三国志こばなし集2023年8月号(上)三国時代編

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貂「どうしたもんか…」 張(あの女侠が董卓暗殺に一躍買った？) 高(董卓様と呂布殿が骨抜きにされた) 貂「てめえら血抜きにしてやるぞ？」 張・高「!?」 呂「赤兎に聞く」 貂「馬に聞いてどうする」 呂「時に利がなくとも赤兎が行けばなんとかなるはずだ！」 貂「愚や愚やこの馬鹿どうしてやろうか…」

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呂布…赤兎が行く方に行くぞ！ 張遼…それにしてもまさか、李傕と郭汜なんぞに我らが敗れるとは… 高順…あの賈詡が煽ったらしい… 赤兎馬…いっそ行かないでやろうかと思ったが、お腹が空いていたのでとりあえず駆けた。

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貂蝉…侍女として董卓に仕えたが、呂布と二股かけまくった挙句に董卓暗殺の突破口をこじ開けたMVP。歌舞音曲に通じた絶世の美女…と思いきや、王允すら制御しかねた女侠だったらしく、本性丸出しになってから呂布ですらビビりまくっている。

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袁術「朕をかっこよくする勅を出す」 紀霊「それは」 袁「不服か？」 紀「かっこよくするということは、陛下」 袁「…」 紀「今はかっこよくないことを意味することを意味しませぬか？」 袁「つまり？」 紀「陛下は既にかっこよいのです」 袁「ふむ」 陳蘭「…」 雷薄「…」 袁「…何をしている？」

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陳「我らで胡麻をすっております、陛下！」 雷「よいしょ〜！」 紀(野郎…) 袁「そなたらは朕が既にかっこよいと思っているよな？」 陳「無論です陛下！」 雷「よいしょ〜！」 紀「陛下！こいつら胡麻をすりながら直言したり、よいしょしたりしていますぞ！」 袁「…何がおかしいか説明せよ」 紀「！」

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紀「胡麻をするには言外の意が…」 陳「もう胡麻すってません！」 雷「陛下を我ら二人で持ち上げましょうぞ！」 袁「おう！」 紀「やめんか！」 袁「さっきからおかしいぞ」 紀「陛下はかっこいいですが」 袁「なんだ？」 紀「綺麗ではございません！」 袁「なに？」 紀「某のように！」 陳「鏡見ろ」

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袁術…その顔でよくも綺麗じゃないとか朕に言えたものだな。 紀霊…結局なんの話か分からなくなった挙句に自爆した。斬れい！と言われずよかったね。 陳蘭…やっぱバカだよなこの陛下。 雷薄…見切りつける時は一緒だからな。

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曹操「鄒氏鄒氏鄒氏鄒氏鄒氏」 曹昂「父上が鄒氏のことしか口にしなくなってしまった」 典韋「鄒氏の事どころか鄒氏しか言わなくなってますが」 曹安民「えらいことになった…」 鄒氏「曹操様❤️」 曹「鄒氏！鄒氏！鄒氏！鄒氏！鄒氏！」 典「油断しすぎでしょうが…」 安「張繍の叔父の嫁だろう？」

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昂「…？」 典「どうされた？」 昂「鄒氏の影が見えぬ」 安「え？」 操「鄒氏〜」 鄒「曹操様〜」 操「鄒氏を吸うし〜」 鄒「曹操様〜」 典「…本当ですな」 安「あの女は化け物なんですか？」 昂「父上の愛馬絶影と、実に相性が悪いと思わないか？」 安「影をも留めぬ絶影に…」 典「影の無い鄒氏」

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鄒「あたしに影は無いよ」 賈詡「君の陰は嫌になるほど知ってるが」 鄒「殺るなら今」 賈「流石」 鄒「んじゃ、曹操を骨抜きの脳なしにしに行くから」 賈「殺すのは我らの仕事だぞ？」 鄒「絶頂した途端、逝っちまうかもよ？」 賈「その時は、君の勝ちだ」 鄒「ろくな死に方しないね！」 賈「さて？」

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鄒氏…曹操をメロメロのケチョンケチョンにしているとんでもない女。 賈詡…彼女と組んだ仕事は上手くいきすぎて嫌になるのさ。 曹昂…私の馬は入念に仕上げておこう。 典韋…胡車児から宴会の依頼だと？ 曹安民…叔父上はこうなるところが良くないのに… 曹操…鄒氏の事で頭一杯になった結末は…

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劉備「すまねえなぁ…雲長…益徳…」 孔明「…」 劉「馬良まで死なせちまったからな、孔明」 孔「…ええ」 劉「俺は一体何人の兵に将軍を死なせて、物資を無駄にしちまったのかな…」 孔「…」 董允「陛下。丞相。呉より使者が参りましてござる」 劉「…やっと来たかね」 孔「こちらまで」 董「は！」

