ストレイトロード:ルート140(73周目~ゴール)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は3601~3652+おまけ。なお各話の内容は特に連続していません。 これまでのまとめは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 元の短編の掲載場所&イベント参加情報: http://www.gekkado.jp/ 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

斜面に空いた穴の下には機械を造るラインがあった。昔の人間が荒らした山肌を怪物が崩して建物が埋まったようだ。「風が通らない」藍の力では中を探れないらしい。空洞をシートで塞いで一旦戻り、古い地図を調べると、自動車の工場があったと判明した。「この車を直す部品あるかな」答えにくい質問だ。

2023-08-11 19:25:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3612。自動車。 掘り出したとして使えるか。電気で動くものと燃料で走るものとは勝手が違う。 それ以前に、勝手な持ち出しはきっとよくない。

2023-08-11 19:25:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

建物の外壁一面に色とりどりのタイルが貼り付けられていた。遠くに立てば名画を再現していると判る。近くに寄ってよく見ると、随所に柄の入った破片が使われていた。見覚えがあった。「もしかして」藍の顔が曇った。話しかけたが返事はない。家主に贈った皿を全部割ったのか確かめに行こうとしている。

2023-08-12 19:03:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3613。随所。

2023-08-12 19:03:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

位置情報を頼りに着いた場所は更地になっていた。藍が現場の写真を依頼人に送ると電話が来た。「これのどこが重大な脆弱性?」『今通話してるアプリの開発者がそこに住んでるはずなんだけど』相手はシステムのバグを探して指摘する仕事をしているという。報告先が街ごと消えたのでは確かに困るだろう。

2023-08-13 19:39:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3614。脆弱性。 コンピュータ関係の用語だけれど、そのうち対象範囲が広がるかも。

2023-08-13 19:39:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ふっくらしたパンケーキに南国的な色合いのソースがかかると、甘い香りが漂った。藍は皿の前で真剣に考えている。「これ何のフルーツ?」「当ててみて」料理人は悩む様子を楽しんでいる。魔女の好物をどこで聞きつけたのか。厨房に隠された答えは私さえ知らない名前の果実か、予想もしないブレンドか。

2023-08-14 19:04:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3615。ソース。 sauce(調味料の)とsource(情報の)を両方添えて。

2023-08-14 19:04:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

集落の住民は山小屋の主について淡泊な人としか言わなかった。出て行く前から交流はなかったようだ。「ここに住んでいたの」「行く当てがなかったのでは」「それって」何か言いかけた藍を遮り、昨夜の写真を見せた。車のタイヤを射った狩人は手製の弓を携えている。「確かめに行きますか」「もちろん」

2023-08-15 19:37:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3616。淡白。 「執着」の対義語。

2023-08-15 19:37:11
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

坑道から運び出した少年は呼吸が弱っていた。「何かの中毒かもしれない」医師が呟くと少年の両親が顔色を変えた。私の肩を強く掴む手は叩きつけたい言葉を我慢する代わりの主張だろう。ソファに座る藍は無言で震えている。彼女の風を呼ぶ力がなければ脱出自体が叶わなかったが、その仮定に意味はない。

2023-08-16 19:14:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3617。中毒。 空気だって時と場所によっては牙を剥く。

2023-08-16 19:14:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

避難所の一角に子供達が段ボールを集めて立派な城を建造した。通りかかる大人は黙認していたが、一人だけ口を出した。「それ以上高く積んだら踏み潰されるよ」聞いた藍が吹き出した。「貴女も言われた経験が?」「もちろん」藍にとっては生まれる前に広まった常識なのだ。育った環境の違いを痛感した。

2023-08-17 19:02:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3618。痛感。 屋内であれば大型生物に踏まれはしないけど、てっぺんを取られることはあるかもしれない。猫とかに。

2023-08-17 19:02:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

能力を持つ故に隔離されていた子供達を救出したら、世話係の青年もついてきた。藍は敵だと警戒したが、当の子供に庇われた。「いい先生だよ」この後も超常の申し子達と共に暮らし、制御と知識と世渡りを教え、指導者として長年活躍した彼は後に鉄人と評された。鋼の意志と忍耐力の片鱗は確かにあった。

2023-08-18 19:08:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3619。鉄人。 特別な能力がなくても、それを補う何かを得ることはできる。適切な方向に努力すれば。

2023-08-18 19:08:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

写真立ての中で幼い藍と両親の笑顔が輝いていた。白い砂浜を走り回った記憶は少しあると彼女は言う。「クルーズはずっと海の上でしょ。飽きた頃に着いた陸地だから余計に楽しかったのよ」飛行機を失った時代に常夏の島へ行く手段は船に限られる。私には到底手が届かない。「そのうち連れてってあげる」

2023-08-19 19:06:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3620。常夏。

2023-08-19 19:06:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「長い夏休みだと思うことにしたよ」青年は力なく笑った。怪物の巨大な足から守った書物を図書館に返すべく戻ったが、そこには崩れた煉瓦の山しかない。外に出された彼に藍は本の内容を尋ねた。「ずっと借りておく本ってそんなに面白いの」「聞く?」数学の難解な理論をさわりだけ聞いた藍は降参した。

2023-08-20 19:14:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3621。夏休み。 自由に使える時間があれば。

2023-08-20 19:14:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

屋敷の子供達は両親の様子がおかしいと言う。寝室の会話を盗み聞きする寸前に現場を押さえ、たしなめようとした。「変な小道具まで作って、忍者にでもなるつもり?」「それだ!」藍の一言で彼らの何かに火がついた。翌朝、謎の修行に励む子供達を窓の外に見た。どこまで本気かは藍にも掴めないらしい。

2023-08-21 18:54:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3622。忍者。 使っていそうで実はまだだった単語。 違うたとえを使っていれば結果も変わったかも。エージェントとか。

2023-08-21 18:54:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「昨日見たときは白かったのに!」門から尖塔まで真っ赤に染まった城壁を見上げた藍が悲鳴を上げた。近づいて確かめたが光の仕掛けではなく塗料の着色だった。晴れていたとはいえ一晩にどれほど動員したのか。ボタン一つで塗り潰しができるお絵描きソフトとは訳が違う。「あのオバサン趣味悪すぎよ!」

2023-08-22 18:54:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3622。塗り潰し。 色だけではなく、一夜でやらせることじゃないって意味で、怖い人。 もし人々が自発的にやってたならもっと怖い。

2023-08-22 18:54:59
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

潜んだ怪物を誘い出そうと獲物の匂いと開けた場所を用意した。サンドイッチを食べながら待つという藍の作戦はピクニックの口実だろうか。疑いつつ箱を開けた途端、四方から猫が集まってきた。「ついでに邪魔者の駆除も、ってこれのこと?」藍が電話で専門家を呼び、家を失った猫の保護作戦が始まった。

2023-08-23 19:42:55
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