- rouillewrite
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「でも、ずっとダメで。 何も守れなくて、………夜を乗り越えたのだって、結局は結果論で…………」
2023-08-27 21:24:14その言葉の端は、段々と小さくなっていく。 焔楽と話した時も、彼の話に素直に頷けなかった。 この状況を作り出した黒幕───自分自身を、そんなふうに思われるだなんて思ってもみなくて。 許さなくていい、とただそれだけしか口に出来なかった。
2023-08-27 21:24:53聖遥はその瞳を、舞台下にいる15人に向けた。 自分のせいで苦しめた人達。 お膳立てだなんてとんでもない。
2023-08-27 21:25:51自分のエゴで成り立ったこの世界に巻き込んで、傷つけられていっただけだ。 なのに助けに来た? 夢寐に何を聞かされた? …あの悪趣味な男のことだから、選択肢でも用意したのだろうけれど。
2023-08-27 21:27:30「見せたくない現実見せて、何人が嫌な思いをしました? 大切な人のために、何人が言い争いましたか? 気が狂うような現実から目を背けてたのに、無理やり向き合わせてしまったのはオレのせいです。」
2023-08-27 21:29:57「……責任だとか、そんな話じゃなくて……オレが向き合わせるようにしていたのはただの償いです。 オレが、弱く無ければこんな事にはならなかったのに」
2023-08-27 21:30:22「そんなこと、」と誰かが口を挟む。 確かに聖遥が望んでできた夢の世界かもしれない。傷ついたこともあった。 …けれど彼がそれを見て、決して自分たちが傷つくのを望んでいた訳では無いのは、今の表情を見ていても想像に難くないのに。 その誰かが口を閉ざすと、聖遥は続ける。
2023-08-27 21:31:39「同級生や、先輩がしにかける場面を見て苦しくない訳が無いでしょう。 首を絞められてたとこを見た時も、同士討ちの時も、……先輩が、しんだ時も。 …ずっとずっと嫌だった。」
2023-08-27 21:32:56「だって、それは夢で歪んだせいで、そのせいで誰かが苦しい思いをしたってことだろ……!! 本当は違う事なのに、夢(オレ)のせいでどんどん境目が分からなくなって、でも、見てるしか出来ない時もあって……」
2023-08-27 21:34:01「……………それでも、オレをどうこうしたいって言うなら………それはお人好しを通り越してます。 ……怖いです。 全部を知った上でも、オレを助けたいっていうのは………何も、良くない」
2023-08-27 21:35:02言葉が鍵盤の音と共に沈む。 いつの間にか立ち上がっていて、赤い目元を少しだけ拭い、聖遥は俯いた。
2023-08-27 21:35:42今まで何も言えなくて、 全て背負ってきたことが、 自分を助けに来ただなんて言う彼らの言葉を拒絶していた。
2023-08-27 21:36:35視線を下にしたまま、何も言わずにそのまま黙り込んでしまった彼に近づくのは…先程「助ける」と豪語した火咲だった。
2023-08-27 21:37:14そうして、舞台下から聖遥の視線が届く位置まで来ると、彼はすぅっと息を吸ってからキッと睨みつける。
2023-08-27 21:38:00「────ッ大馬鹿野郎が!! 弱い?お前のせい?ふざけんな!お前は何も悪いことなんてしてねぇだろうが!それを置いていく?できる訳ねぇし、したくねえに決まってんだろ!!」
2023-08-27 21:38:34体育館内を包むようなビリビリとした大声。火がついたように叫ぶ彼の言葉に、聖遥も顔を上げた。 正面の火咲は、そのままふーっと息を吐いて、下で握った拳に力を入れて震えている。 その震えは、怒りか、悲しさか。 それとも。
2023-08-27 21:39:05「…確かに、ここにいる奴のうち、それによって傷付いたり、葛藤したりしただろうさ。危険なこともあった。」
2023-08-27 21:39:48「でも、俺は目を逸らし続けた現実に向き合って、そのお陰でちゃんと母さんの思い出が、苦しいものじゃなくなった。 お前のお陰で、過去に巣食う後悔から救われたんだ。 きっとみんな傷付いて苦しんで、それでも救われたと思ってる。」
2023-08-27 21:40:12その言葉に、14人も前を向いていた。 結果論かもしれない。 過程で傷ついたかもしれない。 それでも、それをこの夢を作り出した聖遥のせいだなんて微塵も思っていやしない。 それを体現するように、火咲は一歩ずつ親友へと近づいていく。
2023-08-27 21:40:47「それに、お前はお前で苦しんで、もがいてたんだろ。 人に言えず、それこそ一人で悩みを抱えて突っ走り続けた。 それがどれだけ辛いことかよく分かるからこそ、一人にしたくない。」
2023-08-27 21:41:29「お前の選択で誰かを傷付けたこと、 危険に晒してしまったことが何も良くないって言うなら、 太陽に『行動しなければその現状を死ぬまでそのままだ』って現実を突きつけて、屋上に突き放した俺も同罪だ。」
2023-08-27 21:42:03「─────だから、もしそれでもお前のことを見捨てろっていうなら俺も一緒に行く、 絶対にお前を離さない。」 pic.twitter.com/pTTRs4VNpy
2023-08-27 21:42:40