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鄭泉「鄭泉。字を文淵と申します」 劉「ん？」 鄭「どうされた？」 劉「…孫権は俺の手紙にお返事くれねえってかい？」 鄭「曹丕が帝になって、殿下まで帝になられては、お返事を出すのも躊躇われるものというものでして」 劉「んじゃ、孫権も帝になりゃいいじゃねえの」 鄭「今じゃないでしょうなあ」

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劉「…面白え野郎じゃねえの」 鄭「恐れ入ります」 劉「鄭泉よ」 鄭「は！」 劉「おめえは死んだら何になりたい？」 鄭「私は常日頃から酒壺になりたいと願っております」 劉「酒壺？」 鄭「なので死んだ後は陶器職人の家のすぐ近くに埋めるよう、既に仲間に頼んでいます」 劉「何言ってやがるんだい」

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劉備…あの野郎にそっくりな使者だったじゃねえか。 孔明…どこか懐かしい御仁でしたね。 董允…劉備の不穏な問いにドキッとしたが、何事もなくホッとした。 鄭泉…酒が好きすぎる使者。その酒好きたるや、来世は酒壺になる気満々だし、酒プール作って飲みながら潜って遊びたいとか言うレベル。

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孫権「お前の要望に応えて、酒のプールを作ってみた」 鄭泉「鄭泉一番乗り！」 孫「主君より先に入るな！」 鄭「この夢を持ったのは私が先です」 孫「くそっ！飲むな！」 鄭「私だけのうちに飲んでおかないと、殿の付着物が混じってしまいます」 孫「ならば既にお前の付着物が混じり放題ではないか！」

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鄭「いや〜最高な気分です」 孫「全くだ！」 谷利「張昭殿と虞翻殿のいぬ間に…」 周泰「…」 孫「幼平も入れ！」 周「…遠慮します」 孫「いいから！」 周「！！」 鄭「鬼のような顔をされましたぞ！」 周「参ります」 谷(もしやめちゃくちゃ傷にしみてるんじゃないか？) 孫「食らえ！」 周「！！」

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鄭「もしや傷にめちゃくちゃしみておりませぬか、周泰殿？」 周「…ですから…殿を…叩きのめしに…参ります」 孫「!?」 鄭「一抜けた！」 孫「貴様主君を見捨てるつもりか！」 周「一歩一歩…傷の痛みを…心に刻みつけて…参ります」 孫「…酔いと恐怖で動けぬ」 谷「身体張りすぎだろう！周泰殿！」

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孫権…なんだかんだ酔った周泰に叩きのめされた上に、張昭と虞翻にチクられ説教三昧。 鄭泉…一度やったらもういいかな。 周泰…背中の一番深い傷に酒鉄砲喰らって怒り心頭だったとか。 谷利…結局どうすんだよこの後始末。

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曹操「張郃は張良の子孫という噂は本当なのか？」 張郃「そう言われて育ちましたが」 曹「本物だぞ、我が子房」 荀彧「殿は彼が降ってきた時、項羽を去り劉邦に仕えた韓信と評されたそうな」 張「そうでしたな」 曹「蕭何の才はあるか？」 張「私は武官として生涯を全うする所存ゆえ、皆無でしょうな」

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曹「張良の子孫ならば兵法を習ったりはしたのか？」 張「そういう訳ではありませんでしたが、黄色い石は飾ってありました」 荀「え!?」 曹「黄石公の話は本当だったのか！」 張「ただの黄色い石ですよ」 荀「本物だ！」 曹「懐にしまっていい代物なのか、張郃？」 張「私からすればただの石ですので」

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曹「これからさぞ戦場で功を立てるであろうな」 張「もしそうなったとしても、それは私の実力であり、張良の血を引くからでは断固ありませぬ」 荀「そうですね」 張「血筋や家柄だけで己を飾る輩にはうんざりしておりますのでね」 曹「…そう言うな、張郃」 荀「それしか拠り所がない者もいるから…」

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曹操…お前が言うととてつもない実感がこもっているように聞こえるな。 荀彧…頼もしい男に見えます。 張郃…袁紹の無茶振りにほとほと愛想をつかせて降ってきたのが官渡の分水嶺になったほどの男。現場でバリバリ働きたいタイプ。

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曹丕「益州の飯は味が薄いのか？」 孟達「蜜を塗ったくって肉を食べてます」 曹「美味いのか、それは？」 孟「塩が専売なもので、使い放題とはいかず」 曹「蜜は使い放題なのか？」 孟「特に制限はありませんでしたね」 曹「それは不可思議な」 孟「甘い肉を食べるというのが私には合わなくてですね」

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曹「山椒は？」 孟「蜜とは合いますまい」 曹「確かに」 孟「今振り返ると、蜀の飯は味が単調でしたね」 曹「それは？」 孟「甘くする蜜！しょっぱくする塩！痺れさせる山椒！だけなんです」 曹「なるほど」 孟「蜀漢という国の不器用さが現れていると思いませぬか？」 曹「言わんとすることは分かる」