報謝に感謝」と言った霊夢の顔に笑顔は無かった。いつもと違ってひどく真面目な表情。6

2015-08-02 22:06:50
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「よぉ」と片手をあげて魔理沙は挨拶した。霊夢は再び掃除に戻る。7

2015-08-02 22:08:22
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

魔理沙はふうっと嘆息した。「なあ、一休みしてお茶にしようよ。いくら掃除したってそこの石段はそれ以上きれいにはならないぜ」8

2015-08-02 22:47:59
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霊夢は掃除の手を止めて魔理沙を一瞥した。「たった五円でお茶まで要求する気なの?」そしてなぜか霊夢は寂しげな微笑を浮かべた。「大福も欲しいでしょ」 9

2015-08-02 22:52:35
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「大福あるのか?」魔理沙は霊夢のあとについて中に入ろうとしたが、ハッとして足を止めた。「ちょっと待てよ。賽銭箱の中に落ちた音だけでどうして五円玉だってわかった?おかしいぜ」 10

2015-08-03 21:30:03
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

拝殿の奥からは返事は無く、お湯をつぐ音と茶碗がカチャカチャと鳴る音がわずかに聞こえるだけだった。やがて霊夢がお盆を手にして戻ってきて、縁側に座った。そして魔理沙の鼻先にお盆を寄せた。 11

2015-08-03 21:41:53
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「良い香りだぜ。このお茶も紫がくれたのか?」霊夢が頷いた。「エロ妖怪のくせに」と霊夢が鼻で笑う。「お茶の趣味は抜群なのよね」 12

2015-08-03 21:45:19
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

二人はいつものように沈黙の中で縁側に並んで座った。鳥居の向こうに、山々が晩秋の静寂に包まれていて、あたかも全世界が額縁の中に収まっているかのようだった。 13

2015-08-03 21:51:57
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

口いっぱいに大福を頬張っていた魔理沙が、突然沈黙を破った。「なあ、ちょっと訊きたいことがあるんだけど」「ん?」茶をすすりながら霊夢が聞き返す。 14

2015-08-03 21:54:51
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「この間、私の家から急に帰っちゃっただろ。大丈夫なのか?」息を呑んだ霊夢だったが、コクンと頷く。15

2015-08-03 21:59:25
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

魔理沙はもう一口大福にかじりつきながら霊夢を見つめた。「本当に?私たちが魔道書とかアイテムの話に夢中で、霊夢を退屈させちゃったのかなあって、心配になったんでさ」 16

2015-08-03 22:05:40
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

振り向いた霊夢の目がキッと険しくなったが、すぐにため息をついた。霊夢は肘をついて神社の境内を見やった。 17

2015-08-03 22:08:34
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「魔理沙、アリスとはどんな関係なの?」 18

2015-08-03 22:09:27
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

魔理沙は口の動きを止め、大福の残りもいっぺんに飲み込んだので、危うく窒息しかけた。乱暴にお茶をゴクッと飲み干すと、魔理沙が言った。「ずいぶんと露骨な訊き方じゃないか」 19

2015-08-03 22:20:46
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「ごめん」と霊夢。「訊き方を間違えたわ。つまり、何を訊きたいかと言うと…、どうしてアリスと仲良くなったのかってこと」 「そりゃあ、思い起こせば数年前の、あの異変の時にさかのぼって…」20

2015-08-03 22:24:17
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「いや、そうじゃなくて…二人がどんないきさつで知り合って、仲良くなったかは知ってるけど、ただ…その、気になるのよ、魔理沙とアリスにどんな共通点があるのかって。もちろん、魔法のことは別にして」 21

2015-08-03 22:27:38
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

魔理沙が眉をしかめた。「魔法以外で?あのな、私とアリスは魔法のことで話なんかしないんだぜ」 22

2015-08-03 22:30:22
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

「だけどアリスは魔理沙の家にしょっちゅう行くじゃないの」 「神社にだってよく来るだろ?」 霊夢は茶碗に目を落とした。「そんなにしょっちゅうじゃないわよ」 23

2015-08-03 22:32:48
Female Trouble@百合の迷宮 @yuri_no_meikyu

魔理沙は鼻の頭をぽりぽり掻いた。「そりゃあ私だってよくアリスの家に行くさ。なんてったってお隣さんだしな。よく本やアイテムを借りに行くから」ジト目の霊夢「借りに?」「へへ、そりゃ、まあな…」24

2015-08-03 22:37:16
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