三国志こばなし集 2023年5月号

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹仁「牛金」 牛金「はい！」 曹「周瑜が数万の兵で来ることは知っているな」 牛「…それは、江陵の誰もが」 曹「某は周瑜の先鋒六千との報を得た」 牛「六千ですか」 曹「牛金」 牛「はい」 曹「お前と共に生きて死ぬ事ができる兵は、何人いる？」 牛「え？」 曹「…」 牛「…三百人がせいぜいです」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹「ならばお前の三百人で、周瑜の先鋒を相手にせよ！」 牛「なんと！」 曹「牛金！」 牛「…」 曹「お前は某を、どこまで信じられるか？」 牛「…」 曹「…」 牛「…私たち三百人を、無駄死にさせる策ではないのですね？」 曹「無論！」 牛「じゃあもう聞きません！曹仁殿！」 曹「礼を言う！牛金！」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

陳矯「周瑜の先鋒六千か…」 曹「牛金！」 牛「は！」 曹「お前に三百の軍を授ける」 牛「はい！」 曹「周瑜の先鋒を攻めよ！」 陳「は!?」 牛「承知！」 陳「曹仁殿！あなた何を言っているのですか！」 曹「黙れ、陳矯」 牛「行ってきます！」 曹「うむ」 陳「何を命じておられるのです！」 曹「…」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

牛金「勝負だ周瑜！」 周瑜「…正気なのか、あいつは」 呂蒙「すぐに包囲殲滅しましょう」 陳「みるみる包囲されていますよ！曹仁殿！」 曹「馬を引け！」 陳「何考えてるんです!?」 曹「牛金を寡兵で出撃させた責務を果たす」 陳「もう間に合わないです！」 曹「続け！我が輩よ！」 陳「曹仁殿！」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

牛「みんな耐えろ！耐えれば耐えるだけ、生き残れるからな！」 曹「牛金！！」 牛「お出ましだ！」 曹「某の部下に何をしてくれた！」 呉兵「!?」 周「何が起きているのだ、呂蒙！」 呂「まるで分かりません！」 曹「引けい！」 牛「承知！」 兵「…くそ！」 曹「今助けに行くぞ！」 牛「曹仁殿!?」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹「一兵たりとも某の部下を殺すことは許さぬ！」 呉「」 兵「ありがとうございます！曹仁様！」 周「…あれは、もしや曹仁だったのか？」 呂「…そうとしか、考えられませぬ」 曹「曹子孝。只今帰還した！」 陳「曹仁殿…」 曹「…」 陳「あなたは、天人です」 曹「…」 牛「大将を讃えろ！」 ！！

三国志こばなし集 @omikanboy3594

牛金「生きているのが、信じられない…」 陳橋「我らに種明かしをお願いしたいのですが…」 曹仁「うむ」 牛「…」 曹「丞相を赤壁で完膚なきまでに破った周瑜との防衛戦だ」 陳「…」 曹「某も含む我が軍の誰もが、周瑜への畏怖や恐怖を持っていても、おかしくないだろう」 牛「…たしかに」 陳「…」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹「だからこそ、江陵を守るにあたり、周瑜への畏怖や恐怖を払拭する必要があったのだ」 陳「そのためのあなた自身による無謀な突撃ですか？」 曹「無謀だとは思わなかった」 陳「…」 曹「事前に牛金には、私ではなく牛金と生死を共にできる兵の数を聞いた」 牛「その数が三百でしたが…」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹「数の多寡ではない。あの時は、お前と心を一つにできる兵を求めていた」 牛「なるほど…」 陳「…その辺りの機微が、私には分からぬのですが」 曹「牛金を寡兵で出陣させ、周瑜らの先鋒にあえて包囲させた」 牛「しかし俺の選んだ三百を、すぐに殲滅できる訳ありません！」 陳「確かにそうでした」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹「そして包囲された牛金らを、某自身の戦働きで救出することで、周瑜恐るまじ、と兵全員に思わせたのだ」 陳「そう言われたら、私も既にそう思っておりますよ、曹仁殿！」 曹「お前ですらそう思ったのなら、戦に出る兵は尚のことというわけだ」 陳「お見それしました。天人様」 曹「何を言う、陳矯」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

陳「以後私はあなたをそう呼ばせていただきますぞ！」 曹「それはやめてくれ…」 牛「これがあなたの戦のやり方なのですね、曹仁殿！」 曹「然り！」 牛「俺を抜擢していただいたことに、御礼申し上げます！」 周瑜「我らは完全に出鼻を挫かれてしまったな…」 呂蒙「厳しい包囲戦になりそうです…」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

曹仁…魏軍一の武術と馬術で縦横無尽の大暴れぶり。 牛金…部下一番の暴れ者。犠牲もほんの僅かだなんて、信じられねえよ。 陳矯…私の目に焼き付けましたぞ、天人様！ 周瑜…一年に及ぶ苛烈な攻城戦の挙句に、思わぬ負傷をすることとなる。 呂蒙…正面からぶつかる魏軍は、なんと手強いのだろうか…

