元『SFマガジン』編集長・今岡清氏の「昔話」シリーズ

まとめました。
31
今岡清 @k_imaoka

江戸川乱歩の由来はエドガー・アラン・ポーなのは有名だけれど、私の知ってる話もちょっと。 翻訳者団精二は荒俣宏がロード・ダンセーニからとったもの。浅倉久志はアーサー・C・クラークからとったもので、浅倉さんがその話をしたらクラークは「ロイヤリティを払え」と言った。もちろんギャグだよ。

2023-07-21 13:42:47
今岡清 @k_imaoka

どうでもいい話だけど、あろうことかSFマガジンの競合誌の奇想天外に私が連載したことがあるんだけど、その時の筆名は百足連太郎。SFマガジンでは三井継ってのも使ったことあるけど、これはピンク・レディーのミーとケイからね。

2023-07-21 13:42:48
今岡清 @k_imaoka

SF関係でまた思い出したのが柴野拓美さんの筆名の小隅黎がcosmic rayだったこと。ほかにもあったと思うけど、なにしろSF界を離れてもう30年もたつからなあ、いろんなことが忘却の彼方だ。

2023-07-21 23:15:50
今岡清 @k_imaoka

荒俣や浅倉さんの筆名の話が思いがけず反響があったので、昔話をぼちぼちとやってみるか。そういうことのためにnoteを始めてみたんだけど、まとまった話を書くのはめんどくさいので結局止まっちゃったし、Twitterで思い出したことをぽつりぽつり呟くのがいいのかもしれない。

2023-07-24 10:53:13
今岡清 @k_imaoka

昔話その1 早川書房には新卒で入ったんじゃなかった。日刊自動車新聞て業界紙に入社した後、労働争議で人手が足りなくなったというので伊藤典夫の紹介で転職した。だから入社試験も面接だけだったな。当時の社屋は木造2階建クーラーなし。深夜ひとりで残業するときはブリーフだけの裸で仕事してた。

2023-07-24 11:12:35
今岡清 @k_imaoka

昔話2 74年のSFコンテストに栗本薫が本名で応募してたんだけど下読みの段階で落とされた。後で私が発見したその作品「カローンの蜘蛛」は光風社から刊行されることになって落とした下読み委員は誰かということになったけどわからず仕舞い。たぶんあいつじゃないかって話はあったけど言わぬが花だな。

2023-07-25 15:34:42
今岡清 @k_imaoka

昔話3 まだ学生の頃、喫茶店のSFファンの集まりで話をしていたら胃穿孔から腹膜炎になり入院という事件があった。その時に苦悶に喘ぎながら「胃穿孔は1回ならまだいいけど……」と言ったという話があったがそれは違う。それを言ったのはその後のSF大会の合宿でのことだった。(続く)

2023-07-26 18:57:45
今岡清 @k_imaoka

伊藤典夫に「胃穿孔は1回ならまだいいけど10回やるといまんこうになっちゃう」と言ったら爆笑どころか畳みの上を転げ回るほど受けた。いま考えるとなんであんなに受けたのかよくわからないけど、タイミングってものがあるんだろうな。

2023-07-26 18:57:46
今岡清 @k_imaoka

昔話4 昔、渋谷の雀荘に作家・翻訳家やファンが集まってよく麻雀をしてた。そして雀荘が閉店になると中野の伊藤宅に行って続きをやるってこともよくあったんだけど、ある晩こんなことがあった。平井和正、伊藤典夫、横田順彌、私の4人で卓を囲んでたら平井さんがぼろ負けしてしまった。(続く)

2023-07-27 18:00:57
今岡清 @k_imaoka

平井さんは負けがこんでいくうちにだんだん機嫌が悪くなってきて、突然「俺は帰る」と言ってタクシーで帰っちゃった。残された3人は呆然。その後どうなったかは忘れてしまったけど。

2023-07-27 18:00:58
今岡清 @k_imaoka

昔話5 ひと頃、矢野徹さんのお宅に浅倉久志、伊藤典夫といった翻訳家が集まって勉強会をやっていた。たしかそこで出た話だったんだと思うが、深町真理子さんがstraingerを「ゆきずりの人」と訳したのは凄いと伊藤さんが言ってた。訳した深町さんも凄いけど、それに着目する伊藤さんも凄いと思った。

2023-07-28 14:21:07
今岡清 @k_imaoka

昔話6 ダルコ・スーヴィンという評論家が日本に滞在してたことがあって歌舞伎座に連れてったこともあった。その時に女性の漫画家さんも一緒だったんだけど件の人物、すっかりその漫画家さんに熱を上げてしまって電話で東欧訛りの聞きづらい英語で仕事中に恋愛相談をしてくるのには往生したなあ。

2023-07-29 13:18:50
今岡清 @k_imaoka

昔話7 こんなひげ剃りセットを使ってるんだけど、これ見るたびにハインラインのことを思い出す。北極海航路の船で横浜港に来たハインラインを迎えにいったら部屋まで案内してくれてたんだけど、ひげ剃りのホルダーをもう30年も使い続けてるって自慢してた。でも、私のもそろそろそのくらいになるかな。 pic.twitter.com/QgWolJtj3F

2023-07-30 11:42:57
拡大
今岡清 @k_imaoka

昔話8 かつての早川書房は給料も安けりゃ原稿料も安い代わりに口も出さないという会社だった。そうした社風の中で生島治郎、都筑道夫、福島正実などが活躍してた。でも、私が入社した頃からだんだんふつうの会社になっていってバイトも表立っては出来なくなった。(続く)

2023-07-31 21:36:57
今岡清 @k_imaoka

バイトが表立って出来ないって当たり前のことではあるけど、私が入社した頃は早川の編集者はバイトするもんだと思われてて、どこそこで翻訳やりませんかとか仕事を紹介されたりもしたものだった。昔は会社への帰属意識が薄弱でミステリやSF業界のメンバーという感覚だったんだろうな。

2023-07-31 21:36:57
今岡清 @k_imaoka

昔話9 銀座にまり花という小さなバーがあって、黒鉄ヒロシ、上村一夫、宇能鴻一郎なんていう錚々たる面々が常連だった。上村さんが年季が入って柔らかくなったぺんだこを触らせてくれたことがあったな。星新一さんも戸越銀座から電車で通っていて定期を持ったらと誰かに言われてたのを思い出した。

2023-08-01 15:38:42
今岡清 @k_imaoka

私の昔話シリーズ、なにぶんずいぶん昔のことなので間違いがあるかもしれない。もしも間違えてたらご指摘をお願いします。

2023-08-01 15:42:00
今岡清 @k_imaoka

昔話10 消し忘れていた玄関灯はまさに昼行灯。そういえば、2ちゃんで私は昼行灯と呼ばれ私の奥さんの栗本薫は温帯と呼ばれてあしざまに罵られてた。でも私も知らないような話まで拾い出してて、腹が立つどころか感心してたものだった。あそこまで詳しいとはよほど熱心なファンがいたんだろうな。 pic.twitter.com/q1n0LvqaRs

2023-08-02 14:18:53
拡大
今岡清 @k_imaoka

昔話11 そのまま書いちゃまずいことがけっこうある。さる作家の浮気相手だった銀座のクラブのホステスはほかの男と出来たことが作家に激怒されて店をやめたとか、とある作家がファンと出来た話とか、誰それがマネージャーと駆け落ちしたとか……こういうのを墓場まで持っていく話っていうんだろうな。

2023-08-03 12:53:42
今岡清 @k_imaoka

昔話12 サイバーパンクの旗手と話題になっていたウィリアム・ギブスンが来日した時、一緒に道を歩いてたら電話ボックスがあると中に入ってチラシを集めてた。ひと頃風俗のチラシが電話ボックスにいっぱい入ってたけど、なにしてるのって聞いたらcultual anthropologyの調査だという返事。そうかぁ!

2023-08-04 18:40:14
今岡清 @k_imaoka

昔話13 たしか42歳頃だったかな、打合せで表参道を歩いてたらピアスの穴開けますって看板があるのを見てふらっと入って開けちゃった。会社に戻ったらそれを見た当時の部下の阿部君に「身体髪膚之を父母に受く、あえて毀傷せざるは孝の始なり」と言われたのに仰天。ピアスはいまはもうしてないけど。

2023-08-05 08:07:34
今岡清 @k_imaoka

昔話14 オーソン・スコット・カードの作品が日本の星雲賞を受賞して、それを世界SF大会の会場で私がプレゼンテーターになって渡したんだけど賞品は盃。カードはモルモン教徒で酒飲まないから「これ何に使うの?」って聞いたら会場は爆笑。でも、カードはきょとんとしてたな。

2023-08-06 16:28:50
今岡清 @k_imaoka

昔話15 編集者をやってた頃、駆け出しの作家もやがて大作家になるかもしれないということを忘れちゃいけないと思って、海の物とも山の物ともつかぬ新人相手でも敬意を持って接しなければと心掛けてた。だからおりにふれて言ってたものだった。「えらくなっても仲良くしてね」

2023-08-07 17:57:20
今岡清 @k_imaoka

昔話16 私は石頭なんだろう、SFマガジンにふさわしくないと思うと売れっ子作家の作品でも掲載しなかった。栗本薫の「時の石」、高千穂遙の「変態の方程式」、梶尾真治の「包茎牧場の決闘」等々。そればかりかガンダムまで掲載を断った。後でいろいろ言われたけど、いまでも間違ったとは思ってない。

2023-08-08 13:55:49
今岡清 @k_imaoka

昔話17 私はいろいろとやらかしちゃってるが、ジャームズ・ホーガンのインタビューはことにひどかった。ホーガン先生、なかなかの酒好きでこの頃の私はといえば酒乱。テレコを置いてビールを飲みながらのインタビューはやがて盛り上がってただの酔っ払いのどんちゃん騒ぎ、ひどいもんだったな。

2023-08-09 17:40:45
1 ・・ 5 次へ