三国志こばなし集 @omikanboy3594

孔明「…殿。この手紙をお読みいただけませぬか」 劉備「雲長からじゃねえの！」 孔「…」 劉「…あいつこういうところあんだよな！」 孔「…可愛いところありますね」 劉「お前はいい感じの返事を書いておいてくれ。俺は孟起の所に行ってくるぜ」 孔「かしこまりました」 劉「孟起！」 馬超「はい」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

劉「ちょっと髭剃らせてくれ」 馬「…なぜ？」 劉「なぜでもだ」 馬「髭剃りとは名目で、私を誅殺」 劉「しねえよ！髭剃りだよ！」 馬「…」 孔「書けました」 劉「俺も準備できたぜ」 孔「馬超の所で何をしていたのです？」 劉「内緒だ」 孔「この文面はいかがです？」 劉「…バッチリだぜ、孔明！」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

関羽「孔明から返事が？」 趙累「こちらに」 関「…」 関平「父上？」 羽「やはり馬超も私の相手にならぬとの返事が来た！」 廖化(すごく嬉しそう) 羽「兄者から馬超の髭も届いたが、私の美髯と比べれば、長さも質もまるで敵わぬ！」 趙(そりゃそうですよ) 羽「皆に見せびらかしてくる！」 平(父上…)

三国志こばなし集 @omikanboy3594

関羽…孔明のお返事と劉備から届いた馬超の髭が嬉しすぎて、部下や民に見せびらかした。 趙累…都督。関羽をアシストするしっかり者。やっぱりちょろいところあるよな、関羽殿。 関平…父上らしいといえば、そうですが。 廖化…古参の部下。俺も髭伸ばしてみようかな。

三国志こばなし集 @omikanboy3594

劉備…案の定有頂天で手紙を見せびらかしてたとさ。 孔明…日頃の厳格さとの落差が大きい人ですね。 馬超…拙者の髭で一体何をするおつもりだったのか…

三国志こばなし集 @omikanboy3594

夏侯惇「孟徳！」 曹操「いかん！」 夏「逃さぬ！」」 曹「！」 夏「くそっ！また死角に！」 曹「あばよ！」 夏「待て！」 夏「…隻眼になってから孟徳に逃げられることが増えてしまってな」 夏侯淵「そりゃ仕方ないでしょうて」 惇「なんとか俺の死角を補う手段はないものか」 荀彧「そうですな…」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

司馬朗「はじめまして。司馬朗と申します」 惇「彼が俺の死角を補う技を持っているのか？」 荀「はい」 司「左眼の死角ですな」 惇「ああ」 司「首を左にどれだけ回せますか？」 惇「…これくらいだが」 司「私は」 惇「!?」 司「いかがです？」 荀「夏侯惇殿もこの技を会得すれば」 惇「できるか！」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

司「司馬家に伝わる首のストレッチを伝授いたしましょう」 惇「それで出来るようになるのか？」 司「今まで私は普通の首の皆様を、百五十度まで回せた実績が」 惇「…やってみるか」 惇「孟徳！」 曹「捕まるものか！」 惇「！」 曹「!?」 惇「俺にもう、死角はない」 曹「その首…」 司「お見事！」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

夏侯惇…利き首が左なのも幸いし、司馬朗による厳しい修行を乗り越え、見事隻眼の死角を補うことができた。 司馬朗…なぜか司馬家の仲達以外の弟たちはこの修行を嫌がります。 夏侯淵…俺はできなくていいや。 荀彧…司馬朗を紹介したのは私ですが、やっぱキモいですね。 曹操…キモイぞ元譲！

三国志こばなし集 @omikanboy3594

孫尚香「義姉様！」 歩練師「尚香様！」 孫権「おのれ、公瑾党！」 張昭「殿の日頃の言動を改める大チャンスではないですか」 孫「…ややっ！あれは尚香に練師！」 張「仲がよろしいようで」 孫「腹癒せにいたずらしてやる！」 張(…やることが幼児だ) 孫「水鉄砲を持ってきてやる！」 張「…おや？」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

尚「！」 歩「！」 尚「突きがキレてるわ！義姉様！」 歩「尚香様の蹴りも鋭い！」 張「…」 尚「！」 歩「！」 張「すまぬ、お二方」 尚「張昭殿？」 歩「どうされたの？」 張「…いつの間にそこまでの武術を」 歩「尚香様のおかげですわ」 張「お二人に、ご注進がございまする」 尚「…兄上が？」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

権「水鉄砲で女どもに奇襲をかけるぞ、義封！」 朱然「なぜ私まで…」 権「見つかったのが悪い」 権「誰もいないぞ？」 朱「じゃあ帰っていいですか？」 権「待て。樹に字が書いてある…」 朱(あ、マズい) 権「孫権この樹の下にて死せん!?」 尚「全軍一斉射撃！」 歩「殿を針鼠にしてやりなさい！」

三国志こばなし集 @omikanboy3594

孫尚香…孫子の末裔が孫子の策に引っかかってんじゃないわよ！ 歩練師…あなたが孫子の末裔ということで良いのでは？ 張昭…尚香率いる婦女子隊の戦闘力にビビった。 孫権…遂に小娘たちに名を成さしめてしまったか… 朱然…とんだとバッチリ。